『この恋が叶ったら、きっと死んでしまう』あらすじとネタバレ感想!ホラーと恋愛が絡み合うアンソロジー
最恐作家5人による、全編書き下ろしのホラー×恋愛アンソロジー! 恋人を亡くした遊は偶然出会った女性に惹かれるが……(「愛情のかたち」神永学) 世界中で勃発したゾンビパニック、その原因は“恋愛感情”!?(「アモル・ヘレオス」黒史郎) 不倫相手の家で逢瀬を重ねる真奈美。その家はどこか奇妙で……(「産声」阿泉来堂) 父が遺した言葉から、ある記憶に結び付く(「花明かり」背筋) 同僚である広本は「幽霊に恋をした」らしく……(「亜沙美の幽霊」澤村伊智)。
Amazon内容紹介より
人間の感情の中でも、特に強烈な恋をホラーと絡めているので、面白くないはずがありません。
しかもホラーに絡む場合は、大抵恋が負の方向に向いているため、歪で見たこともない形に変貌しているのも興味深いです。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想などを書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
愛情のかたち【神永学】
遊は高校時代に付き合っていた美希を自殺で失い、それ以来、恋から遠ざかってきました。
そんなある日、美希とよく来た公園である女性と出会い、一目で恋に落ちます。
後に女性は玲香と名乗り、これまでの恋人を全員失っており、自分に関わらないよう忠告します。
しかし遊の恋心は収まらず、その事実を承知の上で交際をスタートします。
遊の気持ちは一気に上向きに上がりますが、異変はすぐに起きました。
アモル・ヘレオス【黒史郎】
莉音は五歳上の従兄弟に恋していましたが、彼が結婚したことでその気持が打ち砕かれ、恋ができなくなってしまいます。
そんな中、全国各地で無差別襲撃事件が起こり、やがて外出すら政府から禁じられるほどの状況に発展します。
内閣総理大臣は全国民に対して状況を説明します。
世界中でゾンビが発生し、人々を襲っているのだと。
原因は恋愛感情で、その感情を持っている人間がゾンビに変異し、その感情を向けている相手を襲っているのでした。
産声【阿泉来堂】
真奈美は仕事で久志と知り合い、恋愛関係を持つようになります。
久志には妻と子どもがいて、つまり不倫でした。
彼の家で行為に及ぶことに罪悪感がある一方で、彼には抗いがたいほどの魅力がありました。
しかし真奈美にはある疑念があり、それは本当に久志が妻や子どもに一緒に暮らしているのかということでした。
家に家族が一緒に暮らしている痕跡はなく、疑念が日に日に膨らんでいきます。
花あかり【背筋】
奏多の幼い頃に両親は離婚しており、父親とは上手くいかず、大学進学を機に家を出て、ずっと会わずにきました。
社会人になって奏多は景子と出会い、彼女と結婚することを決意。
景子は結婚するにあたり父親と会いたいと主張し、久しぶりに連絡をとりますが、そこで父親ががんに侵されていることを知ります。
久しぶりに会った父親は死の間際にいて、そこで奏多に宛てた手紙が自宅にあるから読むようにと伝えます。
奏多は指示に従って手紙を読みますが、そこには父親がずっと隠してきた秘密が書かれていました。
亜沙美の幽霊【澤村伊智】
吾川は怪談が好きで、ある日、同僚の広本から幽霊を見ることを告げられます。
相手はすでに亡くなっていて、ここ一年ほど見るのだといいます。
思わぬ方向に話が進みますが、広本はいたって真剣で、吾川も無下にはできません。
そこで吾川は親身になって話を聞き、それを怪談として記すことにします。
それが『亜沙美の幽霊』でした。
感想
恋愛感情の怖さ
恋愛小説といえば大衆的にも人気のジャンルで、誇張していえば誰もが覚えがある感情ではないでしょうか。
大小あれど経験して、傷つきながらも成就させる人もいれば、打ち砕かれそのままの人もいます。
恋愛小説ではそこにフォーカスを当てて、不安定で強大な恋愛をベースに話を展開させます。
本書もその点では共通していますが、違うのはホラーが組み合わさることで、まず負の方向に傾くことです。
恋愛感情が満たされない、思い通りにならないとなった時、その感情が大きければ大きいほど人間は無理にでも叶えようとします。
その結果、感情は大きく歪み、本来の恋愛感情とは全くの別物に変貌します。
当人からすれば同じ感情のつもりでしょうが、はたから見れば言動、態度、目つきなど全てが異様です。
この当人と周囲のギャップが強烈で、本書でもそれが様々な角度から描かれています。
捻りがほしい
本書に集った作家はいずれもミステリ・ホラー界隈で実力が保証されている人ばかりで、期待値はかなり高めでした。
しかし、結果として肩すかしを食らいました。
面白くないのではなく、何も残らずに読了してしまったのです。
理由はいくつかありますが、大きな理由は設定がシンプルで、結末がほとんど読めてしまうことでしょうか。
一作品につき五〇ページもないので、文字数の制限は間違いなくあります。
それでもどこかで見たような設定で、その設定であればこのオチしかない、という所に毎度着地してしまうので、肩すかし感は正直否めなかったです。
唯一、澤村さんの作品はそうきたか、と多少の驚きもありましたが、それでも彼の作品の中でいうとオススメ度は下がります。
ジャンルを絞るほど自由度が下がるので、作家の持ち味が活かしきれなかったのかなと推測しています。
面白いけれど、残るものがない。
そんな感覚です。
おわりに
期待値が大きいがゆえにもう一つでしたが、恋愛、ホラーいずれも好きな人であれば読んで損ということはありません。
好きな作家さんがいるのであれば、読むのも一つの手です。
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