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『花まんま』あらすじとネタバレ感想!ノスタルジア漂う切なくも温かい短編集

harutoautumn
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まだ幼い妹がある日突然、母のお腹にいた時のことを話し始める。それ以降、保育園をぬけだし、電車でどこかへ行こうとしたり、習ったことの無い漢字を書いたり。そして、自分は誰かの生まれ変わりだと言い出した…(表題作「花まんま」)。

Amazon商品紹介より

朱川湊人さんの作品である本書。

収録作品である『トカビの夜』を『平成怪奇小説傑作集2』で読んで虜になり、本書を手に取りました。

どの作品も経験がないのに、どこかノスタルジーを感じる瞬間があり、その隙に押し寄せてくる不気味さや切なさが何とも味わい深い作品です。

収録作品である『花まんま』は映画化されることも決まっていて、発刊から十五年以上経って再び脚光を浴びています。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

トカビの夜

三十年以上前、私はトカビを見たといいます。

トカビとは朝鮮のお化けのようなもので、いたずら好きな小鬼です。

これは大阪万博前の大阪での出来事を描いた作品です。

妖精生物

私が小学四年生の頃の話。

雑誌を買おうと思ってお小遣いを握りしめて向かっていると、何かの物売りと思しき男性を見つけます。

男性はガラス壜を私の前にかざし、そこには半透明のビニールの塊のような、クラゲのような生物がいました。

昔の魔法使いが作った妖精生物なのだといいます。

にわかには信じられない話ですが、私はその生物に魅了され買って帰りますが、それが私の人生を大きく変えます。

摩訶不思議

アキラの父親の弟、通称おっちゃんが突然亡くなってしまいます。

階段からの転落死でした。

これから葬式が行われれますが、アキラにはある悩みがありました。

それはおっちゃんの恋人・カオルの存在です。

おっちゃんは既婚であり、言うなれば浮気です。

カオルを葬式に参加させるわけにはいきませんが、彼女の気持ちを無視することもできません。

アキラはカオルから小さな包みを渡され、それを棺桶に入れるようお願いされます。

このお願いが波乱万丈な葬式の始まりでした。

花まんま

表題作。

俺の妹・フミ子は不思議な子でした。

早くに父親を亡くしたものの、母親と兄妹の三人は仲良く暮らしていましたが、フミ子が四歳の時に変化が訪れます。

フミ子はある時高熱を出し、それ以降、別人のようになります。

雰囲気ががらりと変わり、まるで大人のような振る舞いをします。

母親は賢くなったのだろうと深く考えませんが、俺はフミ子から大事な秘密を打ち明けられます。

彼女には、別人としての記憶があるのだといいます。

送りん婆

今から四十年以上前の話。

みさ子の知り合いに、見るからに怖いおばあさんがいましたが、彼女の怖さは見た目だけではないことが明らかになります。

おばあさんには代々受け継がれてきた呪文のようなものがあり、それを聞いた人間をあの世に送ることができました。

彼女は苦しむ人のためにその力を使っていて、なぜか後継者としてみさ子を選びます。

みさ子は受け継ぐ気など全くありませんでしたが、おばあさんと一緒に行動することが多くなり、彼女の人生やその力の意味を考えるようになります。

凍蝶

ミチオは寂しい少年期を過ごしていました。

彼の家は周囲から蔑まされていて、そのせいで友人が出来てもすぐに離れてしまいます。

寂しさを常に抱えている時、ミチオを支えてくれたのはミワさんでした。

ミワさんとはとある霊園で偶然出会い、それから定期的に会うようになります。

ミワさんは見た目から高校生くらいだと推測され、慣れない関西弁からも出身が別であることが分かります。

彼女との交流が次第に生きがいになるミチオですが、ミワさんには秘密がありました。

感想

そっと感じさせるノスタルジー

僕はノスタルジーが大好きで、それを生きる原動力にしているといっても過言ではありません。

本書はそんなノスタルジーがふんだんに込められていますが、決して強引すぎないところが素晴らしい点です。

大阪を舞台にした話が多く、そこにまつわるエピソードが丁寧に描写されますが、具体的な年代や地名が表記されることはほとんどありません。

それなのに何となく通じるし、仮に通じないとしても、そんな時代があったのかと知らない匂いが流れ出し、読者の心を鷲掴みにします。

本書は頭の中に風景だけでなく、匂いや気配までも浮かび上がらせてくれ、それだけでも上質な読書時間です。

朱川さんの優しさ

本書の特徴の一つとして、どこまでも優しいです。

本書は時代や土地の特徴もあってか、どうしようもない人やその当時の貧しさがよく描かれます。

しかし、それを明確に描写することは少なく、匂わせ程度にとどめていることが多いです。

それは明言して追い打ちをかけたくないという優しさに感じられ、そういった気づかいが随所に感じられます。

外国人に関する描写もそうで、あえて国籍などが特定できないようにしてます。

その優しさがあるからこそ、本書の本当は辛く苦しい事実が和らぎ、貧しさだけに目がいかないようになっています。

初読の際は時代性にばかり目がいっていたので、再読で朱川さんの優しさが染みてきた時は何だかしんみりしてしまいました。

おわりに

切なく苦しいのに、それを肯定してくれる優しい作品。

こんな作品があったのだと、嬉しくなってしまいました。

『ウルトラマンメビウス』のノベライズも担当されたということで、今読みたい作品の一つになりました。

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