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『長いお別れ』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

harutoautumn
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かつて中学の校長だった東昇平はある日、同窓会に辿り着けず、自宅に戻ってくる。認知症だと診断された彼は、迷い込んだ遊園地で出会った幼い姉妹の相手をしたり、入れ歯を次々と失くしたり。妻と3人の娘を予測不能なアクシデントに巻き込みながら、病気は少しずつ進行していく。あたたかくて切ない、家族の物語。中央公論文芸賞、日本医療小説大賞、W受賞作。

「BOOK」データベースより

蒼井優さん、竹内結子さん、松原智恵子さん、山崎努さんなどが出演する映画で話題になった本書。

作中ではかつては痴呆、今では認知症と呼ばれる病気にかかった父親を中心に、彼を見守る母親、三人の娘やその子供から見た父親が描かれています。

高齢化の一途を辿る日本において介護はもはや無視できる問題ではなく、両親が高齢である僕としてはとても辛いものでした。

しかし一方で、父親は忘れるだけでなく、しっかりと覚えていること、今感じることもあります。

何気ない会話にそれが現れ、とても救われるような気持になったのも確かで、このタイミングで読めて本当に良かったです。

以下は評論家の方による書評なので、合わせてお楽しみください。

帰ってゆく父 『長いお別れ』(中島京子 著) | 書評 – 本の話

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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映画のキャスト

内容に入る前に、映画についてご紹介します。

キャストは以下の通り。ちなみに一部名前の読み、漢字が原作とは異なり、登場人物も減っています。

東芙美(ひがしふみ、次女):蒼井優

今村麻里:竹内結子

東曜子(ようこ):松原智恵子

東昇平:山崎努

今村新:北村有起哉

磐田道彦:中村倫也

今村崇:杉田雷鱗

今村崇:蒲田優惟人

崇のキャストが二人いるので、おそらく幼少期、青年期などで分かれているのだと思います。

あらすじ

全地球測位システム(GPS)

ここからは内容について。

本書の中心となるのは、東昇平。

彼は長い間、中学校の教師を務め、校長も務めあげましたが、ある時に認知症と診断され、作中冒頭では診断されてから七年が経過していました。

はじめの五年は進行が遅かったのですが、ここ二年で症状が悪化し、徘徊が始まるようになりました。

妻の曜子(しょうこ)が昇平の世話を一手に引き受けていましたが、このタイミングで三人の娘を家に呼ぶことにします。

長女の茉莉(まり)はサンフランシスコに住み、次女の菜奈は子育てに追われ、三女の芙美も仕事で忙しいことを理由に家になかなか帰って来ませんが、曜子は意地になって三人を呼びます。

娘たちはしばらく見ない間に昇平の症状が悪化した様子に唖然とします。

このままでは取り返しのつかないことになると感じ、GPS付きの携帯電話を両親にプレゼントし、対策をとります。

その後、昇平は本当に帰ってこなくなり、妻や娘たちはGPSで彼の行方を追いますが、電車で移動したり地下に入ってGPSが途絶えたりして、気が気じゃありません。

ようやく移動しなくなったかと思うと、昇平は後楽園遊園地にいました。

そこには保護者同伴でないためにメリーゴーランドに乗れない幼い姉妹がいて、昇平は姉から一緒に乗ってほしいと頼まれます。

昇平は妹を足の間に座らせ、三人でメリーゴーランドを楽しみます。

よく分かりませんが、昇平にはこの温もりがとても大事に感じられ、ポケットで振動する携帯のことなど気が付きもしないのでした。

私の心はサンフランシスコに

今後海外旅行が難しくなるかもしれないという茉莉の配慮によって、彼女のいるカルフォルニアに旅行することになった昇平と曜子。

昇平はそんな計画があったことも忘れ、当日になってどこに行くんだと大騒ぎ。

現地に着けば、家に帰るを繰り返し、落ち着いた旅行というわけにはいきません。

茉莉の次男・崇はちゃっかり昇平からお小遣いをもらっていて、羨ましい長男の潤は自分もゲットしようとあの手この手で昇平のご機嫌とりをします。

またひょんなことから自宅で開くパーティーに茉莉の夫・新(しん)とかつて関係を持ったことのある熊谷ミチコが紛れ込んでしまい、夫婦の火種となる話題を投下されそうになりますが、奇跡的に昇平とミチコの会話がマッチし、ことなきを得ます。

帰国の際、昇平は自分がカルフォルニアに来ていることを忘れ、どこに行くんだと曜子に聞くのでした。

おうちへ帰ろう

十七歳になる潤は、ベスという上級生相手に童貞を喪失。

この夏は何としてでもカルフォルニアに残りたかったのですが、夏は年中行事として日本に帰らなければならないこと、そしてベスの予定が合わないこともあり、仕方なく一家で日本に行きます。

一方、昇平はデイサービスに通うようになっていました。

最初は拒んでいましたが、そこで行われる脳トレが彼の心を射止めたこと、そして『通う』という行為が学校に似ていたため、受け入れるようになります。

それでも不意に帰りたいとこぼすことがよくあり、昇平自身、分からなくとも漠然とした不安や寂しさを覚えていたのかもしれません。

昇平は認知症になっても漢字の読みや書き方など忘れておらず、その知識を披露すると、潤は尊敬の眼差しで彼を見ます。

その後、みんなで昇平の生まれた家に遊びに行くのですが、そこでの昇平の言葉がとても印象的でした。

昇平は崇に対して、最近は色んなことが遠いと話します。

記憶が少しずつ失われ、家族や親戚でさえも遠い存在になっていることを昇平が理解していることが、なんともいえず切ないです。

そんな時、潤も帰りたいと繰り返します。

最近、ベスとうまくいっておらず、ネットサーフィンをしていたところ、彼女のブログを発見。

そこにはケンという男の子が何度も登場し、不安になっていました。

それでも出先での関係のため、ベスがカルフォルニアに戻ってくればその関係は解消されると思っていました。

ところが、ケンはベスについてカルフォルニアに来てしまったことが判明。

作中では明記こそされていませんが、潤が失恋を味わったことは明白でした。

フレンズ

昇平の大親友だった中村先生が亡くなり、お通夜に昇平と菜奈が参加します。

昇平の旧友たちは昇平との再会を喜び、友人代表の弔辞を昇平に任せようとします。

ところが、昇平は繰り返し誰か死んだのかと話し、旧友たちはその度にまさかという気持ちで誤魔化します。

しかし、何度か繰り返すうちに事の重大さに気が付き、弔辞は無理だと諦めるのでした。

一方、芙美のもとに曜子から電話があり、昇平の友人たちから芙美にお見合いのアドバイスをしたいという話を持ちかけられます。

普段であれば断っているところですが、最近になって彼氏と別れたことが影響してか、芙美は気が付くと了承していました。

そして、迎えた会食の日。

昇平の友人二人は芙美に対して、結婚や仕事に関して古い価値観を押し付けます。

気が付くと、芙美は持っていたお猪口を相手の額に向かって投げつけていました。

後にこの話は武勇伝となり、彼らからお見合いの世話をされることもなくなりました。

その後、芙美は中学の同級生だった磐田と再会。

彼は昨年離婚していて、二人は連絡先を交換します。

つながらないものたち

渡米生活が六年目に突入した茉莉は、子どもことや認知症となった昇平、その介護をする曜子のことを考え、帰国するべきでは、でもどう夫に伝えようと一人悩んでいました。

そんな時、東日本大震災が起こります。

故郷を思い居ても立っても居られない茉莉ですが、菜奈からの電話で国際電話であれば、比較的この状況でも電話が繋がることが判明。

曜子に電話をすると、彼女は大きく揺れた程度の認識で、それよりも大学病院での昇平の半年ぶりの検診のことで頭がいっぱいでした。

翌日、外出を控えてほしいという茉莉が折れ、昇平と曜子は病院を受診、アリセプトに代わるアルツハイマー病の新薬・メマリーを処方してもらうことができました。

ところが、メマリーを販売する製薬メーカーの工場が今回の地震で被災し、供給の目処が立たずにいました。

万事休すかと思われましたが、その後の茉莉のリサーチにより、メマリーがアメリカではアドメンタという名前で販売されていることが判明。

茉莉はそれを購入すると東京に送り、無事昇平は新薬を飲むことができたのでした。

一方、芙美と磐田はあの再会以降、交際することになり、同棲までする予定でした。

ところが、今回の地震をきっかけに、磐田の元妻から、子どものことを考えてよりを戻さないかと話を持ちかけられ、磐田は元妻と子どもをとります。

磐田からの連絡が素っ気なくなったことで芙美は事情を察します。

そんな中、曜子から電話があり、昇平と話してほしいといわれます。

昇平はアドメンタの効果からか、意味をなさない言葉が多いものの話す意欲をいくらか取り戻していました。

芙美は会話になることは期待せず、思っていることを昇平に愚痴ります。

すると、昇平は意味が分からないものの、芙美を優しく包むような言葉をいい、彼女の傷を少しだけ癒してくれるのでした。

また今回の一件で、茉莉は両親の世話を自分がしなければとより一層強く思うのでした。

入れ歯をめぐる冒険

昇平は事あるごとに入れ歯を壊し、曜子には黙っていることがありました。

今回も作って間もない入れ歯がなくなっていることに気が付き、曜子は大慌て。

そこに菜奈の息子・将太が現れ、一緒に入れ歯を探すことに。

将太は将来の夢として『探偵』を掲げていて、これまでの昇平の行動から、入れ歯がベッドのマットレスの下に隠されているのを見つけます。

しかも二つあり、それは以前見つけられず行方不明となっていた入れ歯も含まれていました。

またこの章では、認知症の進んだ昇平の介護がいかに過酷なものなのかが描かれています。

服薬、入浴、排泄、どれ一つをとってもすんなりできた試しがなく、ヘルパーなど複数の人間の協力があってはじめて生活が成り立つことを意識させられます。

その後、昇平は新しい入れ歯を作ってもらいますが、すぐにそれも紛失。

曜子は真っ先に将太を頼って電話します。

将太はこれまでの昇平の行動から、デイサービスで誰かにあげてしまったのではと推理。

そして、それは当たっていました。

昇平と同じデイサービスに通う同じく認知症の女性が、あなたにあげるといって息子にあるものを差し出し、息子はそれを見て驚きます。

明確な描写はありません、がこれこそが昇平のあげた入れ歯だと思われます。

うつぶせ

曜子が網膜剝離で緊急入院、手術することになり、東家にピンチが訪れます。

前から症状は出ていましたが、曜子は忙しさのあまり、それを無視し、症状を悪化させてしまうのでした。

それでも曜子は手術を終えたらすぐにでも昇平の介護に戻る気満々で、慌てて菜奈と芙美が対応します。

しかし、慣れない介護にすぐ疲れ、しかも菜奈は五十歳近くで妊娠し、余裕があるとはいえません。

そこで曜子はケアマネージャーに相談し、昇平のショートステイ先を探してもらいます。

当面の問題はこれでクリアできますが、今後同じようなことがあると思うと、両親だけで住まわせることが不安になり、菜奈と芙美は昇平の入れる介護施設を探すことにします。

しかし、これには曜子が不快感を示します。

これまで昇平のことを誰よりも先に考えてきたのに、先を越されて複雑な心境でした。

本当であれば睨みつけたいところですが、今は術後の回復を早めるためにうつぶせをやめるわけにはいかず、この鬱憤を晴らすこともできません。

さらに菜奈は言いそびれていた妊娠のことをようやく話し、曜子は複雑な心境でそれを祝うのでした。

昇平はショートステイ先で過ごすことになりますが、突然発熱し、救急車で病院に搬送されます。

その病院とは、曜子の入院する病院で、部屋も彼女いる部屋の下でした。

最も疑われた肺炎ではありませんでしたが、大腿骨にヒビが入っていました。

状態が落ち着き、曜子が病室に行くと、昇平は嬉しそうに笑い、安心するのでした。

QOL(クオリティ・オブ・ライフ)

菜奈は帰国する予定でしたが、崇が不登校になってしまい延期になります。

一方、昇平の状態はあまりよくありませんでした。

大腿骨のケガの影響で動きはさらに制限され、病院ではもうできることはあまり残されていませんでした。

退院も一週間後に決まり、どうするかで家族は話し合いになります。

曜子は家に帰ったらすぐに介護に戻るといいますが、今後も同じことがあると思うと娘たちは心配です。

菜奈と芙美は候補となる介護施設をいくつか周り、どこがいいかを検討します。

そこで考えるべきことは、QOL(クオリティ・オブ・ライフ、生活の質)でした。

何をもって豊かな生活だと感じるのかは千差万別で、何よりも昇平の希望を優先しないといけません。

昇平は意思表示がほとんどできないため、彼に代わって家族がそれを本人の気持ちになって考えないといけません。

昇平と曜子は一緒に退院。

昇平が認知症と診断されてから十年が経過していました。

病気が進行したことで昇平は曜子のことすら認識していませんが、それでも家族の絆がなくなったわけではなく、曜子は献身的に介護を続けます。

しかし、昇平はまたしても発熱し、肺気腫が相当進んでいることが分かりました。

曜子と娘たちは、昇平に人工呼吸器などを取り付けるかどうかの選択を求められます。

取り付ければ生き続けることはできますが、それは呼吸をしているだけで、何かをできるわけではありません。

家族は一緒に考え、昇平はそんなことは望まないと、人工呼吸器を断るのでした。

そして、いよいよ最後の日が近づいてきたところで、場面はアメリカに切り替わります。

年が明け、崇は通う中学の校長に呼び出されます。

校長は何でもいいから話してくれないかというと、崇は昇平が亡くなったことを話します。一昨日の朝のことでした。

アメリカでは認知症のことを『長いお別れ(ロンググッドバイ)』と呼ぶのだと教えてくれます。

それは少しずつ記憶を失い、ゆっくり遠ざかっていくことから由来していて、昇平が『遠くに感じる』という言葉と重なります。

崇の不登校の昇平の死は無関係ですが、読者は彼の言葉を通じて昇平の死を知ることとなります。

話が終わると、校長は今後、クラスに行くのが嫌になったら友達の家ではなくここに寄ってもいいと崇に握手し、崇は肩をすくめて校長室を後にするのでした。

おわりに

認知症という介助者が必要不可欠な病気、そしてそれぞれの家庭を持っていることで自由に動くことのできない娘たちのもどかしさが、何ともやるせない気持ちにさせられました。

しかし、決して彼女たちが冷たいからではなく、その証拠に出来る限りのことをして両親をサポートし、誰よりも曜子は愛を持って昇平の介護をしていました。

もちろんフィクションなので、このまま現実でも家族って素晴らしい、などと単純に思えるわけがないと分かっています。

分かっているのですが、本書に登場する家族は何よりも尊く、僕もあるかもしれない未来に向けて、ほんの少しだけ覚悟ができた気がします。

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