ミステリー

『龍神の雨』あらすじとネタバレ感想!二組の家族がたどり着いた最悪と一筋の光

添木田蓮と楓は事故で母を失い、継父と三人で暮らしている。溝田辰也と圭介の兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母とささやかな生活を送る。蓮は継父の殺害計画を立てた。あの男は、妹を酷い目に遭わせたから。――そして、死は訪れた。降り続く雨が、四人の運命を浸してゆく。彼らのもとに暖かな光が射す日は到来するのか? あなたの胸に永劫に刻まれるミステリ。大藪春彦賞受賞作。

Amazon商品ページより

境遇の似た二組の兄妹(兄弟)を中心にしたミステリで、とにかく構成が優れています。

登場人物たちの認識を利用し、物語を思うように誘導して驚きを生み出す手腕はさすがの一言で、道尾秀介さんのミステリに外れはないと改めて思いました。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

二組の兄妹(兄弟)

添木田蓮と楓は事故で母親を失い、当時再婚したばかりの継父との三人暮らしを与儀なくされます。

次第に継父は精神をおかしくして蓮に手を挙げ、家庭は崩壊。

蓮は何とか楓だけでも不自由させたくないと高校を卒業してレッドタンという酒屋で働き出しますが、それでも元通りの生活は戻ってきません。

そんな中、蓮は楓が白く汚れたスカートを洗っているところを目撃。

信じられないことに驚き、継父を殺害することを心に決めます。

一方、本書にはもう一組の主人公がいて、それが溝田辰也、圭介の兄弟です。

二人は両親を共に亡くしていて、今は継母の里江と暮らしています。

里江は蓮たちの場合と違って母親であろうと必死に努力していますが、受け入れられない辰也は万引きを繰り返し、それを里江に見せつけることでささやかな嫌がらせを繰り返していました。

運命の日

蓮は以前、ラジオで小型湯沸器の不完全燃焼による死亡事故のニュースを知り、この方法で継父を殺害することを決意。

そして実行に移し、あとは仕事から家に帰って確認するだけでした。

その日、レッドタンを訪れた辰也と圭介は万引きをし、蓮によって捕まえられます。

幸い、蓮の恩情によって店長にも警察にも知らされずに済みますが、ここから二組の兄妹の物語が交差し始めます。

蓮は自宅に電話をして継父の死を確認しようとしますが、出たのは楓でした。

彼女は台風のせいで友だちの家に寄らず帰ってきていて、それによって蓮の殺人計画は未然に阻止されたのでした。

複雑な心境で家に帰る蓮でしたが、自宅で待っていたのは楓と継父の死体でした。

脅迫

楓は継父に襲われ、その後に小型湯沸器で殴り、自分のスカーフで継父を殺害したのだといいます。

蓮は元々考えていたプランで継父の遺体を隠蔽し、予定通りであれば二人の罪は明るみに出ないはずでした。

ところが、万引きのことで謝罪しに来ていた辰也と圭介は、死体を運び出す蓮と楓を目撃。

暗くて死体とは分かりませんでしたが、凶器のスカーフを偶然拾います。

その後、楓のもとに差出人不明の脅迫状が届き、殺人を知られていることが判明します。

四人はそれぞれ不安を抱え、物語は思いもよらぬ方向に展開します。

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感想

上質なミステリ

『シャドウ』でも思いましたが、道尾さんの作品に登場する少年少女の境遇は決して良いものではなく、絶望の中をさまよっています。

本書に登場する二組の兄妹はそれぞれが悩み、苦しみ、その爆発しそうな思いが事件を生み出し、さらに深い闇に落ちていきます。

いつになったら最悪に辿り着けるのだろう。

この言葉はかなりキツかったです。

余裕のない彼らは思いつきに囚われ、そうだと信じ込んで行動を起こしますが、ここに道尾さんの仕掛けが施されていて、後の驚きを生み出します。

どんでん返しに近い展開で、よっぽど読み込まないとまず驚くと思います。

後からネタ晴らしされると至るところに伏線が張られていることが分かり、そこではじめて本書がとんでもなく上質なミステリだったのだと気が付きます。

不安や怒り、疑いなど負の感情が渦巻き、決して明るい話ではありません。

そういう意味で万人受けする作品ではないもしれませんが、ミステリ好きの人にはぜひ読んでほしい一冊です。

救いはあるのか

本書の文庫版にはライターである橋本満輝さんによる解説がついていますが、これがまた秀逸で面白いです。

それが正解かどうかは別として、橋本さんは本書のその後についてある仮説を打ち立てています。

解説を読むと本書の熟読すべきポイントがいくつも見つかり、二度目以降の読書が数段面白くなります。

また橋本さんの仮説を信じれば、物語の結末は多くの読者が思っていた方向とは違うところに向かっていることが分かり、想像の余地が生まれるのも面白いポイントです。

もし〇〇だったら、△△かもしれない。

答えは道尾さんのみが知ることだし、もしかしたら決まっていないかもしれません。

しかし、読み終えても物語の行く末について考えられることは一つの楽しみであり、その余韻も含めて上質な作品であることは間違いありません。

おわりに

四人の胸中を表したような大雨に、最後に彼らに射し込んだ光。

道尾さんのミステリはミステリなんだけれど、人間ドラマが第一にあって、ミステリ以上の面白さを生み出しています。

油断しているとコロッと騙されてしまいますので、最後まで気を抜かずに読んでもらえればと思います。

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