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『夫のちんぽが入らない』あらすじとネタバレ感想!タイトルに凝縮された壮絶な人生を描く私小説

harutoautumn
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同じアパートに暮らす先輩と交際を始めた“私”。だが初めて交わろうとした夜、衝撃が走る。彼の性器が全く入らないのだ。その後も「入らない」一方で、二人は精神的な結びつきを強め、夫婦に。いつか入るという切なる願いの行方は―。「普通」という呪いに苦しみ続けた女性の、いじらしいほど正直な愛と性の物語。

「BOOK」データベースより

本書は元々同人誌として発売された短いエッセイで、その奇抜なタイトルからじわじわと人気を伸ばし、私小説として発売されました。

同人仲間には『死にたい夜にかぎって』の爪切男さんもいて、つい最近著書を読んだ僕は勝手に縁のようなものを感じました。

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タイトルから卑猥なものを連想する方が多いと思いますが、はっきりいって卑猥とは真逆に近い、出口の見えない辛い現実が待ち構えていました。

あまりの暗さに批判も多いようですが、こういう生き方もあるのだと主張するところに本書の意義があり、僕は新たに生きる希望を一つもらった気がします。

また本書はドラマ化もされました。

『夫のちんぽが入らない』実写ドラマ 地上波放送決定

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

夫のちんぽが入らない

主人公である私は交際期間も含めて二十年間、夫のちんぽが入らないことに悩んでいました。

夫とは大学生の時に知り合い、交際に発展して行為に及びますが、なぜか行き止まりとなり、ちんぽは入っていきません。

私はその前に処女を捨てることが出来たため、行き止まりではないはず。

四年後、ベビーオイルを使って半分まで入れることに成功しますが、私の局部は裂け、処女喪失どころではないほどの血が出てしまい、それ以上先に進めません。

それでも二人は結婚しましたが、この問題は今に至るまで解決されておらず、常に二人の背後につきまといます。

特に私は育った環境のせいで自己肯定感が低く、この問題はその性格に拍車をかけます。

自己肯定のために傷つく

私はちんぽが入らない問題の他に、小学校の担任として受け持ったクラスで消耗していきます。

同じく教師である夫にそのことを打ち明けることができず、とあるサイトで思いを吐露するようになりました。

しかし、そのサイトは出会い目的で利用するような場所で、私の日記を読んだ人からメールが来て、会うと行為を迫られます。

後に引けず、されるがままに身を任せる私ですが、ここで驚くべきことが起きます。

ちんぽが入ったのです。

望まない肉体関係だったはずなのに、ちんぽが入ったことで私は安心を得て、苦しいことがあると知らない男性と関係を持つようになりました。

しかし、これは傷を傷で誤魔化しているだけであり、私は日に日に闇に堕ちていきます。

辛いことは連鎖する

精神を消耗した私は教師を辞め、休むことを決めます。

しかし、体調が良くなるどころか自己免疫疾患にかかり、家事さえ満足にこなせないようになってしまいます。

それでも悲観的にならず、親戚たちが子どもを授かったのを見て、子どもを作ろうと決心します。

胎児に影響を与える薬をやめ、妊娠しやすい日に血を流しながら行為をする。

文字通り、命がけの子作りでしたが、そんな状態は長く続かず、体の限界と共に子作りを諦めることになります。

夫婦二人で生きていくことを選びますが、今度は夫が精神のバランスを崩してしまい、辛いことが連鎖して止まることを知りません。

何度も希望を打ち砕かれ、周囲からは普通という価値観で否定される私ですが、悩み抜いた末に自分の生きる意味を見つけます。

感想

タイトルが全て

本書がどんな内容かと聞かれれば、タイトルにある通りです。

しかし、その言葉からどうやってこだまさんの送ってきた壮絶な人生が想像できるでしょうか。

誰のものでも入らないのであればまだ諦めがつくかもしれませんが、こだまさんの場合、夫のものだけが入らない。

サイズの問題かもしれないし、形の問題なのかもしれない。

他の人のものは普通に入るということで、こだまさんは自分を肯定するために様々な人を受け入れ、その度に新たな傷を作るということを繰り返してきました。

夫はそんなこだまさんを受け入れ、今度こそはと淡い期待を抱いて行為に及びますが、その度に現実に打ちのめされます。

救いがない、といってしまうとこだまさんの人生を否定するようで抵抗がありますが、これらのことを当たり前のようにできる人からすればただ暗いだけの話だと思うかもしれません。

しかし、同じような悩みを持つ人からすればこの小説は一つの生き方のお手本であり、救いかもしれないという点で出版された価値があるのだと僕は考えます。

潔い

こだまさんは下ネタが苦手だといいますが、本書はこれでもかと性事情が赤裸々に語られています。

タイトルからして、もう下ネタです。

しかし、書かれている内容にエロは感じられません。

祈りを込めて行われる神聖な行為のようで、そこに快楽や安心といったポジティブな要素はありません。

性行為以外にもこだまさん自身の病気や夫のパニック障害など、立ちはだかる壁は高く、そして多く存在します。

しかし、不幸のエピソードがこれでもかと詰まっているのに、こだまさんの文章は淡々としていて、受け入れた上で生きているという覚悟が感じられました。

これらから僕は『潔い』という印象を強く受け、書いてある内容も意外とポジティブに受け取ることが出来ました。

こういうこともあるのか、くらいの気持ちです。

苦しんでいる人からすれば腹が立つかもしれません。

それでも僕はこういう風に受け取ることで、本書が人生に繋がる物語になるだと思いました。

おわりに

一度目にしたら、耳にしたら離れないタイトルと、それ以上のインパクトを持つエピソードの数々。

途中、当事者でもないのに読み進めるのが辛いこともありましたが、このタイミングで読めたことを感謝しています。

あと、ちんぽという言葉が頭から離れなくなりました。

あまり社会人として生活する中で使える単語ではないので、恋しくなったらまた本書を開きたいと思います。

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