『マチネの終わりに』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
天才クラシックギタリスト・蒔野聡史と、国際ジャーナリスト・小峰洋子。四十代という“人生の暗い森”を前に出会った二人の切なすぎる恋の行方を軸に、芸術と生活、父と娘、グローバリズム、生と死などのテーマが重層的に描かれる。いつまでも作品世界に浸っていたいと思わずにはいられないロングセラー恋愛小説を文庫化!
「BOOK」データベースより
福山雅治さん、石田ゆり子さん主演で映画化された書。
映画の公式サイトはこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=HCE2owGeIdw
読み終わって、特に石田さんは本書の洋子ぴったりだなとしみじみ思いました。
最近、こういった音楽系の作品が映画化されることが多いですが、その中でも本書はまた素晴らしい作品です。
人間の美しさ、醜さ、希望、絶望。
色々な感情が詰まっていて、展開も非常にドラマチックです。
受けた感動としては、原田マハさんの作品で受けた感動に似ている気がします。
また本書に登場する蒔野聡史と小峰洋子にはモデルがいて、事実通りに書くと、著者の平野さんも登場してしまうので設定も変わっています。
平野さんへのインタビューはこちら。
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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タイトルの意味
内容に入る前に、タイトルの意味について
『マチネ』とは『午前中』を意味するフランス語で、演劇・舞台用語としては『昼の講演』を意味します。
読む前では、マチネの終わりに何があるのか分からないと思うので、ぜひ本書を読んで確かめてください。
あらすじ
出会い
蒔野聡史はデビュー二十周年を迎えるクラシック・ギタリストで、その記念コンサートを大成功させます。
しかし、聡史本人はその不出来に不吉なものを感じていました。
その夜の打ち上げで、聡史は小峰洋子との運命的な出会いを果たします。
洋子は聡史よりも二歳年上の四十歳で、フランスのRFP通信の記者です。
美しく聡明で、しかも聡史の大好きな映画『幸福の硬貨』の監督であるイェルコ・ソリッチの娘でした。
聡史はすぐに洋子に惹かれますが、彼女には婚約者がいて、その夜は何事もなく終わります。
再会
あの夜の後、聡史は不調を感じながらも音楽活動を続け、洋子は取材のために治安が最悪の状態にあったイラクに滞在していました。
元々、洋子は聡史のファンで、イラク滞在中も彼の音楽に勇気づけられましたが、自分の聡史に抱く感情が一ファン以上のものであることに気が付きます。
それまでメールのやりとりをしていましたが、洋子が帰国後、二人は再会。
最初はぎこちないながらも再会を喜び、聡史は結婚をやめてほしいとお願いします。
洋子は婚約者であるリチャードとの子どもを妊娠しているかもしれないと、一旦答えを保留にしますが、すぐに生理がきます。
洋子は覚悟を決め、聡史を自宅に呼びますが、そこにはバグダッドで洋子のアシスタントをしていたジャリーラというイラク人の女性がいました。
保護
ジャリーラは身の危険を感じ、偽造パスポートを使用して亡命したところ、パリの空港で警察に連行されてしまいます。
その後、洋子が保護することになり、そこに聡史が訪れたのでした。
ジャリーラが寝ると、洋子は婚約を破棄したことを聡史に打ち明けます。
そして、二人は結ばれます。
といってもキス程度で、そこから先はジャリーラがいたこともあって進みませんでした。
罪
その後も二人は日本とパリで離れて暮らし、スカイプで連絡を取り合っていました。
しかし、順風満帆に事が進んでいたわけではありません。
聡史のマネージャー・三谷早苗は、聡史の不調の原因が洋子にあると考え、二人の関係を良く思っていませんでした。
そこには、早苗が聡史のことを好きだという感情も含まれています。
また洋子もリチャードとの婚約破棄がすんなりいかず、停滞していました。
洋子は戦争下にいたことでPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、聡史に打ち明けられずに一人で苦しんでいました。
そんな中、二人は休暇を合わせ、洋子の母親が住む長崎に挨拶に行く計画を立てます。
ところが、洋子が日本に到着する日、聡史の恩師である祖父江誠一が脳出血で病院に搬送され、聡史は慌てて病院に駆け付けます。
その時、タクシーに携帯を忘れてしまい、早苗がそれを取りに行きますが、ここで事態は急変します。
早苗は聡史の携帯をとると、聡史に成りすまして別れのメールを作成し、そしてそれを送ってしまいます。
その後、故意ではなく聡史の携帯を水没させて壊してしまいます。
聡史はそのことを知らず、早苗の携帯から洋子にメールを送りますが、事情を知らない洋子は勘違いし、一人で長崎に向かってしまいます。
そして誤解がとけないまま洋子はパリに帰国。
二週間後、洋子はリチャードとよりを戻し、結婚したのでした。
真相
あれから二年が経過。
聡史は審査員などとして活動していましたが、もう一年半もの間、ギターを弾いていませんでした。
祖父江の孫の手足口病が感染したこともありますが、一番大きいのは洋子がいなくなったことでした。
しかし、友人の武知からデュオでツアーをしようと誘われ、復活に向けて動き出します。
あの後、聡史は早苗と結婚し、早苗は自分の罪を告白しないまま、偽りの幸せを享受していました。
一方、洋子もはじめは聡史を思い出して辛くなることもありましたが、今は子どもも生まれ、幸せに暮らしていたはずでした。
しかし、リチャードが浮気を告白し、離婚を切り出します。
洋子もそれを受け入れ、子どもの親権は夫婦どちらにも与えられました。
離婚後、夏季休暇で長崎を訪れると、母親の後押しもあり、洋子は聡史のコンサートに足を運びます。
しかし、そこで会ったのは早苗でした。
早苗は聡史と結婚し、彼の子どもを妊娠していることを伝え、聡史に近づかないでほしいと洋子にお願いします。
そのやりとりで洋子は、二人の関係を裂いたあのメールが早苗の打ったものだと気が付きます。
しかし、今は自分や早苗よりもお腹にいる子どもの幸せを優先し、聡史に会わずに帰り、ホテルで一人泣くのでした。
告白
ツアー終了後、武知が事故で亡くなったと知らせが届きます。
しかし、聡史は自殺だと何となく感づいていました。
早苗は洋子と会って以来、妊娠中の不安定さに加えて自責の念に駆られ、不安を募らせていました。
そしてついに、洋子がPTSDで苦しんでいたこと、メールの真相を聡史に告白します。
聡史は最後まで隠し通してくれなかった早苗に怒りを覚え、しかし愛情も確かにありました。
結局、お腹の中の子どものことを考え、今の生活を続けます。
結末
二人の関係が動いたのは2011年、東日本大震災があった年でした。
聡史と早苗の子どもが生まれ、優希(ゆき)と名付けられます。
震災後、早苗は優希を連れて福岡の実家に帰省しますが、聡史は東京に残り、予定していたコンサートを中止しない決断を下します。
その決断には批判が殺到しましたが、擁護してくれた記事もあります。
聡史は、とあるブログを通じてその記事の存在を知りますが、そのブログの主が洋子だとは知りません。
そして、ニューヨークでのリサイタルが決まり、ニューヨークに住んでいた洋子は聡史のリサイタルを聴きに行きます。
聡史の奏でる音は以前とは違っていましたが、スランプを経て、彼が獲得した音楽は素晴らしく、聴衆はみな感動していました。
第一部が終わり、洋子は早苗の言葉を思い出し、聡史の邪魔をするべきではないと帰ることも考えました。
しかし、結局自分の席に戻り、第二部が始まります。
リサイタルはアンコールまで進み、聡史はこのリサイタルの後、セントラルパークの池のあたりでも散歩するとコメント。
それからこのマチネ(昼の講演)の最後に、特別な演奏をみなさんのためにするといいます。
聡史は英語でコメントとしていて、この時、洋子のことを見て微かに頷きます。
まるで、『for you』が『みなさんのために』ではなく、『あなたのために』と訂正するように。
そして、聡史が演奏したのはあの有名映画のテーマ曲『幸福の硬貨』で、洋子は涙を流します。
実は聡史は、第一部で洋子のことに気が付いていたのでした。
リサイタルが終了すると、聡史ははやる気持ちと不安を抱えながら池のあたりに向かいます。
そこには、洋子が待っていました。
洋子は今にも泣きそうでしたが、それでも微笑み、二人は一歩ずつその距離を縮めます。
二人が出会ったあの夜から五年半もの歳月が流れていました。
映画の感想
2019.11.3に映画を見てきました。
一番の感想として、原作を読んで受けた感動をそのまま、いやそれ以上に見事に再現された素晴らしい映画でした。
冒頭、福山さんと石田さんが出てきた時に老けたなーと失礼なことを思ってしまいました。
しかし、映画が進むにつれてこの二人以上に主役にふさわしい二人はいないと思うようになりました。
様々な人生を経て理想だけでは生きていけない大人で、けれど運命の出会いを果たして情熱的な一面を見せる。
本当に素敵でした。
それから映画を語る上で外せないのはギターです。
クラシックギターがあそこまで情熱的だとは知りませんでした。
演奏者によって、そしてその時の感情によって音色は全く違います。
特に映画の主題歌となっている『幸福の硬貨』は一度聴いたら耳から離れないメロディーで、家に帰ってすぐにダウンロードしてヘビロテしています。
次に批判の声も多い早苗について。
原作を読んでいても中盤まではかなりイライラしました。
でも彼女なりに聡史の幸せを願っていて、最後まで自分のことではなく彼のことを優先しました。
これもまた愛の形であり、聡史も洋子も彼女のことを許せた最後は、『未来が過去を変える』と何度も作中で繰り返されてきた言葉を証明したように思えました。
最後に結末の解釈を改めて。
聡史が『大切な友人』と口にしたように、二人はこれまでを踏まえた上でかけがえのない友人として過ごすのかもしれません。
また聡史が洋子に迫るかもしれないし、失うものがない洋子が離婚を迫る番かもしれません。
正直、僕はどれとも決めていません。
ただ一つだけ、二人が決めた答えがいずれ過去になった時、未来によって幸せな記憶として変えられることを祈っています。
月並みな言葉ですが、本当に素晴らしい映画でした。
おわりに
情景が目の前に広がるような小説は本当に久しぶりで、何度も涙がこみ上げてきました。
読了後、改めて冒頭の文章を読み、全てが事実でないにしろ、聡史と洋子のモデルになった人たちが実在するのだと思うと、人生は自分が思っているものよりもずっと素晴らしいのではないかと感じるようになりました。
決して楽しいことばかりではない。
むしろ、辛い時の方が長いかもしれない。
けれど、一瞬一瞬で得られる感動は言葉にできないほど素敵なもので、そのために今を生きているのかもしれません。
こんなに素晴らしい小説に出会えることはそうそうないので、ぜひ忙しない日々の中で読むのではなく、ゆっくりと心を落ち着け、噛み締めるように読んでみてください。
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