『八日目の蝉』あらすじとネタバレ感想！八日目を生きる蝉は何を思うのか？
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よなよな書房
『灰の劇場』あらすじとネタバレ感想！実際の三面記事から始まる物語
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大学の同級生の二人の女性は一緒に住み、そして、一緒に飛び降りた――。
Amazon商品ページより
いま、「三面記事」から「物語」がはじまる。
きっかけは「私」が小説家としてデビューした頃に遡る。それは、ごくごく短い記事だった。
一緒に暮らしていた女性二人が橋から飛び降りて、自殺をしたというものである。
様々な「なぜ」が「私」の脳裏を駆け巡る。しかし当時、「私」は記事を切り取っておかなかった。そしてその記事は、「私」の中でずっと「棘」として刺さったままとなっていた。
ある日「私」は、担当編集者から一枚のプリントを渡される。「見つかりました」――彼が差し出してきたのは、一九九四年九月二十五日(朝刊)の新聞記事のコピー。ずっと記憶の中にだけあった記事……記号の二人。
次第に「私の日常」は、二人の女性の「人生」に侵食されていく。
新たなる恩田陸ワールド、開幕!
恩田陸さんの幻想的な世界観と、実際の三面記事が融合した本書。
現実とフィクションの境界が曖昧になり、ただ目の前の出来事に魅せられていく感覚は、恩田さんならではの読み心地でした。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
三面記事
本書に登場する、ほとんどの人が目にも留めないような三面記事。
そこには年配の女性二人が、一緒に橋の上から飛び降りて自殺したことが書かれていました。
二人の関係は何なのか。
自殺の動機は何なのか。
考えようと思えば色々なことが考えることができますが、ほとんどの人がただ右から左に流すような他愛のない記事。
しかし私にとってはそうはならず、彼女の棘となって、この三面記事がずっと心に居続けることになります。
再会
それから数年後、私は会社を辞めて専業作家になります。
その頃になっても棘はそのままでしたが、さらに時間が経って物語が動き出します。
担当編集者が該当の記事を見つけてきたのです。
私の記憶と齟齬があるものの、棘が現実となって目の前に現れます。
私は色々考えた末、この事実をもとに小説を書くことを決めます。
侵食
上記の話は、恩田さんが本書を書こうと思うまでの経緯を書いていて、本書では『0』というパートに該当します。
それとは別に本書には『1』というパートがあり、ここでは二人の女性の物語が描かれます。
平行して進む二つのパートが、やがて混じり合っていく。
それは二人の女性の物語が、私を侵食していくかのようなものでした。
感想
感覚的な物語
僕は恩田さんの物語が好きで、一番の理由は言葉では言い表せない、感覚に訴えてくる物語だからです。
自分では言葉にできない感覚を、言語化して物語として届けてくれる。
だから僕は自分の中に生じた複雑な感覚を理解することができ、理解できた時の感覚を求めて恩田さんの作品を読みます。
もっといえば、僕が体験したことのない感覚も、作品を読めば獲得できるかもしれない。
そんな希望も抱いています。
その点において、本書は現実とリンクしているだけに、いつもよりも現実とフィクションの境界が曖昧で、理解しようとしても感覚として受け取るしかない、それでいてそれが楽しい物語でした。
分かりにくい構造
本書は万人受けするものではなく、賛否両論が必ず発生するものです。
一つは構造の分かりにくさ。
パートの分け方について、あとがきを読めば恩田さんの言葉で理解できますが、本書を読んでいる分には分かりません。
だからパートの対比が活きてこず、何が言いたいのかよく分かりません。
さらに物語としても明確な展開や結末が用意されているわけではないので、起承転結がはっきりした作品が好みという人からしたら、まどろっこしくて仕方ないでしょう。
僕は正直、賛否両論の中間というところで、面白かったけれど印象は薄いし、先に物語の構造を知っていたかったとあとがきを読んで思いました。
もしこれから本書を読む人は、恩田さんのあとがきを読んでから挑むのも良いかもしれません。
おわりに
恩田さんが現実の出来事を作品に取り込むということで、新たな一面を見せてくれた作品でした。
デビュー当時からの思いという熱量が、どうも読者との間にギャップを生んでいる気がしましたが、今後のさらなる幅の広がりを考えると、良い取り組みだったのかなと思います。
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