『化物園』あらすじとネタバレ感想!化物がひしめく世界を恒川光太郎が描く
「私は人ではありません。数百年を旅して回り、メンタマグルメに興じています」
公園の雑木林を狩り場に、人間のメダマを狙う《猫》。
かかわったものに呪いをかけ、どこまでも追いかける《蛇》。
甘言で家を乗っ取り、金だけさらっていく《狐》。古今東西、人間の陰に生き、喰らい、時に育てる化物たち。
その醜くて愛おしい姿を、とくと、ご覧あれ!醜悪、異様、狡猾、艶然――。
Amazon商品ページより
恒川光太郎が描く、身の毛もよだつ究極のホラー七篇!
タイトルと表紙の時点でそそられる本書。
七つの短編にはいずれも化物が登場し、人間の理解を超えた本性で恐怖をあおってきます。
ホラーを読むたびに人間が一番怖いと思いつつも、まともにならない化物もまた怖いのです。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
本をお得に読みたい人には『Kindle Unlimited』をオススメします。
小説のみならずビジネス書、マンガ、専門書など様々なジャンルの作品が500万冊以上読み放題。
新規加入なら30日間の無料体験ができるので、無料期間中に退会すればお金は一切かかりません。
なかなか手に取れない数千円、数万円するような本を読むのもアリ。
マンガであれば30日で数十冊読めてしまうので、シリーズものも無料で読破できます。
気になる人はぜひ30日間無料体験でお試しください。
あらすじ
猫どろぼう猫
上田羽矢子は気がつくと、雑木林の中に倒れていました。
両手と両足が結束バンドでくくられ、目の前には白い髭の老人がいます。
老人は『ケシヨウ』という化物を追っていて、ケシヨウが女性に化けているではと疑い、羽矢子を殴ってこうして拘束したのでした。
ここから状況説明がされてきますが、ここから人間ドミノのように悪夢が加速していきます。
窮鼠の旅
久間王司の父親は、遺書をのこして自殺します。
王司はプライドが高く、何かしたら理由をつけてあらゆることを避けてきて、四十二歳の現在まで一度も働いたことがありません。
残されたお金だけで今後生き続けられるはずもありませんが、王司は自殺した父を責め、自分はそれまでと同じように暮らします。
お金をけちって父親の遺体を放置しますが、やがて家の中から父親に似た声がするようになります。
十字路の蛇
私は七歳の時、田舎町に引っ越してきます。
住宅地の西側には十字路があり、そこにいつもギターを持った男性が座していました。
ストリートミュージシャンがいるような場所ではなく、歌っているわけでもありません。
様々な噂が飛び交い、誰も近づこうとしませんが、私はとある時に男性と話す機会を得てしまい、そこから男性に人生を侵食されていきます。
風のない夕暮れ、狐たちと
たえはお手伝いさん募集という求人を見て、応募します。
相手は上品な女性で、たえはすぐに気に入られて、採用されます。
これで暴力的な彼氏との生活から抜け出せる。
たえの仕事先は女性の住むお屋敷で、そこには女性の息子も住んでいました。
たえは女性の意図を汲んだ上でうまく立ち振る舞い、お給金以外にもお金をもらうことになりますが、そんな豊かな生活は長くは続きませんでした。
胡乱の山犬
私は幼い頃、小さな生き物をよく殺していました。
理由があるわけではなく、殺したくて殺したのでした。
そのことは村で問題になり、僧による強い叱責によってしばらくは抑えられていました。
しかし、それもずっと続いたわけではなく、私の中にある残虐性が再び外に漏れ出てしまいます。
日陰の鳥
リュクは港町にある、流木やゴミ、漂着物が小山を作っている場所の近くに住んでいました。
両親は物心ついた時からおらず、一緒に住んでいた老人もいつの間にかいなくなり、リュクは一人です。
リュクは町の人々の話す言葉がほとんど分からず、まともなコミュニケーションがとれません。
町にはダウォンと呼ばれる化物の話があり、リュクはそのダウォンと遭遇し、人生が大きく変わっていきます。
音楽の子供たち
私は乳母の銀穂と暮らしていました。
そこは妖精国だと思っていて、風媧という存在がいます。
風媧は宙に浮いていて、描写からも人間とは思えませんが、私は風媧を妖精国の女王様だと思っていました。
風媧は術理なるものの解き方を教えてくれて、私は不思議な力を身に着けていきます。
やがて同じような境遇の子どもが他にもいることが分かり、そこから彼らとの交流が始まります。
感想
化物も様々
化物というと、どうしても危なくて怖い存在と思い込みがちですが、本書では必ずもそうとは限りません。
確かに人智を超えた存在で、場合によっては人間に容赦なく危害を加えてきますが、必ずそうなるというわけではありません。
化物には化物なりの行動原理があり、利害が一致すれば意思の疎通だってできます。
この辺りの考え方は恒川さんの作品に共通しているもので、化物だから危険、と安易に結びつかない物語構成が良かったです。
それによりただ怖いだけでなく、時に哀愁漂う雰囲気もあり、胸が何度も切なくなりました。
このテイストは恒川さんでなければ得られないもので、相変わらずのリーダービリティの高さもあり、一冊をあっという間に読み終えてしまいました。
前半はホラー味が強いですが、後半は切ない系も多く、作品の中でもグラデーションがあるのも特徴です。
個人的なオススメ
どれも甲乙つけがたいですが、僕は『十字路の蛇』が一番好きです。
はじめは何が蛇なんだろうと思っていましたが、ギターの男性と結びついてくるところでまず怖いです。
私はどうなってしまうんだろうと思いながら読んでいると、そこには私の描かれていなかった秘密が隠されていて、これもまた面白かったです。
恒川作品は信頼できない語り手がわりと登場するので、この誤認はさらっと読んでいるとまず引っかかります。
おわりに
タイトル通りなんだけれども、単なるタイトル回収では終わらない。
このバランス感覚が素晴らしく、恒川さんの作品を久しぶりにリアルタイムで楽しめました。
本をお得に読みたい人には『Kindle Unlimited』をオススメします。
小説のみならずビジネス書、マンガ、専門書など様々なジャンルの作品が500万冊以上読み放題。
新規加入なら30日間の無料体験ができるので、無料期間中に退会すればお金は一切かかりません。
なかなか手に取れない数千円、数万円するような本を読むのもアリ。
マンガであれば30日で数十冊読めてしまうので、シリーズものも無料で読破できます。
気になる人はぜひ30日間無料体験でお試しください。
関連記事はこちら。

