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『スキマワラシ』あらすじとネタバレ感想!少女の都市伝説を追う先にあるものとは?

harutoautumn
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白いワンピースに、麦わら帽子。廃ビルに現れる“少女”の都市伝説とは?物に触れると過去が見える、不思議な能力を持つ散多。彼は亡き両親の面影を追って、兄とともに古い「タイル」を探していた。取り壊し予定の建物を訪ねるうち、兄弟はさらなる謎に巻き込まれて―。消えゆく時代と新しい時代のはざまで巻き起こる、懐かしくて新しいエンタテインメント長編。再開発予定の地方都市を舞台にした、ファンタジックミステリー。

「BOOK」データベースより

都市伝説のような実体のないものをテーマに置いた本書。

恩田さんらしい幻想的な雰囲気が混じり、それでいて爽やかな部分もあり、彼女の新たな一面を見た一冊です。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

兄弟

太郎と散太は古道具店を営んでいる兄弟です。

太郎は記憶力が異常に良く、どんなことでも細部まで覚えています。

弟の散太は物に触れると、そこに宿る記憶が見えるという特殊な能力を持っていて、それが本書の軸となります。

スキマワラシ

過去に、散太は女のきょうだいがいたよな?と同級生に言われたことがあります。

名前に『さん』が入っているのでよくある誤解で、そんな人はいません。

ところが、同級生は散太が同い年くらいの女の子と一緒にいて、血縁関係者だと話していたような気がするのだといいます。

覚えはないけれど、どこか居心地が悪い。

そのことを散太は太郎に話すと、太郎は『スキマワラシ』かもしれないと話します。

本当にいないものがイメージで語られるようになり、やがて形となって人の記憶につく。

座敷わらしのスキマ版なのだといいます。

これは太郎の創作ではありますが、この時の話が二人が大人になってから再び目の前に現れます。

感想

都市伝説なのに爽やか

都市伝説。

僕はこの言葉を聞くと、昔の怪奇テレビ番組で見たような怖い映像を思い出します。

しかし、本書に出てくる都市伝説は『トイレの花子さん』のような、学校の怪談に出てきそうなエピソードを思い浮かべました。

本当はいないはずなのに、いるかもという曖昧な話が人々の間を伝わり、やがて確固たる実体を持つまでにいたる『スキマワラシ』。

散太の視点で物語を読むと、この体験は最初、恐怖が強めです。

ところが、物語が進むにつれてそこには悪意ではない、もっと別の思いがあり、それが爽やかに描かれているので、読了感としては表紙にあるような、晴れやかなものでそこがまず良かったです。

中盤までがやや冗長

今回は散太による会話のような解説が多いので、読書が苦手な人でもかなり読みやすいです。

一方で、入れなくてもよさそうな話も多いので、中盤までの冗長感は否めませんでした。

恩田さんの文章はとても面白いのですが、忙しい時に読むと、その面白さを受け止めるだけのキャパシティがない。

そんな感じです。

なので、本書をちゃんと楽しみたいという人は、時間をしっかりとった上で読むことをオススメします。

疲労感のある通勤・通学中に惰性で読むと、間違いなく一度はダレが訪れるので注意が必要です。

後半からは目が離せない

中だるみがありますが、とある人物が登場する後半以降は一気に面白さが増します。

スキマワラシに対する新たな視点を獲得するとともに、物語の核心が明らかになるパートでもあるので、ここまで一生懸命読んだ人にとってご褒美タイムとなります。

オチですが、至ってシンプルです。

人によってはそれだけ?と思うかもしれませんが、僕はそれくらいの方が本書にぴったりで、読んだ中で生まれた様々な感情を青空に解き放つような解放感があって好きでした。

おわりに

恩田さんは、なんでいつまでもこんなに瑞々しい文章が書けるのだろう。

単純に素敵だなと、羨ましくもあり、そんな彼女を感性が瑞々しい時期に知れた自分の幸運に思う。

本書とは直接関係ないけれど、そんな気持ちにさせてくれた一冊でした。

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