『私の家では何も起こらない』あらすじとネタバレ感想!穏やかな恐怖漂う短編集
小さな丘に佇む古い洋館。この家でひっそりと暮らす女主人の許に、本物の幽霊屋敷を探しているという男が訪れた。男は館に残された、かつての住人たちの痕跡を辿り始める。キッチンで殺し合った姉妹、子どもを攫って主人に食べさせた料理女、動かない少女の傍らで自殺した殺人鬼の美少年―。家に刻印された記憶が重なりあい、新たな物語が動き出す。驚愕のラストまで読む者を翻弄する、恐怖と叙情のクロニクル。
「BOOK」データベースより
同じと思われる屋敷を舞台にした連作短編集である本書。
穏やかな空気の中に背筋が凍るような恐怖があり、この世とは違う世界に迷い込んだようなスケールを持っています。
こういった世界観を恩田陸さんは描くのが本当に上手いと改めて尊敬です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
私の家では何も起こらない
作家の私は叔母が二十年前に手放した屋敷を買い取り、一人で暮らしていました。
幽霊屋敷と呼ばれ、様々な人の手を転々としてあまり評判が良いとはいえません。
それでも私はこの屋敷を気に入り、仕事に専念していました。
ある日、男が訪ねてきてこの家のことについて根ほり葉ほり聞きますが、その様子は明らかにおかしく、やがてその理由が明らかになります。
私は風の音に耳を澄ます
私は貧しい家に育ち、自分をぶつ母にもすぐ泣く弟にもうんざりしていました。
家を出たいと思っていたある日、私と弟は彼女と出会い、丘の上にある屋敷に連れていかれます。
彼女はそこに住む旦那様のお世話をしていて、私の住む家とは比べ物にならないほど素敵な場所でした。
帰りたくない私を彼女はずっと家に置いてくれますが、やがて読者は私の置かれている本当の状況に気が付きます。
我々は失敗しつつある
四人の男女は私の記憶にある幽霊屋敷を見つけ、そこに向かいます。
ここでは以前住んでいた姉妹が包丁で殺し合うという事件が起きていて、地元では有名でした。
私はその姉妹を見たことがあり、四人は屋敷の中に入ります。
あたしたちは互いの影を踏む
『我々は失敗しつつある』に出てきた姉妹がどのようにして凶行に至ったのかが描かれています。
僕の可愛いお気に入り
『私の家では何も起こらない』の私が屋敷に住み始めるちょっと前の話。
一見、僕と君の仲睦まじい会話に見えますが、僕が一方的に話すだけ。
やがて僕のとんでもない正体が本人の口から明かされます。
奴らは夜に這ってくる
儂がおまえに対して語りかける話。
かつて三人が首を吊り、一人の少年が首を切って失血死した事件があり、それ以降、何かを引きずるような音を聞く住人が増えました。
それは『這う奴ら』と呼ばれていました。
『這う奴ら』が怖くておまえが泣いているのかと思いきや、二人は予想外の状況に置かれていました。
素敵なあなた
私はお客らしき人を連れてあの屋敷を訪れていました。
お客の要望が変わっていて、その条件に合致するのがこの屋敷だということ。
私は中に入って屋敷の中を案内しますが、お客の指摘によって意外な事実が判明します。
俺と彼らと彼女たち
屋敷を次の人に渡すに当たって、大工による修理が入ります。
ところが屋敷には幽霊がうようよしていて、若い大工は逃げ出してしまいます。
仕方なく俺は引退した父親の手を借りて修理を始めます。
私の家へようこそ
『俺と彼らと彼女たち』に登場した買主が友人を屋敷に招きます。
はじめはここでの暮らしを語っていましたが、やがて幽霊そのものについて語り出します。
随記・われらの時代
ここまでの短編がOという人物の書いた小説であることが明かされます。
誰かがそのことを明かし、それを踏まえて自分の考えを披露します。
感想
屋敷もののホラー
丘の上にある屋敷。
そこに幽霊が住んでいる。
とてもすんなり想像できるシチュエーションで、そこで非日常的なことが起こっても違和感なく読めてしまいます。
本書は屋敷を舞台にしたホラーという意味で、とても大衆的です。
一方で、明るいのにふと不気味さを感じたり、何者かの気配を感じたりする、なんともいえない感覚。
それを恩田さんは見事に言語化していて、感覚という曖昧なものを的確な表現する力が抜群であると改めて感心してしまいました。
僕のおすすめは『私は風の音に耳を澄ます』と『俺と彼らと彼女たち』です。
前者は状況に気が付いてから物語が一変するどんでん返しが好きで、後者は個人的にホーンテッドマンションのような陽気さがあって好きです。
繋がることで深みが出る短編
本書は短編一つ一つでももちろん楽しめますが、本領を発揮するのは全てを通して読んだ後。
それまで断片だけ提示され意味の分からなかった事柄が、後の短編によって補完される。
そうすると一度読んだ短編も違った味わいが出て、そうすると他の短編にさらなる深みを
与える。
この仕掛けも恩田さんならではで、久しぶりにすぐに二度読みしました。
おわりに
幽霊など怖いものに対する恩田さんの考えが詰まった一冊で、現実を忘れる束の間の素敵な読書時間となりました。
ホラーといっても直接的な恐怖を与えてくる描写はほとんどありませんので、よほど苦手ということでなければ大丈夫だと思います。
それでも心配という人は、カフェや通学・通勤など人気のあるところで読みましょう。
そうすれば彼らは現れないかもしれません。
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