2022.11.29

『初恋さがし』あらすじとネタバレ感想！悪意が渦巻き、最後まで真実が読めないイヤミス

harutoautumn

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所長も調査員も全員が女性、「ミツコ調査事務所」の目玉企画は「初恋の人、探します」。青春の甘酸っぱい記憶がつまった初めての恋のこと、調べてみたいとは思いませんか?もし、勇気がおありなら―。あなたは、「初恋」のことを、思い出すのが怖くなる!他人の不幸は甘い蜜、という思いを、心のどこかに隠しているあなたに贈る、イヤミス極地点。
「BOOK」データベースより

可愛らしいタイトルとは裏腹な、おどろおどろしい表紙の本書。

真梨幸子さんらしい後味の悪さ、底の見えない人間の悪意がうごめいています。

彼女の作品の中でいえばそこまで気分が悪くなるものではありませんが、リーダビリティに優れているのであっという間に読めてしまいます。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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Contents

あらすじ
感想
おわりに

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あらすじ

興信所

山之内光子は弁護士を目指していましたが試験に合格できず、その夢を諦めます。

しかし諦めきれず、弁護士に近しい仕事としてミツコ調査事務所を開設。

興信所の所長として、依頼人の依頼に応えていました。

しかし、ただ人探しなどと宣伝しても顧客は集まらず、何か訴求ポイントが必要でした。

そこで光子が考え出したのが『初恋さがし』です。

多くの人にとって初恋は特別で、そこには様々な思い出があるはずです。

もちろんそれ以外の依頼も受け付けており、光子はそんな日々を過ごしていました。

仕事が裏目に出る

光子はまた一つ依頼をこなし、依頼人に探していた人の居場所を教えます。

ところがそれによって殺人事件が発生し、それ以来、光子は依頼人の様子、依頼内容に注意しながら仕事をするようになります。

しかし、それでも悲劇の連鎖は止まりません。

光子の行った仕事が新たな悲劇を生み、次第に光子の立場が危うくなっていきます。

一連の出来事が繋がる

物語が進むと光子以外の視点からも描かれますが、複数の視点が集まることによって独立していたと思われた断片が繋がりを持ち、物語が姿を変えます。

いくつもの悪意がうごめき、人を陥れようと画策する人物が複数いることが分かります。

物語の一番奥底に眠る真実とはなんなのか。

誰が真の犯人なのか。

予想のつかないラストがあなたを待っています。

感想

悪意のオンパレード

光子のもとに依頼人が訪れ、その依頼を果たすというのが基本の流れですが、依頼人の腹の中には光子に言っていない真の意図が隠されています。

まずこれが真っ黒で、人間の悪意が凝縮されています。

しかもこれだけにとどまりません。

光子の周辺、あるいは彼女と関係のある人物それぞれにも吐き気を催すような悪意が宿っていて、それらが複雑に絡み合うことで本書は成立しています。

真梨さんの得意な作風がこれでもかと炸裂していて、イヤミス好きであれば間違いなく楽しめます。

読めない真実

イヤミスということで、誰が犯人なのか当てるという目的が本書にはあります。

読者は様々な人物の言動、行動などから犯人を推測するわけですが、最後まで読んでびっくり。

これは当たらないだろう、というくらい話が二転三転します。

正直、伏線すらない唐突な事実開示もあるので、推理においてあまりフェアとはいえません。

とはいえ、驚きの展開は読み応え抜群なので、純粋に楽しんでもらえればと思います。

やや平凡

本書は読みやすく、真梨さんの強みが十分活かされた作品なのですが、マイナスポイントを挙げるなら真梨作品として押しがやや弱いところです。

イヤミスですが、読み終わっても頭にこびりつくような強烈な悪意ではない。

嫌な気分にこそなりますが、エンタメくらいの軽い気持ちで読んでも問題ないかなと個人的には思います。

良作だけれど、それ以上ではない。

そんな印象を受けました。

おわりに

とにかくタイトルと表紙のミスマッチが印象的で、読み始めたらもう一気読みでした。

ほどほどのイヤミスなので、表紙でピンときた人はぜひ挑戦してみてください。

初恋さがし（新潮文庫）