ミステリー

湊かなえ『未来』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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ある日、突然届いた一通の手紙。送り主は未来の自分だという…。『告白』から10年。湊ワールドの集大成!待望の書き下ろし長編ミステリー!

【「BOOK」データベースより】

『未来』。

この言葉を聞いて、皆さんはどんな『未来』を想像しますか?

本書には、デビューして十年を迎えた湊かなえの考える『未来』が描かれています。

ここではあえて何も書きませんが、ただ一つ、僕は本書を読んで湊さんのさらに十年後を見たいと思いました。

以下は本書に関する湊さんへのインタビューです。

https://hon-hikidashi.jp/enjoy/55032/

 

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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序章

人気テーマパーク・ドリームランドに向かう夜行バスに乗り込む中学三年生の佐伯章子(さえきあきこ)と須山亜里沙。

亜里沙が眠ると、章子は一通の封書を取り出します。

それは彼女が小学校四年生の時に受け取った、二十年後の自分からの、未来からの手紙でした。

そこには章子の家族しか知らないことが書かれていたり、もう一つのテーマパークであるドリームマウンテンは十周年のはずなのに、そこには三十周年記念の栞が同梱されていました。

未来の章子は父親を亡くして悲しい十歳の自分を励まし、大切なことは文章にすることを勧めます。

章子の母親の名前は『文乃(あやの)』といい、二人の名前を合わせると『文章』になります。

どう考えてもそれは未来の自分から送られてきたものとしか思えず、章子は手紙が届いてから今に至るまで、未来の自分に向けて手紙を書き続けていたのでした。

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佐伯章子

父親の死

時間を遡り、小学校四年生の章子の書いた手紙を通じて物語が進行します。

彼女は父親の良太をがんで亡くし、生きる気力を失ってしまった母親の文乃を支え、父親の勤めていた会社の社長夫妻の手助けもありながら暮らしていました。

四年生の時の担任・篠宮真唯子(しのみやまいこ)は退職することになり、五年生では林優斗という大学を卒業したばかりの先生が担任になります。

章子の努力もあり、文乃は少しずつ元気を取り戻し、明るい未来が待っているような気になります。

良太の死からしばらくして、彼のお墓がないことに気が付いた章子。

実は良太は生前、『樹木葬』に申し込んでいて、樹を植えるのに最適な季節に樹木霊園に行き、社長夫婦と共にポプラの樹を植えます。

 

しかし、幸せはそう長く続きませんでした。

同じクラスの後藤実里が、林と文乃が一緒に車に乗っているところを目撃し、付き合っているのかとクラスメイトがいる前で聞いてきます。

この時、文乃は林の勧めで心の病気を治すために町外れの病院に通院するために林と一緒に行動していたのです。

章子は事情を説明しますが、実里はどうも納得していない様子。

また章子は文乃に捨てられる前に、良太の遺品を整理して必要な物をとっておくことに。

その中で一枚のフロッピーディスクを見つけ、保管します。

決別

林と文乃のことで、校長やPTAの人たちから聞き取り調査されることになり、章子は面白いものが見れそうだと思った実里と一緒に盗み聞きします。

中では林が文乃のことをいかに愛しているかを語りますが、対して文乃はそんな気持ちはないと拒絶。

その後、林はストーカーと化し、たまたま居合わせた社長の妻に怪我を負わせたことで警察に通報され、三学期が始まる頃には体調不良を理由に休職となります。

 

六年生になると、絶縁状態となっていた良太の母親が現れ、彼の死を知らせなかった文乃を糾弾。

それから良太とよく似た章子に一緒に暮らさないかと提案してきます。

文乃は章子の将来を考え、祖母の家に行った方がいいかもしれないと言いますが、章子にそのつもりはありません。

そこでこの話を断るつもりで、良太の実家に一人で行く章子。

自分の知らない父親に触れられて良かったと思う一方で、祖母は、文乃が自分の父親と兄が家で寝ているのを承知で放火した人殺しだと打ち明けてきます。

そして、文乃の兄と親友だった良太は、後に文乃と再会し、駆け落ち同然で結婚したのだといいます。

それでも章子は、もう会いに来ないでほしいと拒否。

祖母が口にしなければ、文乃が人殺しだと知ることはありませんでした。

この町の人と繋がってしまうと、文乃が今の町でも人殺しとして見られてしまうため、関わりを持つわけにはいきません。

祖母はそんな章子を冷たくあしらい、章子は文乃と二人で生きていくことを改めて思います。

悲劇の連続

文乃が働き始め、前以上に明るくなった家庭。

そこに割って入ってきたのが、文乃の働くホテルの副料理長をする早坂誠司でした。

籍を入れたわけではありませんが、章子が中学校に入学と同時に今のマンションは引っ越し、早坂の購入したかつてイタリアンレストランだった一戸建てに二人も移り住みます。

早坂はそこでフランス料理店をオープンし、フランスの名店『ガルニエ』で覚えた料理を披露します。

文乃が父親以外の人と一緒になるのが寂しいと思いつつも、幸せなはずでした。

 

ところが、次の手紙は一年以上の後になり、中学二年生の章子は不登校で押し入れに閉じこもっていました。

不登校になったのは五か月前のことで、原因は実里と再び同じクラスになったことでした。

この頃、早坂のレストランは強気な料金設定のせいでお客が減り、苦しい状況にありました。

そんな時に、お店を訪れたのが実里とその両親でした。

早坂は彼らに対して失礼な態度をとり、後日、章子はそこに住んでいることを実里に知られてしまいます。

そこから実里による壮絶ないじめが始まります。

 

その頃、章子にもようやく生理がきましたが、ある日、教卓の上に使用済みのナプキンが置かれていて、章子には自分のものに思えました。

その場で章子のものだと知られることはありませんでしたが、それを見たクラスメイトの男子・木谷はトイレで嘔吐してしまい、章子は罪悪感を覚えます。

しかし、実里のいじめはこれだけでは終わりません。

別の日に章子のポーチを盗むと、教室に章子の使用済みナプキンの匂いが充満してしまい、木谷はまた嘔吐。

実里は章子に突っかかり、章子はちゃんと替えたと主張しますが、なら章子の口臭や体臭がひどいのだと言いがかりをつけられ、たまらず章子は教室を飛び出します。

 

翌日、頑張って登校しますが、実里のいじめは変わらずで、担任も見てみぬふり。

しまいには章子に消臭スプレーなどを渡し、学校に来なくなった木谷が再び登校できるよう協力してという始末。

これで章子は自分が臭いのだと思い込み、以降、不登校になります。

この頃、早坂のレストランの経営はますます悪化し、文乃は早坂の友人で、小学校の同級生だった須山亜里沙の父親から紹介してもらった訪問介護の仕事をしていました。

 

それでも状況はさらに悪化します。

少しでも悪臭を防ごうと章子は多く香水をつけ過ぎてしまい、それを早坂が怒鳴ります。

すると、それをお客として来ていた高級ホテル『いのや』を展開する会社の社長・猪川に見られ、せっかく実現するはずだったいのやの新店舗への引き抜きはなくなってしまい、怒った早坂は章子に暴力をふるうようになります。

いつまでこんな日が続くのか、章子は絶望しますが、終わりはすぐにやってきました。

 

早坂に殴られて目を閉じていた章子を、文乃が火事だと起こします。

無事に逃げ出しますが、レストラン再開にはかなりの時間がかかりそうです。

また犯人について、火事の一ヶ月前から林がうろついているのを須山が目撃していて、林が放火したということで片付きます。

その後、早坂に見捨てられた文乃と章子は須山の紹介でアパートに移り住みます。

 

これ以上ない最悪な状況ですが、章子に訪問者が現れて状況は変わります。

人の気配があっても出ない章子ですが、郵便ポストに手紙が入っていて、差出人は亜里沙でした。

亜里沙の指定したコンビニに行くと彼女は待っていて、智恵理という先輩の家に章子を連れて行きます。

智恵理は不在でしたが、亜里沙は不登校になった事情を章子から聞き、口臭も体臭も気にならないと断言。

さらに翌日、勇気を持って登校した章子を実里は懲りずに貶めようとしますが、そこに同じく不登校の亜里沙が現れ、実里や木谷、他のクラスメイトを糾弾。

一緒に教室を出ると、二人は翌日から保健室登校を始めます。

その後、亜里沙から智恵理を紹介され、章子は智恵理の家にあるパソコンで父親の残したフロッピーディスクの中身を見ます。

そこには章子に充てられた衝撃的なメッセージが残されていましたが、ここでは詳しい内容は明かされません。

 

また智恵理が自宅を放火し、両親に重傷を負わせます。

章子はショックを受けると同時に、亜里沙には自分に打ち明けていない秘密があると感じます。

悲劇は続き、今度は亜里沙が大事にしていた弟・健斗が自殺。

章子は亜里沙を慰め、一緒にドリームランドに行こうと約束します。

しかし、ここからこれ以上ない辛いことが語られます。

亜里沙は健斗を自殺に追いやった犯人を特定し、それは父親の須山でした。

 

彼は介護ヘルパーの派遣をする裏で売春の斡旋をしていて、早坂とも繋がっていました。

その客には猪川もいて、彼は美少年好きでした。

そこで早坂は健斗を差し出すよう須山に言い、彼はお金に負けて健斗に猪川の相手をさせていました。

そして、文乃もまたそういうことをさせられているだといいます。

 

亜里沙は父親を殺害することを決意。

章子も同じく、文乃を守るために早坂を殺害することを決意。

二人はタバコから毒を作り、それで殺害することに。

また智恵理の例から、自分の家に火をつける精神状態であれば三十九条が適用されることを利用し、毒を飲ませた後、家に火をつけることを約束します。

 

そして、最後の手紙。

章子は早坂の飲むウィスキーのボトルに毒を仕込むと、亜里沙と一緒に行くドリームランドの準備をします。

早坂が帰ってくるのを押し入れで待ち、また会おうと未来の自分に向けて綴るのでした。

須山亜里沙

こちらは亜里沙の視点から物語が進行します。

小学校低学年で母親を亡くし、父親である須山から暴力をふるわれていました。

その後、林が担任になって亜里沙がDVを受けていることに気が付きそうになると、ストレスの捌け口を健斗に変更。

二人はそれでも誰にも相談せず、支え合って生きていました。

 

そんな中、亜里沙は同じ県営住宅に住んでいた頃に知り合った二歳年上の智恵理から色々なことを教えてもらい、一度は諦めていた高校進学を目指すことに。

またここで、亜里沙もまた未来の自分からの手紙を受け取っていたことが判明します。

亜里沙は章子のことを思い出し、林に気にかけてもらえていた彼女のことが嫌いだったことを明かします。

しかし、それ以降の事情も知っていて、須山と早坂の始めた会社に文乃が雇われていることから嫌な予感を覚え、章子も暴力をふるわれているのではと心配になって久しぶりに中学に登校、そこで章子が不登校になっていることを知ります。

亜里沙は智恵理や、その親友のまどかに教えてもらったことを章子にも教えてあげたいと彼女を呼び出し、交流を深めていきます。

そんな中、亜里沙は公園で智恵理を見かけますが、彼女は別人のような態度、声で亜里沙にケンカをふっかけ、亜里沙はなんとかその場を逃げ出します。

 

後日、まどかに会ってこのことを話すと、彼女は智恵理が二重人格であることを教えてくれます。

亜里沙が会ったのは竜崎さんと呼ばれるもう一つの人格で、智恵理が自宅を放火したのはこの翌日でした。

それ以降、須山が暴力をふるわなくなったことで平和が訪れ、亜里沙は健斗にドリームマウンテン三十周年記念の栞を見せます。

未来の手紙に、これが同梱されていたのです。

 

亜里沙は健斗に笑ってほしいと、ドリームランドに連れて行くことを決めます。

一方で、健斗が須山から少なくないお小遣いをもらっていることに嫌な予感を覚えながらも、何も言う事が出来ませんでした。

そして翌日、健斗が飛び降り自殺をし、遺書には亜里沙をドリームランドに連れていけなかったことへの謝罪の言葉が書かれていました。

未来からの手紙には二十年後も亜里沙と健斗は仲良くしていると書かれていたため、偽物だと判明。

そして冒頭のバスのシーンに戻り、亜里沙は自分だけがドリームランドに、そして未来に行ってもいいのか、そもそも行けるのかと自問するのでした。

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篠宮真唯子

ここでは、小学校四年生の時、章子たちの担任だった篠宮の視点から物語は進行します。

彼女が一歳の時には父親が浮気をしていて、母親は彼女を連れて実家に戻り、祖母と三人で暮らしていました。

母親も真唯子が三歳の時に家を出てしまい、祖母と二人暮らしに。

祖母は素麵専門の製麺所で働いて生計を立て、真唯子はそんな祖母を楽させたいと公務員を目指すようになります。

周囲からは人前で堂々としているから先生はどうかと勧められ、それ以来、教師が真唯子の目標となりました。

 

祖母は彼女の学費にと内緒で貯金をしていて、そのお金を元手に彼女は東京の大学に進学します。

同じアパートで出会ったのは、別の大学に通う同学年の原田でした。

映画が趣味の彼に真唯子は次第に惹かれていきます。

祖母は教育実習で真唯子が帰ってくるのを楽しみにしていましたが、その前に他界。

祖母の遺品を整理していると、そこに現れたのは真唯子を捨てていった母親で、彼女の狙いは祖母が真唯子に渡したお金でした。

行政書士の門脇という男性も同席していて、法律などよく分からない真唯子はなす術もなくお金を奪われ、夢を目指すどころか、大学の学費をどうするかが問題となってしまいます。

 

ここで場面は真唯子が章子たちの担任である時に変わります。

実里の母親からの告発により、真唯子がいかがわしい映像作品に出演していることが判明。

それはカラオケビデオですが、ラブホテルにだけ流れる仕様のもので、これを最初に発見してきたのは実里の父親だといいます。

真唯子は出演していたことを認めた上で、過去のことで問題がないことを主張。

しかし、教え子のことを考えると、この場所を去らなければいけないと感じていました。

 

ここで場面は二十歳の時に戻ります。

学費をどうしようか考えていると、真唯子は見知らぬ女性に声を掛けられ、カラオケのイメージ映像に出演しないかと誘われます。

ラブホテルでの打ち合わせはおかしいと思いつつも、高額な収入、誠実そうな女性の説明に、真唯子は出演を決め、後日、女性の指定した場所に向かいます。

そこで行われた撮影は彼女の想像したものとは違うアダルトなもので、撮影後、真唯子はショックから原田と別れることを決意。

しかし、原田は真唯子のことを夢よりも大事だといってくれ、真唯子は原田を連れてラブホテルに行き、自分の出演した映像を見せます。

事情を話すと、おかしいと思わなかったのかと何度も原田は怒ります。

やっぱり理解してもらえないのだと真唯子は失望し、やはり別れを選択します。

その後、真唯子の母親がはったりの行政書士を連れて祖母のもらえるはずだったお金を回収して歩いていること、実は祖母は遺言書を書いていて、あのお金は真唯子のものであることが判明。

自分が悩みながらしてきたことは、一体なんだったのか。

真唯子はやり場のない怒りに包まれます。

 

ここで場面は変わり、真唯子の退職日が決まり、彼女は残された問題と向き合うことを決めます。

真唯子は章子のことを気にかけていて、彼女の内緒で入院中の父親・良太に会いに行きます。

良太は自分の死後、章子に未来からの手紙を書いてほしいと依頼。

真唯子は知っている章子のエピソードを交え、幸せな未来が待っているような内容の手紙を書きます。

そこにドリームマウンテン三十周年記念の栞を同梱させるわけですが、その入手方法が明らかになります。

原田は大学卒業後、ドリームランドなどを運営するドリームワールドに就職し、そこで間違えて作ってしまった試作品を真唯子に見せてくれます。

それは本来であればドリームランド三十周年記念の栞になるはずでしたが、誤ってドリームマウンテンの三十周年記念としてしまったのです。

本来であればドリームマウンテンが三十周年を迎えるのは二十年後であり、真唯子はこれを利用して未来の手紙に信憑性を持たせられないかと考えます。

真唯子はもう一人、亜里沙のことも気になっていたため、この栞を二つもらい、亜里沙に対しても未来からの手紙を書くことにします。

 

そして場面は変わり、真唯子が教師に、原田がドリームワールドに就職した後のことが描かれます。

真唯子は決意し、原田とドリームランドに行きます。

特別なチケットを持つ人だけが入ることのできるドリームランドのお城のバルコニーで花火を見て、原田は重大な告白をするつもりでした。

しかし、真唯子のつぶやいた言葉を聞いて、延期にします。

ああ、子どもたちみんなに見せてあげたいな。

それは花火のことではありません。

真唯子が見せてあげたいのは、その先にある未来でした。

樋口良太

ここでは、良太の視点で物語が進行します。

良太は醜い容姿に悩んでいましたが、曾祖父と瓜二つであり、彼の顔は加齢と共に人並みになっていたことが分かったことで少し安心します。

また知性も曾祖父のものを受け継ぎ、小学校に入る前から難しい本を読むことができました。

それでも今は醜い容姿であり、良太は小学校の同級生に相手をされません。

そこで刺激を求め、物語を書くことに。

そして章子がフロッピーディスクで見つけたメッセージ、それは良太の書いた三作目の物語であり、高校生の時にあった本当の出来事でした。

 

良太は神倉学園高等学校という男子校に通い、そこで美しい容姿の森本誠一郎と出会います。

良太が同級生をかばったことで誠一郎は良太をターゲットにして、ひどい言葉をぶつけてきます。

それに対して良太も対抗し、誠一郎はやがて彼に興味を持ち、奇妙な友人関係が始まります。

元々誠一郎は成績があまりよくありませんでしたが、良太のノートを見せてもらううちにあっという間に成績を上げ、それ以降も良太に勉強を教えてもらいます。

夏休みに入ると、良太は誠一郎の家に呼ばれ、最高のもてなしがあると誠一郎は言います。

隣の部屋に裸の女性が待っているから行ってこいと言われ、良太はいけないと思いつつも欲求を抑えきれず、部屋に行きます。

 

そこにいたのは裸の、人形のように美しい少女で、気が付けば彼女を押し倒していました。

我に返ると自分のしたことに耐えられず、彼女を残して退出。

後に誠一郎は、女性は自分の妹で真珠(まじゅ)といい、他の人に対しても売っているのと打ち明けてきます。

良太は真珠を救いたいと思い、他の人に売らせないよう多めの金額を誠一郎に払い、何度も真珠に会いに行きます。

前のようなことはせず、ただ会話をしたり、一緒にマドレーヌを作ったり。

次第に真珠に人間らしい感情が戻り、誠一郎も喜んでいるようでした。

 

しかし、良太が森本家に泊まることになった日、彼は残酷な真実を知ります。

その夜、真珠は父親に犯されていたのです。

良太は誠一郎に連れられて家を出ると、誠一郎から自分の家のことを話し始めます。

彼は最初からこれを見せるために良太を家に泊めていて、父親が真珠にはじめて手を出したのは、彼女が小学校五年生の時でした。

父親は県会議員で周囲からの信頼も厚く、誰からも疑われません。

家族でドリームランドに行くことになって、一度は真珠も以前のように戻りますが、行った先のホテルで母親は自殺。

森本家はもはや手がつけられてないほど壊れていました。

誠一郎は真実を誰かに打ち明けて、父親の庇護なしに生きていく覚悟はなく、父親と同じ悪魔になることで自分のことを守ります。

そして、落ちるところまで落ちたところで誠一郎が出会ったのが、良太でした。

良太は本来真珠が持っている人間としての魅力、知性を引き出し、誠一郎はついに父親を殺害することを決意します。

 

それには良太の協力が必要で、概要は以下の通りです。

誠一郎が母親の命日に父親を毒殺し、その遺体を家に置いておきます。

その夜、良太が家に火を放ち、もしバレたら本当のことを話してもいいといいます。

その間、誠一郎と真珠はドリームランドに行くということで、火事に巻き込まれることはありません。

当然、良太は躊躇しますが、真珠を解放するために協力を決意。

 

決行日が近づいたある日、誠一郎ははじめて『良太』と呼び、それが彼と会った最後でした。

そして決行日、森本家に火を放つと、ドリームランドにいるはずの真珠が現れ、良太が火をつけたのを目撃。

誠一郎は用事を思い出したといって真珠を一人で先に行かせ、彼女は一人でバスに乗るのが怖くて戻ってきたのだといいます。

真珠は良太に逃げるよういい、最後にひどい言葉をぶつけて彼を逃がします。

 

翌日、ニュースには父親と誠一郎の死が報道され、真珠が性的虐待を理由に放火し、逮捕されたとなっていました。

さらに同級生から手紙が届き、それは誠一郎からの手紙でした。

彼は父親を毒殺する勇気がないため、睡眠薬で眠らせ、良太に放火してもらうことを選びました。

さらに自分も睡眠薬を飲み、一緒に死ぬことは決めていて、良太に反対されないよう嘘をついていたのでした。

誠一郎は二人の死は良太のせいではないことを伝え、その上で真珠を一生守ってくれとお願い。

最後には、たった一人の親友であることが書かれていました。

 

手紙を読み終え、ようやく良太は真珠が自分をかばったことに気が付きます。

真珠は誠一郎の計画を知らず、ただ良太が自分を解放するために火をつけたのだと思い込んでいました。

そこで心を鬼にしてひどい言葉を良太にぶつけ、彼を逃がしたのです。

誠一郎に真珠を守るよう言われていましたが、守られていたのは良太の方だったのです。

 

それから五年後、二人は再会。

今度こそ真珠を守ると良太は決意し、彼女は新しい名前になって二人は結ばれます。

この後のことは書かれていませんが、幸せな物語だと良太は語っています。

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結末

冒頭の話に戻り、章子はバスに乗るまでのことを思い返します。

その夜、早坂と文乃が家に帰ると、嘘をついて文乃に買い物に行ってもらい、早坂は毒入りのウィスキーを飲んで苦しみます。

章子はそのタイミングで家に火をつけますが、そこに文乃が帰ってきて、章子に早く行かないとドリームランド行きのバスに間に合わないことを優しく告げます。

そして、容姿や性格だけでなく、自分を助けようとしてくれること、何も相談してくれないところも良太にそっくりだと。

章子は良太の残した物語を読んで二人に何があったのか知っていました。

母親の本当の名前を口にしようとしますが、文乃は二人で『文章』になるこの名前が本当の名前だといいます。

そして耳の形が自分と一緒だと話した上で、いってらっしゃいと章子を送り出します。

章子は戻りたいと思いつつも、戻れば汚い言葉で良太の時と同じように罵られるのは分かっていて、亜里沙の待つ駅に向かって走り出します。

早坂は誠一郎にそっくりの顔をしていて、文乃は罪滅ぼしのような気持ちで早坂と接していたのではないか。

早坂から章子を救うために、レストランに火をつけたのは本当は文乃だったのではないか。

章子はドリームランドに行った後、自首することを決めていました。

それが文乃の望まないことだとしても、今度は文乃のことを守りたいと思いました。

だって良太や章子のことを守ってくれた文乃と、同じ耳の形をしているのですから。

 

そして場面は変わり、バスはドリームランドに到着しました。

そこで二人ははじめて、同じドリームマウンテンの三十周年記念の栞を持っていること、未来からの手紙が届いていたことを知ります。

そして、亜里沙は家に火をつけられなかったことを告白。

彼女は父親が死んでおらず、戻ってから地獄が待っていることを恐れていました。

章子には文乃がいるけれど、亜里沙には守ってくれる人がいない。

ドリームランドに入場前、章子は文乃と同じ形をした耳に触ると、亜里沙にいいます。

ドリームランドに訪れるのは今日じゃない、二人してこの栞を持っているということは、三十歳になった二人も一緒に行ったということではないかと。

だから今日はやめて、助けを呼ぼう

世の中にはちゃんと話を聞いてくれる大人もいるはずだから、大きな声で叫ぼう、と

二人は手を繋いで顔を合わせると、同時に大きく息を吸います。

いつか、笑顔でこの夢の国のゲートをくぐることのできる未来のために、叫ぼうと決意するのでした。

最後に

湊作品は色々な角度から物語を照らすため、抱いていた印象ががらりと変わります。

どうしようもないほど絶望に満ちた今まででしたが、それでも明るい未来は待っている。

そう信じて、前を向いて行動する人たちに、僕は希望を感じました。

これは確かに『未来』を描いた作品です。

この作品は、湊さんの明るい『未来』を照らし出す、そんな作品だと僕は強く感じました。

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