『予知夢』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
深夜、16歳の少女の部屋に男が侵入し、気がついた母親が猟銃を発砲した。とりおさえられた男は、17年前に少女と結ばれる夢を見たと主張。その証拠は、男が小学四年生の時に書いた作文。果たして偶然か、妄想か…。常識ではありえない事件を、天才物理学者・湯川が解明する、人気連作ミステリー第二弾。
「BOOK」データベースより
ガリレオシリーズの第二弾です。
前の話はこちら。
こちらも短編で構成されているので非常に読みやすく、読書が苦手な方にもお勧めです。
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
夢想る(ゆめみる)
轢き逃げ事件が発生して坂木信彦が逮捕されますが、単なる交通事故ではありませんでした。
坂木はその直前、深夜の森崎家に侵入していたのです。
目的は娘の礼美でしたが、すぐに母親の由美子に見つかり、夫の所有していた猟銃で発砲されます。
当たりはしませんでしたが、逃走に夢中になるあまり、人を轢いてしまったのでした。
警察としては犯人が捕まっているので問題がないように思えますが、そう簡単にはいきません。
この件で刑事の草薙は、友人である帝都大学の助教授・湯川をたずねます。
問題となるのは、坂木の動機。
彼は十七年前から礼美と結ばれる運命にあったのだと主張しているのです。
その証拠に、坂木の小学四年生の作文にはモリサキレミと書かれています。
それから十七年後、森崎礼美という女子高生がいることを知り、彼は今回の犯行に至ったのでした。
このからくりが分からないと、坂木は精神に異常があるとして裁判に影響が出てしまいます。
状況を確認すると、礼美と名付けたのは由美子で、坂木のもとには礼美から受け取ったとされるワープロで書かれた招待状がありました。
湯川はさらなる情報を求めて坂木の家に向かいます。
すると、坂木が二年生の時の写真に、人に貰ったという人形が写っていました。
しかし、持ち主の女の子は車に撥ねられて亡くなっており、縁起が悪いと人形はすでに捨てられていました。
草薙が調べたところ、持ち主は桜井真子といい、礼美ではありません。
ところが、湯川には真実が分かり、後日、草薙は由美子のもとをたずねます。
草薙は真子の父親・努に事前に会っていて、由美子との関係を認めさせていました。
努はかつて池袋でカルチャースクールの教師をしていて、由美子は生徒の一人でした。
その時、由美子は真子に人形を渡していて、真子はその人形に礼美と名付けました。
真子が亡くなった後も努と由美子の関係は数年続き、妊娠が理由で別れます。
由美子は生まれた子供に礼美と名付けました。
由美子は不倫を完全に隠蔽することができたと思っていましたが、坂木が現れたことで事態は一変。
坂木が桜井親子に関係ある人物だと確信し、それは当たっていました。
坂木は人形を捨てられたショックで、人形があったこと自体を忘れ、モリサキレミという名前だけ思い出しました。
だから、森崎礼美が現れたのはただの偶然です。
由美子は何とかして坂木を合法的に始末できないかと考え、招待状を送っておびき出すことを考えつきます。
侵入する彼を銃殺すれば計画通りでしたが、弾が当たらなかったことだけが誤算でした。
由美子は否定しますが、招待状に使われたワープロの機種、紙が彼女の通う料理教室のものと同一であること、使用済みのリボンに残っていたことが決め手となり、由美子は連行されるのでした。
霊視る(みえる)
細谷忠夫は友人の小杉浩一と一緒に行ったお店で長井清美と知り合い、一目惚れします。
小杉もまた彼女に惹かれていることは分かりましたが、内緒で交際。
このまま黙っているわけにもいかず、本当のことを話さなければと電話すると、出たのは同じく大学のラグビー部の友人である山下でした。
山下は細谷から留守を頼まれていて、小杉も合流、飲みながら近況を話し合います。
ところが深夜、細谷はカーテン越しに清美を見ますが、窓の外に彼女はいません。
連絡は繋がらず、胸騒ぎに襲われた細谷は清美の友人である織田不二子に頼み、清美の部屋に向かってもらいます。
不二子がそこで見つけたのは、清美の死体でした。
清美の部屋に入る前、不二子は階段を下に降りていく男の姿を目撃していて、後に小杉だと判明します。
事件の担当となった草薙は湯川に相談します。
殺人の動機は小杉が清美に振られたことで、よくある衝動的な事件に思えました。
しかし、草薙は細谷が目撃した清美は何だったのかを気にしていました。
細谷は見たと断言していて、このまま報告書に書くわけにはいきません。
湯川が質問すると、いくつかの事実が明らかになります。
清美には借金があったこと、それから左手首に傷があることです。
湯川は興味を持ち、草薙と共に小杉の家に向かい、状況を確認します。
すると湯川は、細谷が清美の幽霊を見たことについて、小杉の計画なのではと考えます。
草薙は小杉の動機を洗い直すために捜査を進めると、出所が不明な大金で清美が借金の一部を返済していたことが判明。
さらに清美が幸運の写真を持っていると話していたことを細谷は聞いていましたが、その写真が見つかりません。
つまり、大金とその写真には何らかの関係があることになります。
また山下の留守番について、小杉が他所から猫を預かったにも関わらず仕事で出張になってしまったためお願いしたことでしたが、預かると言い出したのは小杉でした。
出張は予定通りで、その日は預かれないことも分かっていたはずです。
そんな時、湯川はとある新聞記事を見つけます。
そこには、多磨霊園そばで起きた車による轢き逃げ事件が書かれていました。
ここで、小杉は女性と話すのが苦手ですが、スポーツ選手だけは例外ということが分かっていたため、轢き逃げ現場付近の実業団を調べます。
すると、フィギュアスケートのコーチをする金沢頼子が浮上します。
事件の日、頼子は家から一歩も出ていないと証言しますが、草薙はすでに真実に気が付いていました。
細谷が見た清美の幽霊、あれは頼子だったのです。
目的はアリバイ工作のためでした。
頼子は清美に似た格好をし、山下に清美だと名乗るつもりでした。
その前に小杉は清美を殺害し、仕事仲間と合流すれば鉄壁のアリバイができます。
頼子は観念し、事の経緯を話します。
発端は、多磨霊園近くで起きた轢き逃げ事故で、轢いたのは頼子です。
その現場を清美に写真でおさえられ、金を強請られるようになります。
このままでは破滅すると、悩んだ末に頼子は恋人である小杉に相談。
最初は偶然を装って清美に近づき、証拠の写真をおさえるつもりでしたが、女性との交際に疎い小杉ではうまくいきませんでした。
そこで次に、今回の計画を思いつきます。
しかし、計画はうまくいきませんでした。
小杉の家には、予想外に細谷がいて、清美のことを知っている彼から逃げるように頼子は退散。
さらに小杉も自殺に見せかけることができず、他殺の証拠を残してしまいます。
あとは運任せでしたが、それもうまくいきませんでした。
最後に、どうして湯川は小杉の女性関係に気が付いたのか。
小杉の部屋には女性の気配がするものは全くありませんでしたが、オーディオからガリという雑音がしました。
ガリの正体はシリコン化合物で、過去のデータから女性のヘアスプレーが原因の一つであることが分かっていて、湯川はそこから女性関係に注目したのでした。
騒霊ぐ(さわぐ)
ある日、草薙は姉の百合から相談に乗ってほしいと言われ、神崎弥生を紹介されます。
弥生の夫・俊之が五日前から行方不明だということで相談されますが、すでに警察にも届け出を出しているため、草薙に出来ることはないように思えました。
しかし失踪前、俊之は八王子の老人ホームを出るところまで確認されていて、弥生にはその後、彼の行きそうな先に心当たりがありました。
それは、前の会社の営業で親しくなった高野ヒデという高齢女性です。
弥生は事前に彼女と連絡をとっていましたが、彼女は数日前に亡くなっていました。
実際に弥生がヒデの家を訪れると、見知らぬ男に追い返されてしまいます。
そこで周辺で聞き込みをすると、現在、ヒデの家には数人の若い男女が寝泊まりしていることが判明。
生前ヒデが言っていたのは、甥夫婦とその友人夫婦だといいます。
さらに弥生は張り込みをし、彼らが決まった時間に出かけていくのを目撃。
このままでは警察は動けないということで、草薙と弥生は張り込みをし、夜になって出かけていく彼らを草薙が尾行します。
しかし、特に変わった点はありませんでした。
一方、その間に弥生は家に入ろうと試みます。
結果は失敗でしたが、家の中から物音を聞き、俊之が閉じ込められているのではと考えました。
そこで草薙は通報があったという体で家に上がり、中を調べますが、俊之に関する証拠は何も得られませんでした。
翌日、甥夫婦たちが出かけると、ピッキングの要領で家に侵入。
何も見つかりませんでしたが、突然、家中が振動を始めます。
草薙はこのことを湯川に報告。
するとポルターガイストではなく別の理由があるとして、ある策を練ります。
信用金庫から偽の電話をかけてもらって、男二人を家の外に追い出します。
これまでの調べで、ヒデの甥である昌明には多額の借金があることが判明しています。
もう一組の夫婦は借金取りで、どちらもヒデの財産を目当てにしていました。
男たちがいなくなったタイミングで湯川と草薙は行動を起こし、捜査だと言って家に上がります。
すると、家中が振動するという現象がまたしても発生。
危ないと女性二人を家の外に出すと、湯川は畳を外します。
するとそこには、固められたばかりのコンクリートの塊がありました。
これが決定打となり、昌明は白状します。
ヒデの財産を目当てにしていましたが、彼女が家のどこかに隠し持っているということしか分からず、今もなお見つけられずにいました。
すると痺れを切らした借金取りの近藤がヒデを脅し、彼女はそのショックで心臓麻痺で亡くなってしまいます。
それを目撃したのが俊之で、彼もまた絞殺されてしまうのでした。
ヒデは誤魔化せるので病院に運びましたが、俊之はコンクリートで固めて隠すしかありませんでした。
ポルターガイストのような現象について、共振現象だと湯川は説明。
物体には決まった固定振動数があり、加えられる力がその振動数と一致した場合、物体は激しく揺れます。
ヒデの家の真下には古いマンホールがあり、それが原因だと湯川は睨んでいました。
最近になって現象が現れたのは穴を掘ったからではないか、ではなぜ穴を掘ったのか。
そこから今回の解決に至ったのでした。
近くの工場がこの下水管を利用していて、午後八時に排水を流していることが分かったため、今回お願いをし、家に上がった時間に排水してもらったのでした。
最後に、ヒデの遺産について。
実は俊之がヒデ名義の貸金庫のカードキーを持っていたのでした。
代理人に彼の名前が登録されていて、貸金庫にある遺言状には、全てを俊之に譲るという記述がありました。
草薙は、無念を抱えた俊之が起こした心霊現象だと主張し、湯川もそれを否定しませんでした。
絞殺る(しめる)
矢島忠昭は小さな工場を経営していましたが、経営はあまりうまくいっていませんでした。
そんなある日、昔貸したお金を受け取ってくるといって忠昭は出掛けますが、なかなか帰ってきません。
翌日になっても帰ってこず、午後になったら警察に連絡をしようと思っていたところ、警察から連絡があり、忠昭がホテルで死んでいることを告げられます。
草薙は捜査に乗り出し、湯川と共に当該のホテルに行きます。
忠昭には絞殺された後があり、睡眠薬で眠らされていたことが判明。
この状況で、草薙が湯川を呼んだ理由は二つ。
一つはカーペットが焦げていること、もう一つは絞めた後に沿って皮膚が切れていることでした。
普通の絞殺であれば、こうはなりません。
草薙は現時点で、妻の貴子を疑っていました。
忠昭には多額の保険金がかけられていて、何度かの事情聴取を行い、貴子は何かを隠している様子でした。
またアリバイは不十分で、犯行も可能です。
しかし、湯川はアリバイがないことに興味を持ち、工場を訪れます。
湯川はそこで紐を見つけ、それは忠昭を絞殺したものによく似ていました。
その後、事態は動きます。
忠昭が死んでから一週間後、貴子が突然、アリバイを主張し出したのです。
彼女は立ち寄った喫茶店を思い出し、そこに忘れ物をしていました。
また、貴子の飲み物に小さな蛾が入っていましたが、彼女は頑なに料金を支払うといい、草薙はアリバイのためにレシートが欲しかっただけではと疑います。
また、娘の秋穂から面白い証言が得られます。
彼女は忠昭が死ぬ前日、彼女は工場で火の玉を見たのだといいます。
しかし、警察は見間違いだろうと本気にしていませんでした。
その後、捜査は難航。
現場には吸い殻が残されていて、そこから犯人の血液型がB型であることが分かっていますが、貴子の周辺にそういった男性はいません。
しかし、湯川はこれで事件のからくりが分かったといい、研究室でその状況を再現します。
湯川は忠昭がベッドに寝ていたことに言及し、絞殺するなら椅子に座った状態ですると指摘。
また、吸い殻などを残しておくのもおかしいとして、忠昭の自殺であると主張します。
他殺に見せかけたのは、保険の加入一年未満では、自殺では保険金がおりないからです。
湯川が工場で見つけた紐、それはアーチェリーの弦でした。
彼は睡眠薬で眠ると、ヒーターでアーチェリーを切るようタイマーをつけ、自動で絞殺できるようセッティングしたのです。
秋穂が見た火の玉は、この予行練習でした。
そして、現場に証拠が残されていないことから、共犯者がいることになります。
湯川は、それが貴子ではなく同僚の坂井だと推測。
貴子は自殺のことを聞かされていませんでしたが、薄々勘付いていました。
そこで事件の日、様々な場所でアリバイを作り、忠昭の死亡時刻が分かると、その時間のアリバイだけないふりをして、警察の目を自分に向ける。
十分に引き付けたら、不意にアリバイを思い出したふりをしたのです。
そうすることで警察は初動を誤り、坂井の目撃者を探すのが絶望的になっていました。
警察は結局、坂井が共犯者であること、湯川の提示したトリックが使われた証拠を見つけることはできませんでした。
予知る(しる)
菅原直樹は会社の後輩で、大学のヨット部の後輩でもある峰村英和を自宅に招待し、妻の静子の料理でもてなします。
その時、直樹の携帯が鳴り、相手は不倫相手である瀬戸富由子でした。
直樹は二人に聞かれないよう書斎に入ります。
富由子はいつまで経っても離婚しない直樹に痺れを切らし、催促をしてきます。
さらにカーテンを開けるよういい、直樹が言う通りにすると、向かいの部屋には首を吊るための紐に首を通そうとする富由子の姿があります。
彼女は直樹にプレッシャーをかけるために、わざわざ部屋が見える物件に引っ越したのです。
直樹は止めますが、要求に応じない彼に失望し、富由子は台から飛び降り、首を吊ります。
すると、それを目撃していた英和が部屋に入ってきて、警察に連絡することを提案しますが、直樹は止め、事情を説明。
静子に内緒のまま、何とかすると英和は富由子の部屋に向かい、彼女の状態を確認。
しかしその時にはすでに息も脈もなく、一目を避けるためにカーテンを閉めます。
そこに同じく首吊りを目撃した静子がやってきて、直樹は覚悟を決めて事情を説明します。
警察は捜査に乗り出し、聞きこみをします。
すると、直樹の隣の部屋の住人は、富由子が首を吊るところを二日前に目撃していたのです。
予知ではないかということで、すっかりオカルト事件担当にされてしまった草薙が呼ばれ、湯川に相談します。
二人はまず予知をしたという少女に当たります。
少女は直樹が見たものと同じシーンを目撃して、驚きのあまり失神。
ところが翌日、元気な姿の富由子が目撃されています。
次に富由子の部屋を調べます。
湯川は富由子の狂言で、本当は死なない予定だったのではと推測。
不倫の状況から見ても、十分あり得る話です。
そうすると、少女が見たのはそのリハーサルで、その時は見事成功していたことになります。
また、現場にトリックの証拠が残されていないことから、共犯者が回収したことが推測できます。
そして湯川は、狂言自殺の失敗すらも、予定通りなのではと考えていました。
一方、今回の件で直樹は会社を退職、静子とも離婚しました。
これを喜んでいるのは、英和と静子です。
二人もまた不倫関係にあり、後は英和が離婚するだけです。
事の発端は二か月前、富由子は二人の不倫を知り、英和に会いに来たのです。
不倫のことをバラなさない代わりに、慰謝料なしで円満に離婚できるよう協力しろ、というのが彼女の言い分です。
そして、狂言自殺を思い付いたのも富由子でした。
しかし、英和は作戦がうまくいかないことを確信していて、逆上した富由子が自分たちの不倫をバラす前に、彼女を始末することを決めたのでした。
英和の計画はうまくいったように思えましたが、最後に大きな誤算が待っていました。
妻の紀子は探偵を雇って英和の行動を見張っていて、静子と不倫していること、富由子とも会っていることが知られてしまったのです。
そんな中、英和と静子は明日、ドライブに行く計画を立てます。
一方、湯川には狂言自殺の仕組みが分かり、草薙を研究室に呼びます。
仕掛けは紐を吊り下げるパイプハンガーにありました。
パイプハンガーにはダンパーという振動を吸収する装置が組み込まれていて、中にはER(エレクトロレオロジー)流体という液体が充填されていました。
ER流体は電圧を加えることで粘性が変わる特性を持っていて、加えている間は首を吊っても固定され、電圧を止めるとパイプは下におり、足がつけるようになっていました。
英和はER流体に関して多くの特許を出願していました。
富由子はこのER流体を用いて狂言自殺をするつもりでしたが、英和の裏切りによって電圧は止まらず、本当に首を吊ることになったのでした。
警察は慌てて富由子と英和の関係を洗いなおします。
しかし翌日、旅行に行くという静子を隣人が目撃。
富由子の狂言自殺を目撃した少女は、静子と男が深くて暗い谷のようなところに落ちていく夢を見ます。
ここで描写は終わっていますが、おそらく英和の心中に付き合わされたのだと思います。
今度こそ本当の予知夢だったのでした。
おわりに
一作目でお決まりのパターンが出来上がったため、より読みやすくなった印象です。
ガリレオシリーズは今後、登場人物が増えたり、長編作品も登場しますので、まだまだ目が離せません。
次巻はこちら。
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