『マリオネットの罠』あらすじとネタバレ感想!監禁された女性と殺人事件の関係とは?
“私の事を、父は「ガラスの人形」だと呼んでいた。脆い、脆い、透き通ったガラスの人形だと。その通りかもしれない”…森の館に幽閉された美少女と、大都会の空白に起こる連続殺人事件の関係は?錯綜する人間の欲望と、息もつかせぬストーリー展開で、日本ミステリ史上に燦然と輝く赤川次郎の処女長篇。
「BOOK」データベースより
赤川次郎さんの作品の中でも特に評価の高い本書。
犯人の視点でも描かれることで物語の全体像を読者が把握できているのかと思いきや、巧妙に隠された部分もあり、最後の最後まで油断はできません。
令和の時代に読んでも全く色あせない名作なので、ミステリ好きであれば外せない一冊です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
殺人事件
冒頭、とある男が林の中で車を走らせていたところ、女性を見かけます。
男は車の故障かと思い、親切心で女性を車に乗せます。
話すうちに男は女性に欲情し、同意のもとで行為に及ぼうとしました。
ところがその瞬間、女性は剃刀で男の首筋を突き刺して殺害。
女性は全裸のまま、林の中に消えてしまいます。
家庭教師
上田修一は二年間フランスに留学した経験があり、師である浅倉教授からその経験を買われて家庭教師のアルバイトを打診されます。
三か月の泊まり込みで、食事など完備で百万円。
後輩で婚約者の牧美奈子との結婚資金にするにはもってこいです。
修一は依頼を受け、長野県の茅野近くにある峯岸家に滞在することになります。
人気のない館に住むのは依頼人の峯岸紀子と妹の芳子、それに二人の使用人で、修一は芳子にフランス語を教えることになりました。
幽閉された女性
文句の言いようのない待遇でしたが、不穏なこともありました。
峯岸家の近くであらすじ冒頭に書いた殺人事件が一か月前に発生していて、警視庁の刑事が何度も峯岸家を訪れます。
長野県警の管轄なのに、なぜ東京から刑事がやってくるのか。
しかし、本当の問題はこれからです。
修一は偶然、館にある秘密の地下室を見つけ、そこで思いがけないものを見つけます。
地下室には鉄格子のはめこまれた部屋があり、そこに女性が幽閉されていました。
名前を峯岸雅子といい、紀子と芳子の妹です。
雅子は五年前に人を殺害して以来、ここに閉じ込められているのだといいます。
彼女にとってそれは正当防衛でしたが、紀子たちはその話自体を疑い、警察に届け出ずに自分たちで処理していました。
修一は紀子たちの隙をついて雅子を救い出す計画を立てますが、それが新たな事件の幕開けとなります。
感想
人間味のつまったミステリ
ミステリで起こる事件のほとんどは人間の願望、欲望が詰め込まれていますが、本書ではそれが顕著です。
登場する人物それぞれに大きな欲望があり、時に素直にそれを解き放ちます。
それが複雑に絡み合うことで事件は迷路のように推理が困難になり、読者を惑わせます。
善人そうでも一皮むくと悪人である、あるいはその逆というのは当たり前で、読んでいる僕らは常に疑ってかからないといけません。
このリーダビリティの高さと緊迫感のバランスが絶妙で、ミステリ初心者にもそうでない人にも満足のできる完成度の高い作品に仕上がっています。
最後まで油断できない展開
本書ではしばしば犯人の目線でも物語が描かれます。
そのため殺人を行った犯人は一目瞭然で、犯人が捜査をかく乱するために用いた手法も知ることができます。
捜査する側、逃げる側の両方を知ることでハラハラドキドキは倍増し、目に見えない攻防を俯瞰した状態で楽しむことができます。
しかし、そこで油断してはいけません。
これだけ多くの情報が与えられていても、読者には隠されている事実があり、それが物語の鍵を握ります。
新たな事実一つで物語がひっくり返るのは当たり前で、全てが明らかになるまでは油断できません。
どこまで深堀りすれば、事件の全貌が明らかになるのか。
まさに底が知れず、最初から最後までダラけることなく楽しむことができます。
おわりに
評判通り、いやそれ以上の素晴らしいミステリで、これまで全く赤川次郎作品に手を出してこなかったことを後悔するほどでした。
ミステリの魅力がこれでもかと詰まった名作なので、未読の人はぜひ挑戦してみてください。
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