ホラー
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『食べると死ぬ花』あらすじとネタバレ感想!人間の欲望や醜さを極限まで濃縮した一冊

harutoautumn
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その美しい男の正体を、決して知ろうとしてはいけない。
あなたも、戻れなくなるのだから。
最愛のひとり息子・裕也を失った桜子は、カウンセラーの久根ニコライからふしぎな壺を与えられる。美しい彼は、3つのルールさえ守れば裕也が帰ってくると言うが――。絶望した人間たちに久根が与える贈り物は、神の奇蹟か、それとも悪魔の呪いなのか。全ての謎が繋がるとき異なる世界への扉が開く。人間の欲望を抉(えぐ)り出す、極上のホラーミステリ。文庫化に際し、最終章「診断の鍵」を書下ろし収録。

Amazon内容紹介より

芦花公園さんの作品は褒め言葉として、読んでいて気持ち悪くなる作品が多いのですが、本書はその中でも頭一つ出ています。

久根ニコライという登場人物を軸に置いた短編集で、サンタクロース伝説がモチーフになっています。

サンタクロースといっても、クリスマスの夜にプレゼントを持ってくるあの人というよりも、そのもととなった聖ニコラウスのことです。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想などを書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

大歳の棺

美咲は家庭で大きなストレスをためていました。

同居している姑に嫌味を言われ、夫の雄一はそれを見て見ぬふりで、娘の一花は二歳を間近にしてまだ言葉を話せません。

すべてを抱え込む美咲ですが、ある日、仕事の帰りに喫茶店に寄りますが、そこで久根ニコライという青年に声を掛けられます。

はじめは警戒する美咲ですが、ニコライの不思議なオーラに心を許し、彼に会うことを楽しみにするようになりますが、それが悲劇の始まりでした。

選択の箱

雄一の弟である雄三の話。

雄三はバイタリティがなく、父親のコネクションで今の会社に就職しますが、どこか人生の選択を誤ったのではないかと不満を抱いていました。

そんな時、雄三は会社の元先輩で独立して成功したという萩沼に連絡をとり、高額なセミナーに参加するようになります。

その会場でニコライで出会い、彼は人生を変えるアイテムとして選択の箱を雄三に渡します。

帰還の壺

雄一の妹で長女の桜子の話。

桜子は仕事中に警察から連絡があり、息子の裕也が車に撥ねられたことを告げられます。

間もなく裕也は亡くなり、夫婦は撥ねた運転手の女性に対して死刑を望みますが、出た判決は遠く及ばない軽いものでした。

そこから精神的にまいってしまい、カウンセリングを受けることになりますが、そのカウンセラーがニコライでした。

瞋恚の石

雄一の母親で姑として登場した公子の話。

公子には双子の妹で弘子がいて、悪い女の代表のような彼女のことを憎んでいました。

なるべく弘子と関わらないよう人生を歩み、大学卒業前に義之と結婚。

卒業後は公立中学校の教師をすることになりますが、そこで公子が好感を持っている一つ上の先輩がニコライでした。

黄金の盃

雄一の弟、雄三の兄である雄二の話。

彼は幼い頃、荒れる夜の海に近づき、波に飲まれて死にかけた経験があります。

幸い、陸に戻ることができましたが、彼は死ねなかったことを残念に思います。

その時、ニコライと出会い、彼は次に会う時にいい子でいたら、少しだけ海をあげると言われます。

それから時が経ち、再会のタイミングがきました。

天賦の才

狐塚応太郎は芸術家として大きな成功をして、世間から高い評価を得ています。

しかし彼には憎い存在があって、それは小学二年生の一花でした。

彼女は相変わらず一般的なコミュニケーションがとれませんが、その分、天才的な絵を描くことができ、狐塚は児童養護施設で暮らす彼女のことを引き取りました。

はじめは一花の才能を目の当たりにして喜んでいましたが、狐塚の立場さえ脅かす彼女の存在が次第に疎ましくなっていたのでした。

狐塚が悩む中、マネージャーのような存在であるニコライが彼を支え、導きます。

無欠の人

桜子が義甥の宗助を刃物で殺害したことがニュースとなり、彼女は逮捕されます。

医師の四方幸之助はカウンセリングの末、桜子が正気でないと判断しますが、彼女は自身が正常であることを主張します。

桜子が四方にあてた手紙が掲載されていますが、息苦しくなるほど理解できない内容の連続でした。

診断の鍵

四方が雄一、雄三、桜子と面談をして、彼ら一族の異常性を述べています。

複数人が刑事事件に関与していて、彼らの口から共通して出てくるニコライの存在。

そして、四方の前にもニコライが現れ、対話が行われます。

四方は動揺しながらも冷静に対話をして、やがてこれまでの事象の意味ややニコライの正体に近づきます。

感想

止まらない不幸への落下

本書はとにかく不幸な話の連続です。

話自体は色々なところでありそうな話ですが、そこにニコライが現れ、彼を軸にして当事者たちはより大きな不幸へと向かってしまいます。

読者はそれを俯瞰して読んでいるので、ニコライが再び登場たびに、今度は何をするのかと怖さを覚えながらも興味津々になります。

ニコライの聖人のような振る舞いと爽やかな容姿。

それに対して事件の当事者たちの見た目も心も醜い様子はとてつもない対比で、極上のエンタメに昇華されています。

ただし、あまりに極上すぎて、摂取を続ける方もしんどいほどでした。

僕は面白いと興奮しながらも、やはり数回に分けて読まないときつかったので、まさに薬にも毒にもなる小説だと感じました。

モチーフへの興味

僕は聖ニコラウスについて知識がまったくなかったため、本書を読了してから調べて知りました。

知識があった上で読むと、芦花公園の意図するところが初読よりも分かるようになり、違った視点から再読を楽しむことができました。

芦花公園さんは相変わらず宗教的な内容をホラーと結び付けて描くのが上手で、冷静でどこまでも計算して構築されている様子がうかがえるようです。

あまり大きな声でいうと角が立ちそうですが、人の不幸を読むのはこの上なく面白い。

そんな人間の深層心理をついたかのような内容でした。

おわりに

本書はモチーフを知っていたり、全体の構成を知っていると、面白さが跳ね上がります。

可能なら初読はさらっと済ませてもらい、物語における意味や伏線などはあとで回収するとスムーズ、かつ二倍以上で楽しめると思います。

以下で著者本人が盛大にネタバレしているので、合わせてぜひ読んでみてください。

『食べると死ぬ花』解説

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