曽根圭介『鼻』あらすじとネタバレ感想!奇妙で怖い三つの短編
人間たちは、テングとブタに二分されている。鼻を持つテングはブタに迫害され、殺され続けている。外科医の「私」は、テングたちを救うべく、違法とされるブタへの転換手術を決意する。一方、自己臭症に悩む刑事の「俺」は、二人の少女の行方不明事件を捜査している。そのさなか、因縁の男と再会することになるが…。日本ホラー小説大賞短編賞受賞作「鼻」他二編を収録。大型新人の才気が迸る傑作短編集。
「BOOK」データベースより
ホラー小説のおすすめで検索すると、何度も目にする本書。
表題作を含む三つの短編から構成されていて、『鼻』は第14回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞しています。
それぞれテイストこそ違いますが、どれもいわゆる幽霊や化物が登場するホラーと違い、不条理や理解の追い付かない制御不能な世界が描かれています。
そのため怖いものが苦手だという人でも無理なく読めると思います。
特に『鼻』は読者を唖然とさせる大胆な仕掛けが施されているので、他では味わえない衝撃を与えてくれます。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
暴落
拘束された男
主人公であるぼくは顔中を包帯で巻かれ、病院のベッドで固定されています。
名前が長いからとヘルパーさんには『イン・タム』と呼ばせていて、ある日、ベテランのヘルパーさんから若い田丸さんに代わります。
イン・タムの病室を訪れるのは病院関係者を除けば如月さんという綺麗な女性だけ。
なぜイン・タムはこんな状態で入院しているのか。
気になった田丸が聞くと、イン・タムは身の上話を始めます。
株価
彼は以前、銀行員としてエリート街道を歩んでいました。
この世界では個人の株があり、善良な行いをすることや良い仕事、良い相手と結ばれることなどで株価が上がり、逆のことをすれば株価が下がります。
だから株価を維持、向上させるために争うように人の手助けをし、株価下落の原因になりえる人間とは関係を絶つというのが常識でした。
イン・タムは自分の株価が落ち始めたことに気が付き、原因が分からず『新宿のあにき』と呼ばれるエコノミストに相談を持ち掛けます。
アドバイスをもらった結果、株価の下落の原因が兄にあることが分かりました。
兄のバンドメンバーが覚醒剤取締法違反で捕まり、市場は兄もまたドラッグに手を染めていると判断。
それにともなって関連銘柄のイン・タムの株価も下がっていたのです。
イン・タムは兄が覚醒剤を所持していることも確認し、警察には通報せずに慌てて兄の株を全て売ります。
その結果、市場はイン・タムを『ダメな身内を持つリスクをヘッジした決断できる男』と判断し、株価は再び上昇します。
翌日、兄は包丁を持って銀行に押し入って逮捕され、イン・タムの判断は間違っていないように思えました。
ところが、ここから地獄のような日々が待っていました。
受難
主人公の俺は気が付くと、見知らぬビルとビルの間にいました。
誰も訪れない場所で、手錠で繋がれていて動くこともできません。
携帯が近くにないため助けを呼ぶことはできず、仕事もちょうど派遣先との契約が切れているため、新しい仕事が始まる来週まで俺の安否を確認する人間はいません。
二日間が経ち絶望感が増す中、ようやく若い女性が現れますが、俺を助けることなくいなくなってしまいます。
唯一のチャンスを逃してしまったかのように見えましたが、再び女性は現れます。
その手には水とミックスナッツが入ったコンビニの袋が握られていて、それを俺に渡すと話すことなく再びいなくなってしまいます。
袋の中には手紙も入っていて、女性が二度目の介助者に選ばれたことが書かれていましたが、俺には意味が分かりません。
その後、ケンタロウという少年も現れますが、彼もまた俺を助けてくれることもなく、普段いじめられている憂さを俺で晴らしては帰ってしまいます。
女性からの食事はやがてなくなり、もらえるのは水だけ。
なぜ助けてくれないのか。
女性とケンタロウは俺とどんな関係があるのか。
俺はわずかなヒントを少しずつ集め、やがて自分の置かれた状況に気が付くのでした。
鼻
医師
この物語の世界では人間は『テング』と『ブタ』に分けられ、テングは迫害されていました。
一人目の主人公である医師の私は七年前に妻のトモミを亡くし、娘のリカとも離れて暮らしていました。
ある日、以前交流のあったリカより少し年上の青年・マサキと再会。
彼はテングでありながらテング排除に協力する側の人間で、私がテングだったリカをブタに転換させて、他所で生かしていることを理由に強請ってきました。
私はマサキたちのやり方に耐えられず、テングの解放戦線のヒビノに協力することを誓います。
その日から、私はテングの少女にブタへの転換手術を施すようになります。
刑事
もう一人の主人公である刑事の俺は、二人の女の子が行方不明になった事件を追っていました。
自分の体臭を異常なほどに嫌い、気に入らないことがあれば誰にでも暴力をふるう一面を持っています。
犯人はマスクをした男で、俺は少しずつ犯人に近づいていきます。
やがて医師と刑事の描写が重なり始めますが、そこには妙な食い違いがあり、読者はこの物語に仕込まれた大胆な仕掛けに気が付くことになります。
感想
奇妙で先の読めない展開
分かりやすい恐怖を与える作品ではなく、世にも奇妙な物語のような先の読めない、けれど分かってしまうと途端に怖くなるのが本書です。
三つの短編がありますが、世にも奇妙な物語で最もありそうなのが『暴落』です。
物語の世界観が分かれば楽しみ方はすぐに分かりますが、結果が分かっていてもつい読み進めたくなる。
こういった点に設定だけではない、人を惹きつける文章の力を感じました。
『受難』は最後まで展開が読めず、少しずつ嫌な予感が増していく点にホラーとしての魅力を感じました。
鼻は二度読み必至
三つの短編の中で、表題作の『鼻』は明らかに異色で、読み終えた後も理解が追い付かずに戸惑ってしまいました。
どういうこと?
文庫本では解説があるそうですが、僕の呼んだ電子版では何の解説もなくモヤモヤ。
ネットで検索するとようやく物語の仕組みが分かり、二回目の読書で話の面白さが分かりました。
詳しいことは面白さが損なわれてしまうので書きませんが、ネタが分かるとよく練られた話だと思わず唸ってしまいました。
それと同時に、一度で話を正しく理解し、面白いと感じられた人はどれくらいいるのだろうと疑問が湧いてきました。
評価は分かれるところかと思いますが、他にない圧倒的なオーラがあることは間違いありません。
ホラーと言われると首を傾げたくなりますが、二度読みする楽しみがある作品なので、一番気合を入れて読んでほしいと思います。
おわりに
短編なのであっという間に読めてしまいますが、最後まで目が離せない濃厚な読書時間なので、読み応えは十分です。
特に鼻はどれだけ注意深く読んでもなかなか見抜けない構成になっていますので、ぜひ二度読みしてそれぞれ違った衝撃を堪能してください。
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