中山七里『テミスの剣』あらすじとネタバレ感想!冤罪に隠された司法の闇とは?
豪雨の夜の不動産業者殺し。強引な取調べで自白した青年は死刑判決を受け、自殺を遂げた。だが5年後、刑事・渡瀬は真犯人がいたことを知る。隠蔽を図る警察組織の妨害の中、渡瀬はひとり事件を追うが、最後に待ち受ける真相は予想を超えるものだった!どんでん返しの帝王が司法の闇に挑む渾身の驚愕ミステリ。
「BOOK」データベースより
中山七里さんの作品ではお馴染みの刑事・渡瀬ですが、彼はこれまでの作品で冤罪を生み出してしまったことを明かしています。
本書ではその冤罪が生まれた瞬間、そして二十年以上かけて決着をつけた様子が描かれています。
渡瀬がどういった経緯で今のスタイルになったのか分かると同時に、正義を失った司法の問題などとても考えさせられる内容になっています。
また上川隆也さん主演でドラマ化もされています。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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テミスとは
内容に入る前に、タイトルにある『テミス』について説明します。
テミスとはギリシア神話に登場する正義の女神で、司法の公正さの象徴とされています。
裁判所の多くにはテミスの彫像が飾られていて、彫像の右手には剣、左手には秤が握られています。
剣は力、秤は正邪を測る正義を意味していて、もっと踏み込むと力なき正義は無力であり、正義なき力は暴力であると汲み取ることが出来ます。
司法に携わるものはこのことを常に忘れてはならない。
その戒めともいえます。
ちなみにテミスの彫像には剣もしくは秤を高く掲げたもの、目隠しをしているものなどいくつか種類があり、それぞれの目指す理想が違っていることがうかがえます。
あらすじ
強引な捜査
昭和五十九年。
渡瀬がまだ若手で、新婚だった頃の話。
彼は教育係の鳴海健児と共に不動産を営む夫婦が殺害された事件の捜査に乗り出します。
場末の不動産屋に大金があるとは思えませんでしたが、鳴海は被害者が違法な高利貸しをしている証拠となる帳簿を発見。
鳴海は本部にこのことを明かさずに独自に捜査を進めます。
すると帳簿にあったリストの中から楠木明大が容疑者として浮上。
鳴海は脅迫のような事情聴取で楠木に罪を認めさせ、渡瀬も抵抗できずにそれに加担してしまいます。
その後、楠木の自宅から犯行の証拠となる血の付いたジャンパーが見つかり、楠木が犯人であることを示す供述調書が作成されました。
裁判の結果、楠木は死刑を言い渡されます。
しかし楠木は刑の執行を待たずに房の中で自殺。
事件は解決したかのように思えましたが、楠木の自殺は渡瀬の心にずっと重くのしかかります。
五年越しの真犯人
楠木逮捕から五年後。
元号が平成になり、鳴海は定年退職。
渡瀬は変わらず浦和署で働いていました。
浦和市内で盗難、強盗事件が起こり、後者では家にいた二人が殺害されていました。
二つの事件には共通点があり、渡瀬は地道な捜査によって迫水二郎にたどり着きます。
迫水は犯行を認めますが、本当の驚きはこれからでした。
二つの事件と五年前の事件は類似していて、渡瀬が事情聴取すると五年前の事件もまた迫水の犯行であったことが判明します。
つまり、警察は冤罪を生み出してしまったのです。
渡瀬は真実を明るみに出そうとしますが、警察は全力でそれを妨害。
それでも渡瀬は諦めず、懇意にしていた検事・恩田に冤罪を証明する供述調書を託し、マスコミによってこの事実は瞬く間に世間に拡散されます。
司法の信頼を揺るがす大事件であり、関わっていた裁判官や検事、警察組織に苛烈な処罰が下されます。
一方、渡瀬は県警本部に異動となり、妻とは離婚。
この一件は渡瀬の胸に刻まれ、真っ当な刑事になるという信念に変わりました。
二十三年後の殺人
迫水は逮捕されて二十三年後、出所しますが、すぐに何者かによって殺害されてしまいます。
二十年以上にわたって外界と接触していない迫水の関係者は驚くほど少なく、殺される理由がほとんどありません。
なぜ迫水は殺害されたのか。
犯人はどうやって迫水の出所する時期を知り得たのか。
渡瀬は担当を超えて独自に捜査を始め、やがて全てが楠木の一件からずっと続いている事件であることに気が付きます。
感想
喜びと申し訳なさ
本書では司法の在り方について問われています。
正義ある力こそが正しいのに、現実では上層部の都合や利権に左右され、本当のことでさえ簡単にもみ消されてしまう。
刑事である渡瀬でなくとも、絶望するほどとてつもない闇です。
解説で俳優の谷原章介さんが、本書を読んで楽しんでしまったことによる罪悪感について語っていますが、まるで自分の気持ちを言い当てたような的確なコメントで驚き、嬉しくなりました。
中山さんはあくまでフィクションとして本書が面白く成立するよう計算し尽くし、緻密に物語のピースをはめ込んでいます。
なので、読者である僕らが楽しむことは本書の目論見通りです。
しかし、上述したようなテーマを考えると、楽しんでいい内容なのか迷ってしまい、決して良い読了感とはいえませんでした。
面白いのに、なんだか申し訳ない。
それでも最後に渡瀬を救ってくれる言葉があり、中山さんの作品にはこのちょっとした救いが用意されているのがエンタメとして成り立たせる秘訣なのかなと感じました。
渡瀬の成長
今やどんな相手にも持ち前の頭脳と執念で食い下がる渡瀬ですが、そんな彼にも駆け出しの頃があったことが本書を読んで分かります。
あれだけの罪を犯し、刑事をやめることでけじめをつけてもおかしくないのに、何人かの人たちは渡瀬をやめさせてくれません。
そこで渡瀬が選んだのが、真っ当な刑事になることでした。
渡瀬はその心意気通りの刑事になり、今はその敏腕をふるうだけでなく次の世代の育成にもあたっています。
いつも怒られてばかりの古手川ですが、渡瀬はちゃんと彼のことを評価していることが分かり、これからの成長がますます楽しみになりました。
渡瀬や古手川の活躍を楽しむに当たって、本書は特に外せない一冊です。
おわりに
渡瀬が真っ当な刑事になるきっかけとなった長い長い戦いを描いた本書。
テーマとして中山作品の中でも特に重ためですが、だからこそ渡瀬の信念が本物であると分かる内容になっています。
出来れば渡瀬×古手川が捜査する話をいくつか読んだ後に本書を読むことをオススメします。
その方が感慨深く、特に最後の渡瀬に向けられた言葉が胸を温かくしてくれると思います。
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