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『西の魔女が死んだ』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

harutoautumn
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中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、何でも自分で決める、ということだった。喜びも希望も、もちろん幸せも…。その後のまいの物語「渡りの一日」併録。

「BOOK」データベースより

1994年に発売されて以来、多くの人に親しまれてきた本書。

多くの漢字にルビが振ってあったり、行間が広めで児童小説のように見えますが、内容はフィクションを交えながらも生きていく上で大事なことが書かれていて、大人にも読んでほしい作品です。

主人公のまいが感受性豊かなこともあり、本書は細部に至るまで世界が作り込まれていて、物語に引き込まれるとはこのことかと、時間を忘れて読んでしまいました。

また西の魔女ことおばあちゃんは優しくて、その包容力に読者はつい自分をまいに置き換えておばあちゃんの話を聞いてしまうと思います。

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

西の魔女が死んだ

冒頭、西の魔女が死んだことを主人公であるまいは母親から知らされます。

ちなみに、後述しますが、番外編にてまいの名字が加納であることが判明します。

まいは通う中学校を早退。

母親が運転する車に乗り、六時間かけて西の魔女の家に向かいます。

西の魔女とは母親の母親、つまりおばあちゃんのことで、彼女は本物の魔女でした。

そこでまいと母親は、二人だけの時に限って西の魔女と呼んでいました。

突然の訃報に悲しみよりも、強い衝撃をまいは受けていました。

思い出すのは、二年前のこと。

それはまいがおばあちゃんの元で過ごした一か月のことでした。

不登校

まいは中学に進級しますが、周囲にうまく溶け込めず、早々に不登校になります。

母親は英国人と日本人のハーフで、自分自身も学校に馴染めなかったこともあり、まいに事情を深く聞こうとしません。

しかし、単身赴任中の父親と電話する際、まいのことを『扱いにくい子』といい、まいは傷ついてしまいます。

まいは持病の喘息への配慮もあり、田舎のおばあちゃんの家でしばらく暮らすことになります。

まいにとって、おばあちゃんは底知れないところがあって怖くもあり、それ以上に魅力的で大好きな存在でした。

英国人のおばあちゃんは喜んでまいを受け入れ、一泊だけした母親が帰ると、二人だけの生活が始まります。

魔女になるために

まいは時折ホームシックに襲われますが、何でもお見通しのおばあちゃんの優しさもあり、自然に囲まれた生活に慣れていきます。

おばあちゃんにとってまいは扱いにくい子ではなく、感受性豊かな自慢の孫なのです。

まいが『おばあちゃん、大好き』というと、おばあちゃんは『アイ・ノウ』と返し、これだけで二人の親密さが分かります。

そんなある日、おばあちゃんはまいに魔女を知っているかと聞いていきます。

といっても、黒いローブを着て箒に乗って空を飛ぶようなイメージではありません。

今のように技術が発達する遥か前、普通の人よりも知恵や知識、特殊な能力を持った人たちがいて、それが魔女です。

まいは特殊な能力について、魔法ではなく超能力といいます。

おばあちゃんの祖母は魔女で、予知能力や透視能力を有していました。

しかし、それが原因で迫害されたこともあり、あまり人に言いふらすことはありませんでした。

注目されることは必ずしもプラスなことばかりではなく、まいへのいじめもある意味での注目だからです。

この話で、まいは自分にも魔女の血が流れていることを知り、超能力を使えるようになりたいとおばあちゃんにお願いします。

それに対しておばあちゃんは、相当努力しなければならないと前置きした上で、超能力は精神世界の産物だから、精神力を鍛える必要があると教えてくれます。

まいには難しいように思えましたが、それは日々の暮らしの中で鍛えることが出来ます。

早寝早起きなど規則正しい生活を送ることが第一段階で、まいはまず、いくつかの決まり事を決め、それに沿って生活することから始めます。

大事なことは意思の力を強くすることで、それは継続することで初めて身につきます。

まいにはあまりピンときませんが、おばあちゃんの言うことを信じ、取り組むのでした。

おばあちゃんは普段そういった能力を使うことはありませんが、一つだけ、いつ起きるのか分かるといいます。

その時期をまいは聞きますが、おばあちゃんは教えてくれません。

異変

まいがおばあちゃんのところに来て三週間が経ったある日、飼育していた雄鶏が何者かによって殺されているところをまいは見つけてしまいます。

野犬かイタチの仕業だろうと、おばあちゃんはいいます。

このことはまいの心を傷つけます。

あまり意識しないようにしますが、鶏を囲む金網には薄茶色の毛が付着しているのを見つけます。

残酷なシーンを目の当たりにして、まいは死んだ後のことについておばあちゃんにたずねます。

まいの父親は、死んだら何もなくなるのだと以前答えていましたが、おばあちゃんは違いました。

死んだことがないから分からないと前置きした上で、魂が肉体を離れて自由になり、それは嬉しいことだといいます。

おばあちゃんの話は、まいに生きる喜びを教えてくれました。

そして、もしおばあちゃんが死んだら、魂が肉体を離れたことをまいに知らせてあげると冗談っぽく言うのでした。

一方、楽しいことばかりではありません。

おばあちゃんの家の近くにはゲンジという男が住んでいますが、彼はまいのことを馬鹿にしたりおばあちゃんを外人呼ばわりし、事あるごとにまいの神経を逆なでてきます。

ある日まいは、ゲンジの飼う犬の毛が金網に付着していた毛と同じだと気が付き、おばあちゃんにそのことを言いますが、激しい思い込みは妄想になるとたしなめられ、裏切られたように感じるのでした。

決断

まいの父親がやってきます。

彼はまいの様子を見に来る以外に、目的がありました。

そろそろ三人で一緒に暮らすために遠くに引っ越すことを提案し、明日までに決断してほしいとまいにいいます。

引っ越せば転校することになり、まいは嫌な思いをしなくても済むかもしれません。

しかし、おばあちゃんの家からはかなり遠くなり、気軽に来れなくもなります。

まいは悩み、自分で決断することを前提におばあちゃんに自分の気持ちを打ち明けます。

そして結局、引っ越すことを決めました。

後悔

翌日、まいはゲンジがおばあちゃんの土地に侵入している現場を目撃。

彼のことが嫌いであることを改めて表明しますが、ゲンジに失礼だとおばあちゃんに注意されてしまいます。

この件以来、二人の関係はギクシャクしてしまいます。

そんな時、まいは新種の花を見つけたといっておばあちゃんに報告します。

それは銀龍草といい、亡くなったおじいちゃんが好きだった花でした。

毎年、おばあちゃんはそれをおじいちゃんの写真の前に飾っていますが、今年はまいのとってきた花を飾ります。

そして、とうとうまいが帰る日がやってきました。

おばあちゃんはどこか自信に欠けているように見えました。

まいは重たいしこりが心にあることに気が付きつつも、謝れずにおばあちゃんの家を後にしたのでした。

そして、冒頭に話は繋がります。

結末

まいは新しい中学でショウコと友達になり、いじめもありません。

ちなみに後述する後日談で、ショウコの名字が和邇(わに)だと判明します。

魔女の修行も忘れず行っていました。

そしてようやくおばあちゃんにどれだけひどいことを言ってしまったのかを理解し、ちゃんと謝ろうと思っていました。

しかし、おばあちゃんは亡くなってしまいました。

おばあちゃんの家に着くと、母親はまいに席を外させてから泣き、英国にいる親族などに連絡をとります。

そこにゲンジがやってきます。

彼が持っていたのは銀龍草でした。

彼はおじいちゃんに良くしてもらった恩があり、ここでようやくまいはゲンジのことが嫌いではなくなりました。

もらった銀龍草を飾ると、まいはあることに気が付きます。

汚れたガラスに、西の魔女から東の魔女(まい)へ宛てたメッセージが書かれていました。

子どもがするように指で、魂が脱出に成功したと書いてあるのです。

まいはおばあちゃんの深い愛情に気が付き、泣きながら叫ぶように『おばあちゃん、大好き』といいます。

すると、まいの聞きたいと思った声、おばあちゃんの『アイ・ノウ』の声が確かに聞こえたのでした。

おまけ~渡りの一日~

その後の話。

まいとショウコはサシバ(タカの仲間)の渡りを見に行く約束をしていましたが、ショウコの寝坊で間に合わず、展覧会に行くことになります。

二人は向かう途中、クラスメイトの藤沢と会います。

藤沢は兄が忘れたサッカーのユニフォームを届けようと急いでいて、この時、ショウコは思いつきます。

代わりに自分たちが持っていけば、興味のない展覧会でなくサッカーの試合が見られると。

そこでショウコは強引に話をつけますが、言い方のせいで藤沢はまいかショウコ、もしくは両方が自分のことを好きなのでは?と誤解してしまいます。

二人はユニフォームを藤沢の兄に届けますが、帰りのバスがなくなってしまい、困ってしまいます。

すると、藤沢兄の婚約者である笹島あやが送ってくれることになり、彼女の運転するダンプで展覧会に滑り込み、ショウコの母親から頼まれていた画集をなんとか買うことができました。

まいは展示されていた、サシバの渡りを描いた大きな絵に釘付けになり、自分の進むべき道を見つけ、思わず涙を流します。

そして、ショウコはまいがサッカーを好きでないことを初めて知り誤解がとけてがっかりします。

一方、藤沢弟からまいたちのことを聞いたあやは、二人にその気がないことを分かっていて、『とけてがっかりの誤解だったりして』と明るく言い放つのでした。

おわりに

魔女の話だけれど、派手な魔法は登場しません。

しかし、おばあちゃんは唯一の魔法でまいとの約束を果たし、その心はまいに受け継がれるのでした。

こんなに優しい物語を読むのは久しぶりで、いつまでも浸っていたい世界でした。

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