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『三日月邸花図鑑 花の城のアリス』あらすじとネタバレ感想!和風アリスは怖くも切ない?

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「庭には誰も立ち入らないこと」―光一の亡父が遺した言葉だ。広大な大名庭園『望城園』を敷地内に持つ、江戸時代に藩主の別邸として使われた三日月邸。光一はそこで探偵事務所を開業した。ある日、事務所を訪れた不思議な少女・咲は『半分この約束』の謎を解いてほしいと依頼する。彼女に連れられ庭に踏み入った光一は、植物の名を冠した人々と、存在するはずのない城を見る。

【「BOOK」データベースより】

『和風アリス』という謳い文句に惹かれて購入した本書。

白川紺子さんは『後宮の烏』シリーズで人気ということですが、僕は本書が白川さんの初作品です。

代々受け継がれてきた言いつけと、そこに秘められた悲劇。

誰も立ち入ってはいけない庭に存在する城と、植物の名前をした人たち。

人物、花の名前が多すぎて頭の中がかなりこんがらがりますので、ゆっくり確認しながら読むことをお勧めします。

正直、アリス要素をそこまで感じませんでしたが、非常に読み応えがあって大満足です。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

約束

主人公は八重樫光一。

光一は家を離れて探偵事務所で働いていましたが、父が亡くなったのをきっかけに八重樫家に戻ります。

八重樫の家はもともと藩主の別邸で、三日月邸と呼ばれています。

さらに望城園という立派な庭もついていますが、父は光一に『庭には誰も立ち入らないこと』と約束を遺しました。

光一はここで探偵事務所を開くことにして、父の約束を破るつもりなどありませんでした。

お城

ある日、八重樫家に咲と名乗る十歳くらいの少女が訪れます。

彼女は光一のことを知っているようですが、光一に覚えはありません。

咲は『半分この約束』が何か調べてほしいと依頼し、光一を誰も入ってはいけない庭に誘います。

光一がそこで見たのは、庭にあるはずのないお城でした。

お城は梶坂城といい、そこに住む人たちはみんな変わっていました。

咲は野茨、門番は梶、奥女中の花海棠、谷空木、乙女百合、雪の下など、庭の植物たちがここでは人の姿で暮らしているのです。

光一は咲に連れられて十六夜と会い、『半分この約束』に関する話を聞きますが、肝心な部分を十六夜は思い出すことができません。

光一は一度お城を出ますが、外の世界では翌日の朝になっていました。

不思議な体験に戸惑いながらも、光一は調査をして『半分この約束』の意味を突き止めます。

それ以降も咲の依頼は続き、光一は次第に八重樫家の隠された秘密を知っていきます。

秘密

八重樫家に関係する人たちは過去のことを話したくない素振りを見せます。

触れられたくない過去があるのは明白でした。

ある日、光一のもとに依頼人が訪れ、それが物語の転機となります。

依頼人は牧実果子といい、かつて梶坂城の管理をしていた牧家のご令嬢です。

叔父の周平からは八重樫家と牧家は昔から仲が悪いと聞かされていましたが、実果子にそんな意識はなく、彼女は牧家のタブーとなっている大叔母について知りたいと光一に依頼します。

実果子の兄で光一の高校の同級生だった数馬も登場し、物語はラストに向かって動き出しました。

これを機に光一は牧家のことを通じて八重樫家のことを深く知り、やがて隠された真実に辿り着きます。

庭にある梶坂城の正体。

父の遺言の意味。

咲の正体。

恐怖はやがて切なさに変わり、最後までもう目が離せません。

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光一の魅力

本書の魅力の一つに、主人公である光一の魅力があると思います。

光一は何事にも無頓着なように見えますが、人の頼みを断れない優しい心の持ち主で、人に気に入られる素質を持っています。

それは男女関係なく、いわゆる『人たらし』というやつです。

牧数馬、実果子兄妹が揃って光一のことを意識しているのは、特に微笑ましいパートでした。

日常と非日常

本書は非現実的な部分が魅力的ですが、一方で光一の食事に関する話題が頻繁に出てきます。

光一はまめに食事をとるタイプではないので、つい誰もがお節介を焼いて彼に食べ物を持ってきてくれます。

こういった点がとても日常的で、日常と非日常の境がしっかり分かれて緩急がついているので、だれることなく最後まで読むことが出来ました。

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怖さと切なさ

物語途中、庭は『人喰いの庭』と呼ばれていることが判明し、光一も咲たちのいる城に足を踏み入れることが危険なのではと思い始めます。

今まで不思議で愛らしいと思えた世界が恐怖で塗り替えられる瞬間です。

しかし、光一は牧兄妹や叔父の周平の力を借りて庭のことを調べ、ついに父の遺した約束の意味を知ります。

そこからは恐怖ではなく、切なさが物語を占めます。

 

『私を見つけてほしいの』

 

咲の声が実際に聞こえるようでした。

これは決して光一の責任ではないし、父の遺した約束を守ればそれで済むはずでした。

しかし、光一は自分の気持ちや咲と向き合い、父の用意したものとは違う答えを見つけます。

これで物語の結末は大きく変わりますが、その結末はぜひ自分の目で確かめてください。

おわりに

何世代にも渡る話は複雑で、人物の相関図があるだけでもかなり読みやすかったかなと思います。

しかし一方で、小休憩のような心休まるやりとりも散りばめられているので、バランスとしては非常に優れています。

本書を読むと、日本庭園や花についてなんとなく詳しくなった気になります。

登場した花や植物を調べてみると、物語が一層鮮明になってより楽しめると思います。

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