ミステリー

『三月は深き紅の淵を』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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鮫島巧一は趣味が読書という理由で、会社の会長の別宅に二泊三日の招待を受けた。彼を待ち受けていた好事家たちから聞かされたのは、その屋敷内にあるはずだが、十年以上探しても見つからない稀覯本『三月は深き紅の淵を』の話。たった一人にたった一晩だけ貸すことが許された本をめぐる珠玉のミステリー。

【「BOOK」データベースより】

タイトルが非常に印象的な作品で、同じく恩田陸さんの書いた『麦の海に沈む果実』、『黒と茶の幻想』と関連があります

『麦の海に沈む果実』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで! 三月以外の転入生は破滅をもたらすといわれる全寮制の学園。二月最後の日に来た理瀬の心は揺らめく。閉ざされたコンサート会場や湿原から失踪...

といっても、読んでいないと楽しめないわけではないので、単独作品として読んで問題ありません

読み進めるうちに自分はどんな作品を読んでいるか忘れてしまうような、非常に幻想的で入り組んだ構成になっています。

恩田さんの作品では結論がはっきりと提示されず、答えは読者に委ねられることがしばしばありますが、本書もそれに該当します。

なので、白黒はっきりつけたい、という方には向いていないかもしれません。

ちなみに、本書は四つの中編で構成されていますがほとんど関連はないので、それぞれ単独で楽しむことをお勧めします。

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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第一章『待っている人々』

招待

鮫島巧一は読書が趣味であることを理由に選ばれ、会社の会長・金子の自宅に招待されます。

そこには金子以外に一色、鴨志田、水越という老人が待っていて、巧一のことを値踏みするような態度をとります。

金子たちはこの集まりを『三月のお茶会』と呼び、巧一を呼んだ理由は一つ。

それは、この家に隠された『三月は深き紅の淵を』という本を見つけることでした。

三月は深き紅の淵を

問題の本ですが、作者は不明。

『第一章 黒と茶の幻想』、『第二章 冬の湖』、『第三章 アイネ・クライネ・ナハトムジーク』、『第四章 鳩笛』の四章から構成され、二百部しか作られなかったという幻の小説です。

この家の元の持ち主・圷比呂央(あくつひろお)が所有者の一人で、彼が亡くなった後も、この家のどこかに隠されているのだといいます。

また所有者は所有にあたって様々な条件を課されていて、友人に貸せるのは一人だけ、しかも一晩だけというのもその条件の一つです。

ここにいる巧一以外は『三月は深き紅の淵を』の一部、あるいは全部を読んだことがあり、巧一はその話を聞いて自分も読みたくなります。

捜索

家中の本をひっくり返せば済む話ですが、それでは面白くありません。

探すヒントは、圷の遺した『ザクロの実』というダイイング・メッセージだけ。

巧一は宿泊予定の二泊三日の中で自分なりの推理を考え、金子たちに披露します。

すると、金子たちは巧一のことを騙していたことを明かし、壁にかけてあるタペストリーをめくります。

そこにあったのは、二十九冊の『三月は深き紅の淵を』でした。

彼らはとっくに見つけ出していて、巧一にこの本の素晴らしさを知ってもらうために一芝居打っていたのです。

巧一は結局、この本を読むことなく家を後にします。

結末

しかし、物語には続きがありました。

巧一が帰った後、金子たちは全ての『三月は深き紅の淵を』が偽物で、中身は白紙であることを明かします。

『三月は深き紅の淵を』という小説はまだこの世に存在せず、金子たちが一人一章書いている途中だったのです

つまり、これは前宣伝になります。

新たに伝説が伝説を産むような物語。

四人はそんな物語を産みだすために、毎年のようにこんなことを繰り返していたのでした。

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第二章『出雲夜想曲』

出雲

出版社の編集者である堂垣隆子と江藤朱音は、隆子の提案で出雲に旅行に行きます。

しかし、ただの旅行ではありません。

隆子は『三月は深き紅の淵を』という幻の本の作者が出雲にいることを突き止め、それを確認したかったのです。

二人ともその本を読んだことがありましたが、隆子だけは事情が違いました。

実は、隆子の父親も所有者の一人だったのです。

謎の作者

隆子の父親はかつて作家を目指し、同人誌を仲間と作っていたこともあります。

その仲間には著名な作家もいて、その中に『三月は深き紅の淵を』の作者がいるのではと隆子は考えました。

様々な条件から作者は左利きで、女性であることが有力になりますが、そんな条件にあてはまる人はいません。

そこでもう一度状況を整理すると、隆子に父親の友人・両角満生には二人の娘がいて、そのうち左利きの方は弥生という名前でした。

彼女は現在、出雲に住んでいるということで、隆子は弥生こそが作者だと考えていました。

結末

出雲に着きますが、弥生の家には長い間、誰も住んでいませんでした。

諦められずに家の中を調べますが、そこで隆子は朱音が左利きであることに気が付きます。

そして、両角のとあるエピソードを思い出します。

彼は最初のペンネームを、二人の娘の誕生月からとり、『みなづき やよい』と名乗っていました。

『やよい』が長女の弥生であれば、次女は『みなづき』ということになります。

隆子はここで、朱音が『あかね』だけではなく、『JUNE(じゅーん)』とも読めることに気が付きます。

さりげなく六月生まれかと聞くと、朱音はあっさりと認め、自分が作者であることを認めるような昔話を始めます。

『三月は深き紅の淵を』は日記のようなものでしたが、父親がそれを製本して世に送り出してしまいます。

姉妹は回収をお願いしますが、全てを回収することなどできず、伝説となって人々の記憶に残ることになってしまいました。

そこで朱音は考えました。

『三月は深き紅の淵を』の伝説を打ち負かしてくれる、『小説のなる木(作家)』を見つけようと

隆子は朱音のその言葉に小さく、何度も頷くのでした。

第三章『虹と雲と鳥と』

他殺?

高台にある公園から、高校生の篠田美佐緒と林祥子が落下して死亡。

祥子の友人・穂積慎子が公園の事故現場に向かうと、そこには美佐緒の元交際相手・廣田啓輔がいました。

慎子は、祥子が美佐緒に殺されたと考えていますが、啓輔は全く逆のことを考えていました。

二人が話し合いになるわけもなく、先に啓輔がその場を後にします。

彼は、祥子が美佐緒を殺害したと信じて疑いませんでした。

異母姉妹

啓輔は、美佐緒と祥子が異母姉妹であることを知っていました。

さらに美佐緒の前に祥子と付き合っていたこともあり、彼女のプライドの高さを知っていました。

 

一方、美佐緒の家庭教師をしていた野上奈央子は、差出人の名前のない封筒を受け取ります。

中にはノートが入っていて、一ページ目には『虹と雲と鳥と』と書かれていました。

すぐに奈央子は美佐緒の字だと気が付きます。

それは日記で、異母姉妹である祥子と会った時のこと、啓輔の件もあり祥子を怒らせてしまったことが書かれています。

奈央子は例の公園で、美佐緒のいた美術部の後輩・早坂詠子と知り合います。

詠子から公園が老朽化して危ないことを教えてもらい、美佐緒がそのことを知っていたかどうかが問題になります。

話し合い

詠子は放課後、啓輔を呼び出し、奈央子の待つ喫茶店に行きます。

奈央子は手すりについて啓輔に聞くと、美佐緒は分かりませんが、祥子は知っていたことが判明。

その後、啓輔の後に美佐緒と付き合った神崎の証言から、美佐緒も手すりの危険性を理解していたことが判明します。

その後啓輔は、美佐緒と祥子が二人で新潟に行ったことを思い出し、二人は共通の父親のお墓参りに行ったのではと奈央子たちは考えます。

結末

奈央子と啓輔は、美佐緒たちが新潟にあるお寺を訪れたことを知り、現地に向かいます。

そこで聞いたのは、美佐緒たちの父・稲垣史朗が過去に起こした事件についてでした。

稲垣は殺人を犯し、すぐに自殺してしまいますが、その余波は加害者・被害者の親族を巻き込み、当時は大変な騒ぎでした。

 

ここからは美佐緒の回想。

美佐緒は祥子に呼び出されてあの公園に行きました。

祥子は完璧を求める少女であり、美佐緒がお墓参りを提案しなければ、人殺しの娘であることに気が付かずに済んだはずです。

祥子に殺される。そう、美佐緒は覚悟していました。

しかし、後に美佐緒の母親の証言から、父親は行きずりの男であったことが判明します。

祥子は憎しみを込めて美佐緒を追い詰め、美佐緒を支えていた手すりが折れ、そのまま落ちるはずでした。

ところが、祥子の中で迷いが生じ、とっさに美佐緒の手を握ります。

祥子は『おねえさん』とはじめて名前以外で美佐緒を呼ぶと、二人揃って転落したのでした。

 

最後に、奈央子は美佐緒が将来、小説家になりたいことを知っていました。

美佐緒の書きたかったのは四部作で、読んだ人が次々と自殺してしまうようなすごく情けない話です。

そして、おまえの書いた本のせいで人が死んだ、と後ろ指をさされることが夢でした。

今は亡き彼女に代わり、奈央子はいつか書くだろうと、予感を覚えるのでした。

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第四章『回転木馬』

はじめに

ここまで三人称で書かれていましたが、この四章だけは一人称で書かれています。

しかもその視点は恩田陸本人のような書き方で、p.346には『作者が主人公』と書かれているので、まず恩田さんの視点と見て間違いないと思います。

創作

この物語では、恩田さんがいかにして『三月は深き紅の淵を』という作品を書こうかと悩む姿が描かれ、いわば楽屋裏のような内容になっています。

何度も『回転木馬』という物語の書き出しを考えては、書き直す。

p.344にはカップルのケンカに苛立ち、『さっさと別れちまえ、ぐず』と過激なことまで書かれていて、非常に恩田さんの心情がはっきりと見て取ることができます。

麦の海に沈む果実

恩田さんは『三月は深き紅の淵を』の後に『麦の海に沈む果実』という作品を世に送り出しています。

この章では、理瀬をはじめ『麦の海に沈む果実』に登場する人物たちの物語が断片的に描かれていて、『麦の海に沈む果実』の内容と非常に酷似しています。

結末

恩田さんは試行錯誤を繰り返し、最後に四部作のタイトルを『三月は深き紅の淵を』と決め、書き出しを提示します。

それは第一章『黒と茶の幻想』の冒頭ですが、内容は本書中の第一章ではなく、恩田さんが実際に出版した『黒と茶の幻想』に似ています。

最後に

結局、幻の本『三月は深き紅の淵を』の実物は登場せず、その実態も分からないまま終わってしまいました。

しかし、本書では各章で『三月は深き紅の淵を』の可能性について描かれていて、読者の想像力次第で違った形の『三月は深き紅の淵を』があるかもしれません。

恩田さんの作品は読了後に想像する余地が与えられていて、読むだけでは終わらないところが良いですね。

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