『御手洗潔のダンス』あらすじとネタバレ感想!シリーズ第五弾は短編集
人間は空を飛べるはずだ、と日頃主張していた幻想画家が、四階にあるアトリエから奇声と共に姿を消した。そして四日目、彼は地上二十メートルの電線上で死体となっていた。しかも黒い背広姿、両腕を大きく拡げ、正に空飛ぶポーズで。画家に何が起きたのか?名探偵御手洗潔が奇想の中で躍動する快作集。
「BOOK」データベースより
御手洗潔シリーズ第五弾となる本書。
前の話はこちら。
短い中に驚きや意外性、御手洗潔の活躍などが凝縮されていて、しかもバリエーション豊富。
まさに短編集ならではの魅力が詰まった一冊になっています。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
山高帽のイカロス
御手洗の事務所を湯浅真という青年が訪れます。
湯浅はバーで赤松稲平という画家と知り合い、仲良くなります。
赤松は変わった人物で、自身が空を飛ぶことができると力説。
それだけでなく、別居中の妻でファッションブランドメーカーの社長・氷室志乃が空を飛ぶところを目撃したことがあるのだといいます。
そんな赤松が二日前から行方不明になっているのだといい、湯浅は御手洗に依頼しにきたのでした。
御手洗はこの依頼を面白いと感じて調査を始めますが、すぐに赤松は死体となって発見されます。
それも、ビルに渡された電線の上で、まるで空を飛ぶようにして。
ある騎士の物語
石岡は十年ほど前にお世話になった秋元静香というグラフィック・デザイナーの結婚式に参加します。
美しく、仕事でも成功を収めた静香。
そこで石岡は四人の男性と知り合い、静香を含めた彼ら五人にまつわる過去の話を聞きます。
十五年前のこと。
彼らはとある男性が至近距離からピストルで撃たれて殺害された事件に関係していました。
五人はそれぞれ男性を憎んでいましたが、男性が殺害された時、五人は十数キロも離れていて、容疑者からは外れています。
結局、犯人は見つからないまま、時間だけが経過していました。
しかし、話を聞いた御手洗は、たちまちのうちに真実を見抜いてしまいます。
舞踏病
御手洗のもとに、浅草で食堂を営む陣内巌という男性が依頼をしに訪れます。
陣内はひょんなことから由利井源達という男性を二階に住まわせることになります。
一ヵ月だけでよく、報酬は七十万円と破格です。
陣内は報酬に目がくらみ、由利井を住まわせることになりますが、すぐに異変に気が付きます。
夜になると、由利井が部屋で踊り出すのです。
近況報告
御手洗は変人であるにもかかわらず、女性人気が高く、熱狂的なファンを抱えていました。
そこで石岡は、そんなファンへのサービスのごとく、御手洗に関する新たな情報を次々に提示します。
感想
粒ぞろい
シリーズを通して、御手洗が魅力的であることは言うまでもありません。
それに加えて、本書は物語一つ一つの題材が素晴らしいです。
空を飛ぶという噂の男に、殺人事件への関与が疑われる謎多き美女。
そして夜な夜な踊る男性。
とにかく不思議で仕方ありません。
そこにはどんな秘密が隠されているのだろうと、当然気になります。
御手洗はそんな読者に真実を鮮やかに提示してくれるのですが、それがまた納得度の高い推理で良いです。
予想以上のトリック、真実で、読者の期待を裏切らない。
この辺りが本シリーズの魅力なのだろうと、再確認しました。
石岡の味わい
御手洗の影に隠れがちですが、助手である石岡もまた良い味を出しています。
シリーズを重ねるごとに存在感を増していき、ちょい役なのに、シリーズには欠かせない存在にまで成長しています。
いうなれば、カレーに添えられた福神漬けのようなものでしょうか。
上手い例えかどうか分かりませんが、そんな感じです。
最後の『近況報告』では、御手洗ファンのコメントが色々添えられていますが、彼女たちもなんだかんだいって石岡ありきで御手洗のことを好きになっているような気がします。
おわりに
シリーズを重ねるごとに面白さが広く、深くなっていく。
次はどんな事件と、御手洗の活躍が待っているのだろうと、ワクワクしながら読めるのが嬉しいです。
次の話はこちら。
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