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『恋する寄生虫』あらすじとネタバレ感想!誰が何と言っても恋の物語

失業中の青年・高坂賢吾と不登校の少女・佐薙ひじり。二人は、社会復帰に向けてリハビリを共に行う中で惹かれ合い、やがて恋に落ちる。しかし、幸福な日々はそう長くは続かなかった。彼らは知らずにいた。二人の恋が、“虫”によってもたらされた「操り人形の恋」に過ぎないことを―。

「BOOK」データベースより

本書は林遣都さん、小松菜奈さん主演で映画化されることが決まっていて、2021年11月12日に公開予定です。

映画の公式サイトはこちら

林遣都×小松菜奈W主演映画『恋する寄生虫』ティザー・ヴィジュアル&特報映像公開

三秋さんの作品は『三日間の幸福』に続いて二作目ですが、読者をその世界に没頭させる力を本書は持っています。

悲しみや寂しさ、喜ぶなど作中の感情はどれも本物で、心を揺すぶられること間違いなしです。

また人間の恋とはかけ離れた寄生虫を物語の中心に置いているところも面白くて、それらを読者が納得できる形で繋げているところもさすがでした。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

タイトルの意味

本書の内容に入る前に、タイトルの意味について。

あとがきにも書かれていますが、藤田紘一郎さんの『恋する寄生虫―ヒトの怠けた性、ムシたちの可愛い性』からきています。

藤田さんは医師として伝染病などの研究をされていて、難しい話かと思いきやユーモアたっぷりに書かれているので、興味のある人はぜひ読んでみてください。

またタイトルとは関係ありませんが、著者の三秋さんは本書で寄生虫に興味を持ったら、モイセズ・ベラスケス=マノフの『寄生虫なき病』という作品も読んでみると良いとオススメしているので、気になった人は手に取ってみてください。

本書で描かれる病と寄生虫の関係について、知識が深まると思います。

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あらすじ

社会不適合者

高坂賢吾は極度の潔癖症で、他人との交流が苦痛で仕方ありませんでした。

そのせいで職場を転々とすることになり、今では無職で部屋に閉じこもり、誰とも会わずにひっそりと暮らしていました。

そんな彼にとって唯一の楽しみがマルウェアの製作でした。

日常に小さな綻びが生まれる感覚に魅了され、自分でマルウェアを作成。

高坂はそれを『SilentNight』と名付け、ネットワーク中にばらまきます。

うまくいけば十二月二十四日の十七時に作動し、二日間にわたって感染端末の通信機能をオフにします。

クリスマスの夜に、友人や恋人と連絡がとれず、一人で過ごす羽目になったら面白い。

そんな些細な思いつきでしたが、これが物語の発端になります。

友だち

ある日、高坂の家に来訪者が現れます。

相手は高坂のばらまいたマルウェアのことを知っていて、追い返せば警察に通報されて逮捕される危険性があります。

高坂が警戒しながらドアを開けると、相手の男は和泉と名乗り、通報しない代わりに子どもの面倒を見てほしいと依頼します。

子どもの名前は佐薙ひじりといい、高坂は名前から男の子を連想していました。

ところが、和泉に指定された場所に向かうと、そこにいたのは白金に染められた髪、がっしりしたヘッドホンをした女子高生でした。

和泉に依頼されてひじりと接触をはかる人間は高坂で七人目で、ひじりは高坂と親しくするつもりはありませんでした。

高坂は早々に諦めようとしますが、報酬の話を出すとひじりの態度が一転。

和泉からもらう報酬を半分もらうことで高坂と仲良しのふりをして、自宅を借りると一方的に言い出します。

言葉通り、ひじりはいつもふらりと高坂の自宅に現れ、会話をするでもなくお互いの時間を過ごす。

潔癖症の高坂にとって他人が部屋にいるのは苦痛でしかありませんでした。

初恋

そんな日々を送る中で、高坂はさじりが視線恐怖症で他人と交流を持つことが難しいこと、高坂とであればそれが和らぐことを本人から教えてもらいます。

それは高坂も同様で、さじりだけは一緒にいても潔癖症に苦しまずに済むことを打ち明けます。

孤独の中でお互いに心を許せる相手を見つけたことで、二人は少しずつ会話をして、お互いを知っていきます。

さじりは女子高生らしい見た目に反して寄生虫に詳しく、そんな彼女に高坂は惹かれていきます。

高坂にとって、それは初恋でした。

年齢差など関係なく惹かれ合う二人ですが、そんな日々に唐突に終わりが告げられます。

二人のこの関係には、驚くべきからくりがありました。

感想

この気持ちは恋である

本書では冒頭、高坂とひじりの間に芽生えた感情が恋だと断言しています。

途中まではその言葉通りの展開ですが、とある事実が明かされると、状況は一変します。

この感情は恋なのだろうか。

誰かにそう仕向けられただけの偽物ではないのか。

高坂とひじりは自分の抱く気持ちに疑問を抱き、苦しみ、僕も読んでいて二人の気持ちはなんと呼べばいいのだろうと揺らぎました。

でも、冒頭の言葉があったからこそ、二人の恋だと信じることができたし、そのおかげで素晴らしい読了感を味わうことができました。

不器用で臆病なのに、大事なことはしっかりと言い切る物語。

このメリハリが非常に心地よかったです。

物語を構成するモチーフが良い

本書が読者を夢中にする要因として、寄生虫というモチーフがあると思います。

名前だけ聞くと公園などにいる一般的な虫を想像してしまいますが、さじりの話を聞くと、高坂共々認識が変わると思います。

地球上の生き物とは思えない姿形、理解できないように思えて実は意味のある習性。

話を聞けば聞くほど寄生虫に魅力に気が付き、本書に登場する『目黒寄生虫館』についてもばっちり調べました。

調べることでそれ単体でも面白いし、物語がより膨らんでいくので、興味を持った人はぜひあわせて見てみてください。

結末は幸か不幸か

物語の結末について、幸と捉えるかそれとも不幸と捉えるか、人によって意見が分かれると思います。

僕も色々と思うところはありますが、最終的に一番は作中の人物たちの気持ちではという結論に至りました。

第三者からそうは見えなくても、当事者たちがそう思えばそれはまぎれもない事実で、それについてとやかく言う必要はありません。

寄生虫というモチーフを最後まで活かしきった素晴らしい結末で、高坂とひじりの最後の姿が鮮明に頭の中で浮かび、至福の読書時間となりました。

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おわりに

三秋さんの描く登場人物はどれもリアルな感情を持っていて、本書も読んでいて何度心を動かされたか分かりません。

映画化も楽しみですが、動きが少ないだけにどう映像化するのか、寄生虫はどこまで登場させるのかなど不安な点もあります。

このドキドキも楽しみと思って、じっくり待ちたいと思います。

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