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『名も無き世界のエンドロール』あらすじとネタバレ感想!プロポーズ大作戦に隠されたドッキリとは?

ドッキリを仕掛けるのが生き甲斐のマコトと、それに引っかかってばかりの俺は、小学校時代からの腐れ縁だ。30歳になり、社長になった「ドッキリスト」のマコトは、「ビビリスト」の俺を巻き込んで、史上最大の「プロポーズ大作戦」を決行すると言い出した―。一日あれば、世界は変わる。男たちの命がけの情熱は、彼女に届くのか?大いなる「企み」を秘めた第25回小説すばる新人賞受賞作。

「BOOK」データベースより

本書は岩田剛典さん、新田真剣佑さん出演で映画化されることが決まっていて、2021年1月29日に公開予定となっています。

映画の公式サイトはこちら

あらすじにある『プロポーズ大作戦』という言葉だけを見ると恋愛小説に思えますが、そう単純な話ではありません。

また時系列が度々入れ替わるので、混乱しないように整理しながら読み進めなければならず、お世辞にも読みやすいとはいえません。

しかし、終盤になって全ての断片が一つのパズルのように組み上がる瞬間はもう大興奮で、この快感を味わうだけでも読む価値があると思います。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

小学校時代からの腐れ縁

城田(キダ)と澤田マコトは小学校時代からの腐れ縁で、二十歳頃までは似た人生を歩んでいました。

ところが三十一歳の現在、二人の人生は大きく異なっています。

マコトはワインの輸入代行会社の社長を務めていて、リサというモデルの恋人がいるという、絵に描いたような成功者です。

一方、城田は交渉屋と公で仕事とはいえない怪しい仕事をしていて、依頼主のために無理難題な交渉をこなしていました。

今ではかけ離れてしまった二人の人生ですが、マコトは城田に向かって『プロポーズ大作戦』を決行するのだと突然宣言します。

二人と時間を共有する女性

プロポーズ大作戦の話に入る前に、城田とマコトにはもう一人、小学校時代からの友人がいました。

名前はヨッチといい、彼女は小学校五年生の時に城田たちのいる小学校に転校してきました。

小学生とは思えない金髪に、刃物のように鋭くも脆そうな顔。

三人は現在親がいないという共通点を持っていて、不思議と気が合いました。

城田とマコトはヨッチが現れてくれたことで救われ、以後、どこに行くにも三人で行動するようになりました。

いつまでもこの関係が続けば良いのに。

そう願うのは当然ですが、そんな関係は唐突に終わりを迎えました。

プロポーズ大作戦とは

城田はマコトに無理やり協力させられ、少しずつ準備が進むプロポーズ大作戦。

マコトの恋人であるリサは大手飲食店グループの社長の娘で、モデルをしていることから自分に絶対の自信を持っていて、一言でいえばひどくわがままな女性です。

そんな彼女に対して、マコトはどんなプロポーズを考えているのか。

物語は時系列を変えながらマコトとリサの出会いや関係、城田とマコトとヨッチの関係や現在を描き、最後にこのプロポーズ大作戦の全貌を明かします。

時系列が入り乱れ過ぎて何の意味があるのか分からないと思いますが、最後に待ち構えているプロポーズ大作戦で全ての謎が明らかになります。

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感想

不思議なジャンル

冒頭にも書きましたが、本書はプロポーズ大作戦とあるような恋愛小説ではありません。

もちろんその要素もありますが、あくまで一部です。

ではどうジャンル分けできるかと聞かれると、非常に難しいというのが正直なところです。

物語の半分くらいは城田たちの学生時代やその延長が描かれているので、青春という要素もあります。

交渉屋としての城田の働きぶりだけを見ると、伊坂幸太郎さんの殺し屋シリーズが思い出され、一種のエンタメという気もします。

あらゆる要素を含みつつも、ジャンルとして明確に分類するのは難しい。

この辺りに本書の独自性、魅力があるように思います。

とにかく驚かされる

本書はとにかく時系列がバラバラで、なぜそのシーンを描くのかについて説明がしばらくなされないので、読むペースを掴むまで少し時間がかかります。

しかし、断片の数が集まってくると、うっすらと物語の本筋が見えてきて、プロポーズ大作戦が進行するに当たって予感が生まれ、やがて確信に変わる。

この過程がとにかく気持ち良くて、読書の集中力が後半になるにつれて増していくのを感じました。

最後はどんでん返し、というほど大きく予想を裏切る結末ではありませんでしたが、それでも驚かずにはいられない内容で、ここが本書最大の魅力だと思います。

あと、ナポリタンにタバスコをかけるかどうかで議論になったり、押しボタン式信号の押しボタンの存在意義が語られたりと、どうでも良い部分に小さなアクセントが散りばめられているのも好きでした。

邪魔にならない程度に、けれど読者の中に爪痕を残す。

絶妙なバランスだと思います。

そして、このアクセントのうちのいくつかは本編で立派な役目を持っているので、ぜひそういった仕掛けがないか注意深く読むのもアリです。

粗削りで読みやすいとはいえない

僕の中で概ね面白いといってよい作品でしたが、決して整った構成ではなく、読書に慣れていない人が読むとちょっと苦戦しそうかなと感じました。

頭の中で時系列が整理できない時は、印象に残る場面だけ覚えておく程度でも良いと思います。

物語の核であるプロポーズ大作戦に関係してくるのはおそらくそういった印象的な場面なので、そこだけ覚えておくだけで本書を楽しむには十分です。

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おわりに

おかしな、不思議な小説なのに、謎の説得力と強引さで読まされてしまった。

そんな読了感を味わいました。

これも、もしかしたらマコトの仕掛けたドッキリで、何かタネがあるのかもしれません。