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スタンリイ・エリン『特別料理』あらすじとネタバレ感想!絶品を味わえる短編集

harutoautumn
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まったく何ともいいようのないうまさだった―隠れ家レストラン“スビローズ”で供される料理はどれもが絶品ばかり。雇い主ラフラーとともに店の常連となったコステインは、滅多に出ないという「特別料理」に焦がれるようになるが…。エラリイ・クイーンが絶賛した戦慄を呼ぶ表題作をはじめ、アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作「パーティーの夜」など、語りの妙と優れた心理描写を堪能できる十篇を収録した傑作短篇集!

「BOOK」データベースより

表題作含めて十の短編で構成される本書。

僕もそうですが、『特別料理』目的で本書に辿り着いた人が多いと思います。

米澤穂信さんの『儚い羊たちの祝宴』で登場する『アミルスタン羊』という言葉が『特別料理』と深く関係しているので、読むことでどちらの作品も面白さが倍増します。

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また、もちろん『特別料理』は有名になった理由のよく分かる傑作ですが、他の九つの短編にも妖しい魅力が込められ、一度読み始めたら最後まで読者を離してくれません。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

特別料理

コステインは雇い主のラフラーに連れられ、スビローズという隠れ家的レストランに行きます。

そこで出される料理はどれも絶品ですが、その中でも滅多に出されない特別料理というものがあり、コステインもそれ目当てに通うようになります。

二週間が経ち、ついにアミルスタン羊と呼ばれる食材を用いた特別料理を堪能することが出来ました。

その一方で、十年間欠かさず通っていた一人の常連の姿が見えないことに気が付きます。

その後もコステインはスビローズに通い続けますが、やがて特別料理の正体が明らかになります。

お先棒かつぎ

クラブトリーは奇妙な求人募集に応募し、採用が決まります。

後日、指定された場所に向かうと、そこにはクラブトリーの名を冠した事務所があり、彼はそこで特定の会社が出てくる新聞や雑誌を見つけ、それを報告書にまとめて郵送するという仕事を始めます。

何のためか分からない奇妙な仕事にも関わらず、給料は週に五十二ドル。

クラブトリーは不思議に思いつつも勤勉に与えられた職務を全うしますが、やがて雇用主の意図を知って驚愕します。

クリスマス・イブの凶事

とあるクリスマス・イブ。

弁護士の私はベーラム邸を訪れていました。

そこに住むセリアは、弟・チャーリーの妻・ジェシーを殺害した嫌疑をかけられていましたが、証拠不十分で罪には問われていません。

しかし、セリアとチャーリーの中にはわだかまりが残り、いつ事件に発展するか分からない緊迫感がありました。

私は必死になって仲を取り持ちますが、やがて物語の本当の意味が明かされます。

アプルビー氏の乱れなき世界

アプルビーは自身の骨董品店を心から愛していますが、維持するにはお金が必要になります。

そのお金を援助してくれていた母親が亡くなると、アプルビーは結婚することにしました。

目的は、結婚した女性の資産を奪うことです。

アプルビーは様々なところから得た知識を駆使して女性を事故死のように見せかけて殺害し、無事に遺産を手に入れます。

しかし、アプルビーの欲望は留まることを知らず、さらなる凶行に走ります。

好敵手

日々に不満を抱えるジョージは、ひょんなことから始めたチェスに引き込まれていき、頭からそのことが離れなくなっていました。

そうなると必要なのは対戦相手ですが、ジョージはやがて自分の向かいに座る自分に似た男が見えるようになり、その人物とチェスの勝負をします。

明らかに異常な事態ですが、これは発端に過ぎませんでした。

君にそっくり

アーサーは非の打ちどころのない好青年でしたが、お金を持っていませんでした。

彼は勤務する会社の社長令嬢であるアンに惹かれていましたが、彼女の要求に応えるにはお金がいります。

そんな時、お金持ちの息子であるチャーリー・プリンスという男が現れ、アーサーはある計画を思いつき、チャーリーに対して同居しないかと持ち掛けます。

壁をへだてた目撃者

ロバートの住むアパートは防音性能が乏しく、隣の部屋の音が筒抜けでした。

彼はそれによって隣に住むエミーという女性のことを知って好きになりますが、彼女にはヴィンスという夫がいました。

ある日、ロバートは二人が争っている音を聞き、その結末からエミーがヴィンスによって殺害されてしまったと思います。

しかし警察に通報しても証拠がなければヴィンスを逮捕することは出来ず、ロバートはヴィンスの犯行を裏付けるための調査を始めますが、待っていたのは思わぬ真実でした。

パーティの夜

役者のマイルスは倒れているところをマース博士という医師に発見され、自宅に運ばれます。

マース博士は何でもないと濁しますが、マイルスは自分の身に何があったか心配でなりません。

自宅ではパーティが開かれ、そこでのやりとりからマイルスが多くの不満を抱えていることが分かります。

はじめはただのパーティの開かれた一日が描かれているだけのように思えますが、最後に恐るべき真実が明らかになります。

専用列車

コーネリウスには美しい妻がいますが、彼女が浮気していることを知り、浮気相手をどうにかできないかと考えます。

以前、とある判事との話をヒントに、コーネリウスは車で浮気相手を轢き殺し、それをあたかも事故に見せかけるよう計画を立てます。

そして、計画の決行日がやってきます。

決断の時

私の姉・エリザベスはヒューという男と結婚し、三人は満足のいく生活を送っていました。

ところが、近所にあるデーン館にレイモンドという奇術家が引っ越してきて生活は一変します。

ヒューとレイモンドは事あるごとに揉め、いつ事件に発展するか分からない状況でした。

そこでエリザベスはディナーパーティを催し、私やヒューの知人であるワイナント博士、そしてレイモンドを招待します。

はじめこそ上手くいっていましたが、やがていつものように険悪な雰囲気になり、ヒューとレイモンドはとある賭けをすることにしました。

感想

人間の欲望を煮詰めた物語

人間の中には様々な欲望が渦巻く一方で、そのほとんどは表に出ることはないと思います。

ルールで禁止されていたり、倫理観によって自分で止めていたりするからです。

しかし、本書の短編では人のまず表面に出てこない欲望、それが濃縮されて表に出てきます。

ありえない行動に正気を疑いつつも、自分の中にもそんな欲望があることに気が付き、どの短編も抜群に面白かったです。

『特別料理』はおおよその話を知っていたので確認程度でしたが、他の九つの短編は新鮮な恐怖や驚きに満ち、それがあたかもユーモア溢れるかのように描く文章は妖しい魅力を放っていました。

『特別料理』から本書に入門したとして、読み終わった頃には別の短編の方が好きになっているかもしれません。

それくらいどの短編も魅力が拮抗し、勝るとも劣らない存在感を持っています。

意味が分かると鳥肌が立つ

本書の中には結末で明言せず、読者が察する必要のあるもの短編が存在します。

流し読みしていると意味が分からず、何度も読み返す羽目になります。

しかし、ここで集中して物語を読むことが重要で、そうすることで物語の意図した結末が見えてきます。

すると僕らが見ていた物語の表面が削げ落ち、その下から本当の姿が顔を出します。

その時の衝撃はすさまじく、ぜひその感覚を味わえるようにしっかり読み込んでください。

おわりに

訳本ということもあり値段が少々高めですが、その価値以上のものが本書にはあります。

米澤穂信さんの『儚い羊たちの祝宴』から本書に入った人は、ぜひもう一度『儚い羊たちの祝宴』を読み返してみてください。

『特別料理』の魅力に当てられ、違った面白さを発見できるはずです。

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