『ほしのこえ』小説の徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
中学生のノボルとミカコは仲の良いクラスメイトだったが、3年生の夏、ミカコが国連宇宙軍選抜メンバーに抜擢された。宇宙と地球に離ればなれになった2人をつなぐのは、携帯電話のメールのみ。だがミカコの乗る宇宙船が地球を離れるにつれ、メールが届くのにかかる時間も長くなっていく。時間と距離に隔てられた、2人の互いを思う気持ちはやがて…。『君の名は。』の新海誠の商業デビュー作『ほしのこえ』を小説化。
「BOOK」データベースより
新海誠さん初の劇場公開作品で、監督・脚本・演出・作画・美術・編集のほとんどを新海さんが一人で行ったことで話題になりました。
物語の舞台は今よりも未来の話で、地球に残った少年と宇宙に旅立った少女の距離、心情が描かれています。
SFとしての面白さをもちろんですが、やはり物語の核は少年と少女で、今の新海さんの作品にも通じる部分があります。
小説、映画共に短めなので、気軽に読むことができます。
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
なお、『時間の遅れ』については詳細を解説していません。
気になるという方はこちらを読んだ上で記事にお進みください。
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あらすじ
物語の背景
2039年、第一次火星文明調査隊は火星で異星文明の遺跡を発見し、突如現れた地球外知的生命体・タルシアンに全滅させられてしまいます。
それに対して人類は、遺跡から回収したタルシアンのテクノロジーを利用してタルシアンに対抗しようと考え付きます。
そのせいで国家予算の多くがタルシアン関係に充てられていました。
そのせいで公共施設などに投資するだけのお金はなく、未来とは思えない昭和、平成な街並みとなっています。
そんな中、タルシアン・プロジェクトが発動します。
国連宇宙軍の新鋭艦、コスモナート・リテシア号を中心とした艦隊はタルシアン調査隊として宇宙に旅立つ予定で、乗組員の一部は一般人から募集することになっています。
抜擢
寺尾昇と長峰美加子は中学の同じ剣道部に所属し、中学卒業後も当たり前のように同じ学校に通うものだと思っていました。
世間ではタルシアン・プロジェクトのことが話題となり、特に昇たち男子からしたら宇宙乗りは憧れの的でした。
もちろん昇は自分が選ばれるなどとは考えていません。
ましやて美加子は興味なんてないだろうと考えていました。
ところがある日、美加子が告げられます。
彼女が、リテシア号に乗ることを。
別れ
美加子は志願したわけではなく、防衛省の依頼で選考を受け、乗組員に抜擢されました。
お別れはまだ先だと言われますが、地球に残る昇の方が動揺してしまいます。
期間が決まっているとはいえ、長い別れになります。
いつのことだろうか。
残された時間で、美加子とどんな風に過ごしたらいいのだろう。
昇は考えますが、別れは突然やって来ました。
美加子は一学期終了の直前になって学校を休み、美加子からの久しぶりのメールは月軌道上のリテシア号艦内から送られてくるのでした。
訓練
昇に別れを告げる間もなく、美加子はリテシア号に乗り込み、宇宙空間でトレーサーという人型起動機動兵器の操縦訓練を行います。
美加子はオペレーター(トレーサーに乗る人のこと)の中で最年少で、北條里美と知り合って仲良くなります。
美加子はオペレーターの中でも優秀な成績を収め、一見、平気そうに見えました。
しかし、彼女は服装が自由であるにも関わらず中学のジャージを着ていて、中学生の自分のままでいたいのではと里美に指摘されます。
そして、それは当たっていました。
美加子は地球に残った昇のことを思い、近況報告のメールを何度も送るのでした。
しかし、美加子が地球から離れるにつれてメールが届くまでの時間は数日、数週間とズレ、高校生になった昇は少しずつ苛立ちを覚えます。
離れる距離
美加子たちは火星基地に移動し、次は木星のエウロパに移動。
そして、ついには太陽系最果ての地、冥王星まで行ってしまいます。
ここまでの半年でタルシアンは見つからず、美加子は見つけられないまま一日でも早く地球に帰れることを願っていました。
しかし、ついにタルシアンの襲撃にあいます。
一部を撃退しますが、さらに多くのタルシアンが現れ、上層部は回避を選択。
艦隊はハイパードライブに入り、一・一光年先まで飛びます。
こうして美加子の心の準備を待つ間もなく、昇と美加子の間に一年のズレが生じるのでした。
そして、昇のもとに届いていたメールは途切れ、嫌な予感が走ります。
ニュースで艦隊がタルシアンと接触したこと、ハイパードライブを敢行したことが報道されますが、美加子が死んだという知らせはありませんでした。
生きているにしろ、美加子からメールが届くのはずっと先のことです。
昇は美加子の生存を信じますが、そんな中、タルシアン調査隊の詳細が明らかになります。
日本から選抜されたクルーは未成年者の女性たちで占められ、理由として居住性やストレス耐性において男性よりも優位であることが挙げられましたが、怪しいことこの上ない説明でした。
無事
昇は高校二年の時、一個下の高鳥瑤子に告白され、交際を始めます。
瑤子は美人で不満なんてないはずなのに、心のどこかで美加子と比較し、好きなのかどうか分からずにいました。
昇は考えた末、美加子の安否を確認してから瑤子を受け入れるかどうか決めることをよしとせず、瑤子との関係に終止符を打ちます。
その後、一年ぶりに美加子からメールが届きます。
生きていてくれたことを、昇は喜ぶのでした。
決意
リシテア艦隊がワープアウトしたのは『シリウスラインβ』でした。
タルシアンと交戦して初めて、美加子は部活なんかと訳が違うことを理解します。
美加子はすぐに昇にメールを送りますが、届いたのは一年後、昇が高校二年になった時でした。
安心したのも束の間、リテシア艦隊はショートカット・アンカーを利用して地球から八・六光年離れたシリウス星系にワープすることを決めます。
ショートカット・アンカーとは宇宙空間の二地点を結ぶワープゲートのことです。
こうして昇と美加子の距離はさらに離れ、次にメールが届く時、昇は二十四歳になっていることになります。
そのことを知った昇は、その気の遠くなるような時間を使って、待つ以外に自分にできることに費やすことを決意するのでした。
接触
ワープアウト後、リテシア艦隊はアガルタという星の調査を始めます。
美加子は昇に会いたいという気持ちを募らせ泣きますが、ふと誰かの気配を感じて目を開けます。
すると心の中にしまっていた思い出が目の前に広がり、少し幼い美加子が目の前にいました。
彼女は大人になるために痛みが必要であること、もっと遠い銀河まで行けること、託したいものがあるからついてきてほしいことを美加子に伝えます。
それは夢のようで、でもとてもリアルな映像でした。
その時、美加子はタルシス遺跡に似た居住跡を見つけ、興奮します。
しかし、同時にタルシアンの大群が現れ、リテシア艦隊は大規模な戦いを繰り広げます。
八年間
昇は待っていた八年間を利用して、この春から通信技師として艦隊勤務になることを決めていました。
好きとか嫌いとかは関係なく、美加子のメールをただ待っていただけではない、そのことを伝えたい一心でした。
しかし噂では、艦隊には冷凍精子や受精卵が積んであって、地球に帰還せずにそのまま探査の旅を続ける可能性もあります。
美加子が母親になっているかもしれません。
それも含めて、昇は事実を受け止める覚悟を決めていました。
勝利
美加子はタルシアン相手にエース級の働きをしますが、人類が劣勢であることは明らかでした。
艦隊も次々に撃破され、残ったのはリテシアだけ。
絶体絶命に窮地に立たされます。
しかし、美加子は決死の覚悟で大タルシアンに攻撃を仕掛け、これを撃破。
トレーサーは機能を停止し、美加子も気絶するのでした。
一方、タルシアンとの交戦のニュースは昇にも入りますが、リテシアはすでに帰還に向けて動き出していました。
多大な犠牲が出たため、これ以上の継続は難しいと判断されたのです。
しかし、そこまでショートカット・アンカーなしで自力で戻らなければならず、アンカー・ポイントのあるシリウスラインαまで移動するのに艦内では四年の歳月が流れます。
まだ先は長いけれど、二人の再会はもう近くまできていました。
再会
昇は新型コスモナートに乗船し、リテシア救出に向けて出発します。
リテシアが計画通りに帰路を辿っているかどうかが問題でしたが、スケジュールとほぼズレなく進行し、美加子にメールを送ります。
すると返信があり、美加子は十九歳になっていました。
二人はお互いの姿を想像しながらその日を迎えます。
合流当日、リテシアからの収容人数は多く、昇は美加子を見つけられません。
すると、メールが届き、わたしはここにいるよ、と書かれていました。
声がする方を向くと、そこには少し背の伸びた美加子が立っていました。
結末
美加子は除隊となり、これからの進路についてのんびり考えることにしました。
第二次タルシアン探査隊のメンバー募集は始まらず、計画の見直しがされたことが分かります。
美加子がアガルタで見た幻影は他のオペレーターも体験していて、『託したい』というメッセージの意味を考える必要がありました。
タルシアンは本気で人類と闘おうとしていたのかは分かりません。
もっと別の目的で人類に接触してきた可能性もあります。
一部報道では、タルシス遺跡の爆発は不慮の事故で、タルシアン襲撃の発表はこの事故を利用した事実の捏造、あるいは歪曲だったとされています。
美加子の受け取ったメッセージからすると、タルシアンとの接触そのものが人類が大人になるために必要な試練だったのかもしれません。
真実は分かりませんが、依然としてタルシアンが人類の脅威であることには変わりないのでした。
そして、昇は思います。
違った環境で違った試練を乗り越え、昇は九歳、美加子は四歳だけ大人になりました。
彼らはそれまでの空白を埋めるように語り合い、昔の関係を取り戻しました。
月面基地で一旦別れ、二人が再会したのは一か月後。
二人が生まれ育った町で、中学の時の真似事をします。
そして、次は高校生コースも体験したいと美加子はいいます。
二十四歳の昇に追いつくのに、時間がほしいと。
しかし、それは昇も同じで、十九歳の美加子に追いつくためにその後を追うのでした。
おわりに
僕はこういったSF設定が大好きなのですが、昔から何となくしか理解できていません。
だから細かいことはふーん、そんなもんかと流してしまいました。
それでも本書は面白いです。
映像作品も三十分程度で見られるので、今度挑戦したいと思います。
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