『小説家の作り方』あらすじとネタバレ感想!この世で一番面白い小説は存在するのか?
「小説の書き方を教えていただけませんでしょうか。私は、この世で一番面白い小説のアイデアを閃いてしまったのです―」。駆け出しの作家・物実のもとに初めて来たファンレター。それは小説執筆指南の依頼だった。出向いた喫茶店にいたのは、世間知らずでどこかズレている女性・紫。先のファンレター以外全く文章を書いたことがないという紫に、物実は「小説の書き方」を指導していくが―。野崎まどが放つ渾身のミステリー・ノベル改め「ノベル・ミステリー」登場。
「BOOK」データベースより
『この世で一番面白い小説』。
本書では、この世に存在するかも分からない究極の創作物をテーマに掲げています。
二年前に小説家デビューを果たした青年が、『この世で一番面白い小説』のアイディアを持つ女性に小説の書き方を教えるというのがベースになっていて、いつ『この世で一番面白い小説』が出来上がるのだろうと読者はワクワクします。
ところがそこは野崎まどさんということで、本書にはどんでん返しがいくつも仕掛けられていて、最終的には当初とは全く違う方向に向かうところに魅力があります。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
一通のメール
二年前に小説家デビューを果たした物実に一通のメールが届きます。
相手は紫依代という女性で、この世で一番面白い小説のアイディアを持っているため、物実に小説の書き方を教えてほしいというものでした。
なぜ依代はそこまで有名でもない自分にわざわざこんなメールをしてきたのか。
物実は怪しみますが、それでもこの世で一番面白い小説という魅力に抗うことが出来ず、依代と会います。
二十歳という年齢よりも大人びていて、誰もが振り向いてしまうほど美しく、話す時に妙な間がある女性。
依代は五万冊の本を読むほどのちょっとあり得ない多読家でしたが、キャラ設定一つにしてもなかなか前に進めないほど不器用でした。
物実はアルバイトということで依代から報酬をもらい、小説教室なるものを開いて彼女に小説の書き方をレクチャーすることになりました。
レクチャー
依代は知識量が膨大ですが、それを実践する能力が圧倒的に欠け、進捗状況は決して早いわけではありません。
しかし、一度感覚を掴めばすぐに習得してしまう器用さも持っていて、着実に小説の書くためのステップを踏んでいきます。
また、依代はお嬢様なのかありとあらゆることを経験したことがなく、小説教室とは別に物
実と出かけ、新たな出会いに刺激を受けます。
物実はそんな依代に惹かれ、しばらくはこんな関係が続くのだろうと思っていました。
しかし、終わりは唐突に訪れました。
本当の狙い
物実の前に在原露こと【答えを持つ者】、【answer answer】なる怪しい人物が現れ、依代についておかしなことを言い出します。
あれは本物の依代ではないと。
正確にいうと、物実が会っていたのは本物の紫依代ですが、小説の書き方を教えてほしいとメールで依頼してきたのは別の人物だと。
いきなりのことに困惑する物実ですが、露に言われた通り、依代に会った時に彼女の耳を隠す髪をさりげなくかきあげて驚きます。
そこにはイヤホンがはめられていて、依代は誰かの言葉を代弁していただけだったことが判明します。
何者かが物実の言葉を聞いて返答し、それを依代が代弁する。
だから会話に妙な間が出来ていたのです。
そうすると、物実に依頼をしてきたのは誰なのか。
なぜ本人が直接物実と会わないのか。
その答えは露から聞かされますが、ここから物語は大きく方向を変え、予想外の展開を見せます。
感想
小説の基本的なことを学べる
どんでん返しについては後述するとして、僕が良いと思ったのが、本書を読むことで小説とは何かという基本的なことを学ぶことが出来たことです。
プロット作りの要点、モチーフの扱い方やガジェットのバランス、作者でも時には想像できないほどのキャラクターの可能性など、どれも面白い小説を創り出す上で必要不可欠なものです。
もちろんこれを学んだからといって、誰でも面白い小説が書けるわけではありません。
しかし、これから読む小説の面白さを突き詰めていく中で、本書で学んだことが活きて、このブログにもしっかり反映できればいいなと考えています。
あとこれはくだらない妄想に過ぎませんが、物実を通じて野崎さんご本人にレクチャーしてもらっているのだと考えれば、こんなに嬉しいことはありません。
もちろん、くだらない妄想ですが。
後半の追い上げがすさまじい
本書の魅力といえば、やはり後半からのどんでん返しの連続だと思います。
序盤で見えてくるストーリーのままでは終わらない。
野崎さんの作品に共通する点で、本書でもその魅力が爆発しています。
本物の依代について、これは『この世で一番面白い小説』を創造するに当たってそう驚くことではありません。
むしろすんなり受け入れられる内容ですが、本書ではそこからも驚きがまだまだ連続します。
油断させておいて、真実はまだ違うところにある。
何が本当のことなんだろうとドキドキしながら読めれば、あなたは本書を十二分に楽しめると思います。
おわりに
この世で一番面白い小説とは何か。
そして、そんな作品を生み出す小説家をどうやったら作り出せるのだろうか。
本書は極端な一つの答えを出してくれますが、もちろんそれは考え方の一つに過ぎません。
読者それぞれに『この世で一番面白い小説』があるのかもしれないし、誰もが読んだ瞬間にそれが『この世で一番面白い小説』だと確信できる作品がこれから生み出されるのかもしれません。
そう考えると、小説ひいては創作の世界は無限に広がっているように感じられ、いつまでも興味が尽きません。
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