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『星の子』あらすじとネタバレ感想!シンプルな言葉で紡がれる不思議な物語

harutoautumn
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林ちひろは、中学3年生。出生直後から病弱だったちひろを救いたい一心で、両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき、その信仰は少しずつ家族のかたちを歪めていく…。野間文芸新人賞を受賞し、本屋大賞にもノミネートされた著者の代表作。

「BOOK」データベースより

本書は芦田愛菜さん主演で映画化されました。

映画の公式サイトはこちら

読み終えてからずっと考えていますが、本書がどういう物語なのかうまく表現できない自分がいます。

何か強いメッセージがあるかといえば違う気がするし、人によってこの物語から受け取るものは全く違う気がするし。

とにかく一度読んでほしい、と無責任なことしか言えないのが正直なところです。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

宗教にのめり込む一家

林ちひろは生まれつき体が弱く、両親はあらゆる手を尽くしてちひろの健康を願いましたが、一向に良くなる気配はありませんでした。

そんな中、父親の同僚・落合から勧められた『金星のめぐみ』と呼ばれる水をちひろに使ったところ、これまでの不調が嘘のように消え、ちひろは元気になりました。

林家はこうして幸せになり、落合夫妻から別のものを勧められては喜んで試し、どんどんのめり込んでいきます。

ちひろの目に映る世界は幸せそのものですが、読者はすぐに気が付きます。

これが宗教にのめり込んだ一家の姿なのだと。

聞く耳を持たない

親戚はすぐに異常に気が付き、いますぐ手を引くよう説得します。

しかし、両親もちひろも奇跡を目の当たりにしているのですから、そんな説得に耳を貸すわけがありません。

親戚はインチキであることを証明するために手を考えても、相手の神経を逆撫でするだけ。

親切の声でも、相手にはどうしても届かないことがある無力さが痛感させられるエピソードです。

虐待と暴力

ちひろは大きくなるにつれ、自分の家が他の子たちの家とは違うことを感じとっていきます。

家庭環境自体が虐待ともいえるものですが、ちひろは両親のことが好きであり、次第にその狭間で疑問を抱くようになります。

周囲の人はちひろを避け、時には心ない言葉で彼女を傷つけます。

同年代だけではなく、時には大人であってでもです。

物語が進行するにつれて不穏になる宗教団体の姿。

ちひろと両親がその団体の旅行で行った先で見た星空には、何が映ったのでしょうか。

感想

結末の捉え方は読者次第

巻末の対談で、元々はバッドエンドが用意されていたということですが、本書の結末は読者によって様々な捉え方ができる内容になっています。

素直に見ればハッピーエンドととも取れるし、人間の悪意を疑えば、一転してバッドエンドに突き落とされます。

これは一例ですが、本書には本筋とは関係ない悪意、暴力が溢れていて、その一つ一つが読者によって様々な感想を持つと思います。

この明示されない空白ともいえる部分に隠れたメッセージがあり、本書の魅力といえるのではないでしょうか。

しかし一方で、答えが出てスッキリしたいという性分の方には拍子抜け、もしくは後味が悪い作品に感じられるのではないでしょうか。

シンプルな言葉で読みやすい、けれど全てが明確に書かれているわけではない不思議な物語。

万人受けというわけではなく、人を選ぶことは確かです。

対談ありきで読んでほしい

文庫版の巻末には、著者の今村夏子さんと『博士の愛した数式』などで知られる小川洋子さんとの対談が載っています。

シンプルな言葉で紡がれた物語とは裏腹に、今村さんの執筆における苦労がとても印象的でした。

自信のなさと、それを理解した上で自分はこうしようという固い意志。

対談を読み終えてから本書を読み返すと、同じ物語でも違った受け取り方が出来ました。

もちろん何も知らないまっさらな状態で読むのが前提にはなりますが、ぜひ対談まで楽しんでいただき、気持ちの余裕があればもう一度読み返してみてください。

今まで見えなかった新たな発見があるはずです。

おわりに

この記事を書き終えても、本書をこういう小説だ、と言い切れません。

しかし、シンプルな言葉で紡がれる言葉、伏線と思わせてそのままフェードアウトしていく事柄の数々に何かを思わずにはいられないし、この感覚は他の作品では決して味わうことのできないものです。

僕の言葉で伝えられることなど、ほんのこれっぽっちなので、少しでも気になったという方はぜひその目で確かめてみてください。

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