雫井脩介『火の粉』あらすじとネタバレ感想!無罪判決を言い渡した男は本当に無実だったのか?
元裁判官で、現在は大学教授を務める梶間勲の隣家に、かつて無罪判決を下した男・武内真伍が越してきた。愛嬌ある笑顔、気の利いた贈り物、老人介護の手伝い…武内は溢れんばかりの善意で梶間家の人々の心を掴んでいく。手に汗握る犯罪小説の最高傑作。
「BOOK」データベースより
『犯人に告ぐ』や『クローズド・ノート』、最近だと堤真一さん、石田ゆり子さんなどが出演して映画化されることが決まった『望み』などで知られる雫井脩介さんのサスペンス小説である本書。
『火の粉』というタイトルの通り、物語の主軸となる家族に火の粉が降りかかります。
はじめはその恐ろしさに気が付くことができませんが、やがて自分たちの置かれている状況を思い知り、自分の身に及ぶ危険に恐怖する姿がこれでもかとはっきり描かれています。
読んでいて、自分の周りにも火の粉、もしくはその火種があって、いつか自分にも降りかかるのではと恐ろしくなりました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
無罪判決
裁判長の梶間勲(かじまいさお)はとある殺人事件の裁判を担当します。
的場夫妻とその息子の三人が殺害され、容疑者として隣に住む武内真伍の名前が挙がります。
武内は的場にプレゼントしたネクタイを、的場が全く使わなかったことが気に食わず、犯行に及んだと一度は自白します。
しかし、武内の背中には金属バットで何十回と殴られた痕があり、ケロイドになるほどひどいものでした。
被害者のふりをするために自分で殴ったにしてはあまりに深い傷で、とても自分でつけられるようなものではありません。
武内が犯人だとする確固たる手がかりにも欠けていたため、勲は検察が力業で起訴まで持ち込んだのだと判断。
結果、無罪を言い渡しました。
勲は引退後もこの判決に間違いはなかったと思っていましたが、武内と再会したことでこの気持ちが揺らぎ始めます。
隣人
武内は勲に対してこれでもかと感謝を伝え、彼のために尽くすことを誓っていました。
真面目で誠実な善良な市民に見える武内ですか、それでも勲は心を許すことはなく、それなりの距離をとります。
しかし、そこで予想外のことが起きました。
勲は妻・尋恵や介護の必要な母親・曜子、そして息子の俊郎とその妻・雪見、娘のまどかと一緒に暮らすために一軒家を購入しますが、そのすぐ後に武内が隣人として現れたのです。
礼儀正しい武内はすぐに尋恵や曜子、俊郎の信頼を勝ち取っていきますが、勲は漠然とした不安に襲われます。
本当に偶然なのか?
かつて裁判長と被告人という間柄だっただけに、勲は偶然だと割り切ることがなかなか出来ませんでした。
偶然?
良き隣人として梶間家と付き合う武内ですが、彼が現れてから良くないことが連続して起きます。
次第にエスカレートしていき、ついに曜子が食事を喉に詰まらせて亡くなってしまいます。
雪見は元から武内にあまり良い印象を持っていませんでしたが、介護の手伝いとして家にいた彼が曜子死亡に関与しているのではと疑います。
またその頃、武内が無罪になった事件被害者である妻の兄・池本亨、その妻・杏子は事件後もずっと武内を疑っていて、梶間家が次のターゲットになってしまったのではと懸念していました。
一家や武内を観察する中で雪見が武内に対して疑いを持っていることを知り、接触して自分たちの考えを伝えます。
梶間家は武内にとって居心地の良い場所にされ、邪魔者は排除されるのだと。
その言葉通り、雪見には身に覚えのないことが連続して起こり、彼女と家族の仲は悪化。
まどかからも引き離され、一人家から追い出されてしまいます。
武内はさらに梶間家に入りこみ、彼に邪魔となる人たちが次々と被害にあいます。
勲は不安になって武内の過去を調べると、無罪判決が間違いだったのではと思わざるを得ない驚くべき事実が次々と明らかになり、考えを改めます。
火の粉は自分たちの近くにまで及んでいて、振り払わなければならないのだと。
感想
ころころと印象が変わる
はじめ、武内は不幸な人として描かれ、無罪の判決にも納得がいきました。
これから新たな人生を歩んでほしいと心から思いました。
しかし、梶間家の隣に越してきてから、そのイメージはころころと変わります。
尋恵の視点から見れば礼儀正しいジェントルマンですが、雪見から見れば得体の知れない謎の男で、時折狂気すら感じることがあります。
どれが本当の武内の姿なのか。
登場人物たちの議論を聞き続けると、真実が何なのか自分に自信が持てなくなり、非常に不安な気持ちで読み進めることになりました。
雪見がどれだけ不安な状況に置かれていたのかがよく分かります。
殺人犯かもしれない人間が当たり前のように、もしくはまるで家族のように出入りしている。
これ、冷静に考えてめちゃめちゃ怖いですよね。
中盤まで不快感が強い
武内が表立ってこない中盤までは、梶間家の様子が中心に描かれます。
介護の過酷な現状、子育ての難しさ、尋恵にとって嫌な義姉の存在、家のことに無関心な勲、口だけ達者な俊郎。
これだけを読んでいると腹が立つばかりで、なかなかスッキリしません。
文庫版で五百ページ以上あるので、この部分だけでもかなりの文量です。
途中、読むのをやめようかと何度も思いましたが、きっとこれから面白くなるという予感があったのでなんとか読み続けました。
結果的に読み終えてみると、このフラストレーションがあったからこそ後半の展開がより活かされたのだと分かり、我慢して投げださなかった甲斐がありました。
我慢できずに読むのをやめてしまおうか迷う人もいると思いますが、ぜひ大らかな気持ちでお付き合いください。
その先に待ち受ける驚き、恐怖などは格別で、なかなか他の作品でお目にかかれるものではありません。
後半からは一気読み必至
中盤を乗り越えれば、後はジェットコースターのように物語は急降下します。
息つく間もなく数々の攻防が繰り広げられ、少しずつ武内の本性が明らかになります。
一気読み必至で、通学・通勤などで読むと中断する羽目になり、じれったく感じるかもしれません。
大事に読みたいという人は、後半部分だけでも家やゆっくりできる時に読んでみてください。
ここまで我慢しながら読んで良かったと思える最高の仕上がりになっています。
おわりに
タイトルに『火の粉』とありますが、それどころではない恐怖だと個人的に思いました。
住宅を購入するにあたって、隣人とうまくやっていけるかどうかが快適に過ごすポイントの一つになりますが、後から武内が来たらどうすればいいんでしょうね。
自分の場合を考え、幸い両隣が埋まっていることに安心してしまいました。
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