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『博士の愛した数式』あらすじとネタバレ感想!優しく誠実な友情の物語

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「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた―記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。

【「BOOK」データベースより】

僕は映画からこの作品に入り、ずいぶん間が空いてしまいましたが原作である本書を読みました。

映画はかなり原作を忠実に再現していることが分かったと同時に、僕は小説の方が好みです。

記憶が八十分しか持たない博士と接するにあたり、私と息子のルートは同じやりとりが何回繰り返されても誠実さを忘れず、そして友達として自然に博士との時間を楽しんでいました。

こんなに美しい関係があるのかと胸を打たれました。

数学の難しい話がいくつも登場しますが、博士は数式一つ一つを愛しそうに説明してくれるので、私やルートのようについ引き込まれ、何度も頷いてしまいました。

美しさと緻密さを兼ね備えた、誰にもおすすめできる名作です。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想について書いています。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

新たな派遣先

私は息子を一人で育てるシングルマザーで、家政婦として様々な家庭に派遣され、そこで働いていました。

今回、私が派遣されたのは何人もの家政婦が交代している家で、依頼人は上品な老婦人でした。

私の仕事は老婦人の亡き夫の弟、つまり義弟の身の回りの世話で、義弟(後に博士と呼ぶ)は離れに暮らしています。

母屋との行き来を禁じられ、疑問を抱きながらも私は仕事にとりかかり、すぐに家政婦が長続きしない理由に気が付きました。

まず博士は十七年前の交通事故をきっかけに、新しい記憶が八十分しか持ちません。

お世話をする側から家政婦のことを忘れ、その度に説明をしなければなりません。

博士は大事なことはメモして体に貼っていますが、そのせいで体中メモだらけです。

また博士は数学にしか興味を示さず、それを邪魔すると機嫌を損ねてしまいます。

私は博士が心地よく過ごせるよう努力し、やがて博士の話す数学の話が素晴らしく、美しいことに気が付いていきます。

三人の友情

ある日、博士は私との会話から彼女に十歳の息子がいることを知ります。

博士は息子を一人にしてはいけないと言い張り、その日から息子も博士の家に通うようになりました。

息子の頭はルート記号のように平らで、博士は『ルート』と愛称で呼び、彼を可愛がります。

ルートもすぐに博士に懐き、共通で好きな阪神タイガースの話題で盛り上がったり、時には一緒に数学のことを考えたりしました。

まるで父親のような博士の愛情に、私は本当の意味で博士のことを信用します。

こうして始まった三人での時間ですが、そう簡単なものではありません。

博士はタイガースのエース・江夏豊が好きですが、それは彼の記憶に残っている当時のこと。

実際はすでに引退していて、一度そのことを話した時の博士の落ち込みは相当なものでした。

こうしたことが二度とないよう私とルートは話す内容にも細心の注意を払い、博士に気を遣います。

しかし、気疲れするような関係ではなく、三人はまさしく友人でした。

数学を媒介にして、三人はかけがえのない時間を積み重ねていくのでした。

謎の未亡人

ある日、博士が熱を出して寝込んでしまい、私は泊まり込んで看病をしました。

しかし、それが未亡人には気に食わず、私は一度担当を外されてしまいます。

納得のいかない私ですが、ルートは気にせず放課後、博士に家に遊びに行き、そのことで私は未亡人に呼び出されます。

未亡人の私に対する敵対心は少々異常なほどでした。

しかし、博士がオイラーの公式を書いたメモを見せた瞬間、未亡人から険がとれ、再び家政婦として通うことを許してくれました。

このエピソードから、未亡人が博士に対して特別な感情を抱いていること、数学に理解があることなどが読み取れますが、最後まで博士との関係は謎のままです。

結末

ずっと続くと思われた三人の友情ですが、別れは唐突に訪れました。

博士の脳の障害が進行し、新しいことを一分たりとも記憶できなくなってしまったのです。

博士は施設で暮らすことになり、私とルートは時間を見つけては会いに行きました。

そして時は流れ、博士が亡くなる前の最後の訪問。

ルートは博士の影響で数学の道に進み、中学校の数学の教員試験に受かったことを博士に報告します。

ルートと博士は抱き合い、胸には博士が誕生日プレゼントとして二人からもらった江夏のカードが揺れていました。

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結局、未亡人は博士のなんなのか?

作中、家に泊まり込んだ私に必要以上にきつく当たった未亡人。

それはまるで恋人をそそのかそうとする女性に対する態度のようにも見えます。

明言こそされませんが、おそらく未亡人と博士は恋愛関係、もしくは不倫関係にあったのでしょう。

この辺は、実は映画にて描写されていたりします。(ぜひその目でご確認ください)

そうすると、未亡人が博士の前にほとんど現れず、脳の障害が悪化してから会うようになったことにも説明がつきます。

未亡人はかつての若かった、博士の記憶の中にいる自分のままでいたかったのです。

老いた自分の姿を八十分とはいえ、博士の記憶に留めたくなかったのです。

本筋とは違ったドロドロした部分ですが、あえてぼかしていることで強すぎる印象を残すことなく、いい塩梅で物語に溶け込むことができました。

おわりに

タイトルにある数式は確かに物語の中核を担いますが、それが全てではありません。

博士に対する私とルートの誠実な友情、そして博士の純粋な好奇心、優しさは読んでいて本当に気持ちの良いものでした。

ぜひ数式という言葉に物怖じせず、読んでほしい作品です。

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