2024.11.30

『午後のチャイムが鳴るまでは』あらすじとネタバレ感想！学校には本格ミステリが溢れている

harutoautumn

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こいつら、最高すぎる……！　昼休みの“完全犯罪”にご用心！？
本格ミステリ大賞受賞作家の最高到達点！

九十九ヶ丘高校のある日の昼休み、２年の男子ふたりが体育館裏のフェンスに空いた穴から密かに学校を脱け出した。
タイムリミットは65分、奴らのミッションは達成なるか（第１話「ＲＵＮ！ラーメン　ＲＵＮ！」）。
文化祭で販売する部誌の校了に追いつめられた文芸部員たち。
肝心の表紙イラストレーターが行方不明になり、昼休みの校内を大捜索するが――（第２話「いつになったら入稿完了？」）。
他人から見れば馬鹿らしいことに青春を捧げる高校生たちの群像劇と、超絶技巧のトリックが見事に融合。
稀代の若き俊英が“学校の昼休み”という小宇宙を圧倒的な熱量で描いた、愛すべき傑作学園ミステリ！
Amazon商品ページより

学校という閉ざされた空間、人間関係でも、高校生からしたらそこには無限の可能性が詰まっている。

それはミステリも同様で、どんな事件・推理だって楽しめる。

本書を読むと青春時代が素晴らしかったことが改めて確認できるし、ミステリって楽しいと素直に思えます。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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Contents

あらすじ
感想
- 青春が詰まっている
- ちゃんとミステリ
おわりに

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あらすじ

第1話『RUN!ラーメンRUN!』

九十九ヶ丘高校。

ユウキと日下部顕は昼休みに学校を抜け出し、ラーメンを食べに行こうと企んでいました。

このパートでは関係ありませんが、ユウキはこの後の展開に影響してしまうため苗字はまだ明かされていません。

二人がこのミッションを達成するためには時間内に食べ終えて帰ってくる必要があるし、匂いでバレる可能性も考慮しないといけません。

それらを踏まえて万全の対策を整え、ついに学校を抜け出します。

第2話『いつになったら入稿完了？』

文芸部は学校で徹夜原稿合宿を行っていました。

楢沢芽以をはじめとした部員は、文化祭に向けて発行する部誌の特別号の締め切りに追われていました。

部員の面々はなんとか原稿を完成させて安堵しますが、問題はまだありました。

特別号の表紙を飾るはずの、アマリリスの絵が届いておらず、肝心の彼女自身も見当たらないのでした。

第3話『賭博師は恋に舞う』

2-Aの男子生徒は、全員で周囲から隠れてあるゲームに興じていました。

それは消しゴムをトランプに見立てたポーカーでした。

単なる遊びとは思えないほどよくできていて、そこにかける男子生徒たちの情熱も本物です。

最初はちょっとした景品を目当てにしたお遊びでしたが、一人の女子生徒の存在によって彼らの情熱にさらに火がつき、そこに複雑な策略が張り巡らせられることになります。

第4話『占いの館へおいで』

斎藤茉莉は占い研に所属していますが、部室の外から誰か男の声を聞きます。

『星占いでも仕方がない。木曜日ならなおさらだ』

不思議なフレーズが耳に残り、友人たちと一緒にフレーズの意味を考えることにします。

しかし、そこには思いがけない秘密が隠されていました。

第5話『過去からの挑戦』

体育教師で生活指導もしている教師・森川が学生時代の話。

十七年前の九月九日、森川の友人・浅川千景が学校で姿を消します。

森川は生徒の菅原正直から、十七年後の今日に解かれることが定められていた、と意味不明なことを言われ、否が応でも事件について思い出して考えることになります。

菅原がすでに到達していた真実。

それによって森川にとって驚きの事実と展開がもたらされます。

感想

青春が詰まっている

ミステリ要素に触れる前に。

本書を読んで真っ先に思ったことは、青春が詰まっていることです。

昼休みに外に出てはいけない。

学校ならではのルールですが、今の感覚からすれば、破ったところで怒られるだけで、卒業にどうせ影響しないし良いだろう、なんて冷静に考えてしまいます。

しかし、作中の彼らは破ったことをバレないように最大限知恵を絞り、ラーメンを食べに行きたいと本気で考えます。

その熱量は甲子園球児と変わりがないほど熱々で、この馬鹿げた発想こそが青春ならではです。

著者の阿津川さんはあとがきで、そこに対して情熱を込めて執筆したとコメントしていて、それがちゃんと読者に伝わった最高の作品です。

ちゃんとミステリ

本書は青春小説であると同時に、ちゃんとミステリ小説でもあります。

事件は一般的な推理小説に比べれば、それは大したことはありません。

事件と呼ぶには大したことないし、真相も言われてみればなんだ、とがっかりするくらいです。

でも、事件には起こした人の意図や思惑があり、それを論理的に推理して解決する探偵役もいます。

これが揃っていて、ミステリといえないはずがありません。

現実からすると、一部の生徒の有能さ、権限の大きさなどが有り得ないものですが、それも学園を舞台にした創作となれば許容範囲です。

おわりに

大人時代の方が好きな僕ですが、青春って良かったんだな、とノスタルジーに浸らせてくれた一冊でした。

できれば学生の方々に読んでもらって、本書から刺激を受けて、本書以上の事件を起こして、今しかない時間を存分に楽しんでほしいです。

午後のチャイムが鳴るまでは