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『過ぎ去りし王国の城』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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中学3年の尾垣真が拾った中世ヨーロッパの古城のデッサン。分身を描き込むと絵の世界に入り込めることを知った真は、同級生で美術部員の珠美に制作を依頼。絵の世界にいたのは、塔に閉じ込められたひとりの少女だった。彼女は誰か。何故この世界は描かれたのか。同じ探索者で大人のパクさんと謎を追う中、3人は10年前に現実の世界で起きた失踪事件が関係していることを知る。現実を生きるあなたに贈る、宮部みゆき渾身の冒険小説!

「BOOK」データベースより

小学生の頃、図書室に置かれていた『模倣犯』のイメージがとにかく強かった宮部さんですが、実は本作が初めて読む作品です。

ジャンルでいうと、ファンタジー×青春というか、現実世界に入り込む非現実な出来事、そしてある出来事を通じて心を通わせていく中学三年生の男女。

特別な設定というわけではありませんが安定感があり、宮部さんの文章力もあって最後まで楽しんで読ませてもらいました。

また結末がどこまでも現実的だったことが印象的でした。

以下は刊行記念インタビューです。

vol.1 宮部みゆき スペシャルインタビュー|角川文庫創刊70周年 特設サイト

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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古城のデッサン

尾垣真(しん)は推薦入学で早々に受験勉強から解放された中学三年生。

彼の実家は父親が脱サラで始めた『パイナップル』というカレーショップを経営していて、真は母親に振り込みを頼まれ、銀行を訪れます。

窓口待ちの人で混み合う中、真が向けた視線の先には『ぼくのうち わたしのうち』と書かれた子供たちが書いた絵が展示されていて、そこに一枚だけ明らかに大人が書いたような古城のデッサンが展示されていることに気が付きます。

他の絵に比べて雑に貼られていて、一般の誰かが紛れ込ませて貼ったのかもしれません。

真の番号が呼ばれ、窓口で支払いを済ませると、古城のデッサンは床に落ちていて、それを通りがかった中年男性が踏みつけてしまいます。

デッサンにはくっきりと靴跡がついてしまい、なぜか真は衝動的にそのデッサンをこっそり持ち帰ってしまいます。

その夜、真はあの手この手で汚れを落とそうとしますが靴跡は消えず、かといって今さら何と説明して銀行に返せばいいのか分かりません。

ならば明日捨てようと思った真ですが、デッサンをのぞき込んでいると不意に風を感じ、森のような匂いがします。

不審に思ってデッサンに指を置くと、今度はデッサンの世界を見ているような錯覚を覚えます。

真はこのデッサンの中に別の世界があるのではと思う一方で、なかなかそれを信じることが出来ませんでした。

翌日、今度は中に入れないかと思い、ダメ元で記号のような人をデッサンの中に描きます。

すると確かにその人を模した記号に乗り移ることは出来ましたが、目も口もなかったので何も見えないし呼吸もできません。

今度は人間を書いて中に入ってみますが、すぐに倒れてしまって現実に引き戻されます。

どうやら現実世界のように厳密に再現しないと、動くことすら出来なことが分かりました。

しかし、あいにく真は絵を描くことが苦手で、そんな精密な人間を書くなんて到底出来ません。

それから数日悪戦苦闘しますが、真はそこでようやく協力者を思いつきます。

城田珠美。

同級生で、真と同じく推薦で受験勉強を終え、美術部に所属していて絵がうまい。

しかも何らかの理由で女子から嫌われているため、この話が他に漏れる心配も少ない。

しかしどうやって声を掛けていいのか分からず、真は放課後、珠美を尾行します。

着いたのは城址公園という公園で、珠美はおもむろにスケッチを始めます。

真はバレないように近づきますが、二度もくしゃみをしてしまって珠美に気づかれ、単刀直入に古城のデッサンを見せ、珠美が描いたものではないかと聞きます。

珠美は首を横に振りますが、デッサンに触れた時に彼女も中の世界を目の当たりにし、真の言いたいことを理解します。

こうして珠美を巻き込み、二人の取り組みは始まります。

塔に閉じ込められた少女

翌日の放課後、同じ城址公園に集まった真と珠美。

珠美はデッサンを拾った経緯を真から聞いて、その銀行の知り合いからデッサンについて情報を集めてくれていました。

しかし、結果は知らず、勝手に貼られたもので作者不明。

そして、なぜ絵の中に入れるのかも分かりません。

真はこの現象をゲームのようだと言って興味を募らせますが、珠美は何かあったら危険だと慎重です。

絵とは作者の魂であり、何を求められているのか分からない内に飛び込むのは危ないと。

真は大げさだと真剣に聞きませんが、珠美は真剣で、このままでは協力できないと言います。

ならいいと真は帰ろうとしますが、珠美は真は逃げ足が遅そうだから描くのは嫌だと言った上で、山ツバメならどうかと提案してきます。

これなら逃げ足も速いし、もしこれでこのデッサンが危険だと分かれば、それ以上は協力しないと。

真は今すぐにでも入りたいと言いますが、このままでは集中して描けないし、真に何かあった時に珠美だけでは対処できないから、大人の力が必要だと珠美は言います。

そこで珠美が選んだ場所は、はなだ市民公園のスケッチ広場でした。

ここなら他の人もいるから、何か異変があれば声を掛けてもらえるし、みんな絵を描きにきているから静かで、絵の中に入るコンディションも揃っています。

そこで二人は土曜日にスケッチ広場に集合し、早速スケッチに山ツバメを描き足す珠美。

彼女はデッサンについた足跡が薄くなっていることを指摘し、絵が自己修復していること、そのために人を中に呼んでいるのではと言います。

珠美はまだ不安そうですが、真はそれでも入りたくて仕方なく、制限時間を決めた上で真は山ツバメを自分のアバターとして中に入ります。

しかし、山ツバメをうまく動かせない真はすぐに掴まっていた木から落ちて、現実に引き戻されます。

それを何度か繰り返し、真はなんとか山ツバメとして空を飛べるようになりますが、現実に戻ると顔は真っ赤で目が充血し、明らかに体力を消耗しています。

珠美は休息を促しますが、真は構わず再びデッサンの中に入っていきます。

今度はうまく飛んでお城に近づきますが、上空の気流に飲み込まれて墜落してしまいます。

その際に、真はお城の塔に小さな女の子が閉じ込めらているのを発見します。

現実に戻って珠美にそのことを報告し、もう一度中に入りたいと頼みますが、顔色が悪く体力を消耗しているから今日はこれでおしまい、と取り合ってくれません。

真は腹を立て、八つ当たりに近い形で彼女に暴言を吐き、帰ってしまいます。

しかし、家に帰ると母親にも顔色が悪いと指摘され、なのになぜかお腹はとても空いていて、そこで初めて自分がどれだけ消耗していたのかを知り、珠美に謝らなければと思いました。

さらにデッサンを見て気が付いたことがあります。

デッサンについた靴跡はますます綺麗になっていて、この絵が人からエネルギーを吸い取っていることはもはや事実として認めざるを得ませんでした。

週明け、慎は珠美に謝ろうと機会をうかがいますが、避けれているのかなかなか会えません。

そんな時、クラスの女子が騒いでいることに気が付き、聞くと珠美と彼女のクラスメイトである江元栞奈、その彼氏の尾佐との間でケンカになり、尾佐が珠美の顔面を蹴ったのだといいます。

珠美の実家は城田外科病院という病院を経営しているということで、彼女は早退。

真は病院に電話をかけますが取り合ってもらえず、直接行こうと決めます。

総合受付に行くと、事務局長の今から自宅の行き方を教えてもらい、真は珠美の自宅に向かいます。

すると、自宅の玄関には真の中学の教師が何人か来て、誰かに謝罪をしていました。

真は彼らが帰っていくのを見届けますが、彼らに珠美の様子を聞くことが出来ず、それは珠美と親しいと思われて仲間外れにされるのが怖いからだと気が付き、情けなくて彼女に会うことが出来ませんでした。

翌日、珠美は学校に来ず、真はもしかしたらと城址公園に向かいます。

すると、珠美はいつものようにそこで絵を描いていました。

彼女は大きな眼帯をしていますが、思いのほか元気そうで安心します。

そこで真はトラブルの経緯を聞きますが、親の話になるなり珠美は取り乱します。

彼女の実の母親は交通事故で亡くなっていて、医者である父親は再婚を機に城田の婿養子になりますが、今の病院の建て直しのために必死になって働いていて、珠美は父親に心配をかけられません。

珠美は父親の連れ子ということで家での扱いはひどく、誰にも頼れないのだといいます。

そして、自分ならいなくなっても平気だから、今度は自分が絵の中に入ると。

すると今度は真が怒り、入るなら二人一緒でだと気持ちを露にします。

それで二人の隔たりはなくなり、本格的に絵の中に入る準備を始めます。

今度は初めから人間を描くことにして、前回と同じスケッチ広場に日曜日に集まろうと決めます。

当日、タイマーをセットして、時間が来たら現実に戻れるように準備をしました。

さらに体力の消費に備えて、真は母親に頼んで弁当を持ってきていました。

二人は珠美の描いた人間のアバターに移ってデッサンの中に入ります。

絵の中にも関わらずリアルな光景に驚く珠美ですが、さらに驚いたことに指笛の音が聞こえ、二人は音のする方に向かいます。

するとそこにはつなぎを来た男がいて、二人を歓迎します。

彼は佐々野といい、これで探検十回目になり、自分以外の人間を見つけたのはこれが初めてだといいます。

四十歳を超えているにも関わらず『パクさん』と呼んでくれという佐々野に真は警戒しますが、珠美は興味を持ったようでした。

先客

二人は佐々野のベースキャンプに招待され、この世界のことを聞きます。

といっても、二人がすでに知っていることとそう大差はありません。

佐々野は有名な漫画家のアシスタントをしていて、今は休職しています。

彼は銀行で見つけたデッサンの写真を撮り、そのデータをパソコンに取り込み、そこからこの世界に入っています。

同じく安全装置としてタイマーをセットしていますが、デッサンの中の世界の時間の流れは現実に比べて遅いそうです。

真はまだ佐々野のことを警戒していますが、同じ絵描きということで珠美はいち早く佐々野と打ち解け、情報を共有していきます。

パソコンに取り込んだデータからでも入れるのか?という疑問が生じますが、絵とは見る人がいて初めて成立します。

そういう意味では、パソコンに取り込んだ複製のデータだとしても、オリジナルと同じ力を発揮してもおかしくないことになります。

そして、佐々野も珠美もこのデッサンに対して作者の強い意志を感じるといいます。

それを調べるために佐々野は何度もこの世界に入り、また同じような人がいるのではと思って指笛を吹いて自分の存在を教えていたのでした。

真は塔に囚われていた女の子のことを話し、その子がこの絵の作者なのではと推測しますが、小学校低学年くらいの年齢でこの絵を描くのは難しいのではと佐々野は反論します。

そして、実はこのデッサンはオリジナルではなく、モチーフがあることが判明します。

ドナウ川流域のワッハウ渓谷上流にある、ベネディクト会修道院。

十八世紀のバロック様式の建物です。

しかし、なぜその建物をモチーフにこのデッサンを描いたのか。

そしてなぜこんな力を有しているのか、肝心なことはいまだに分かりません。

議論を続けたいところですが、いつまでもこの世界に留まっていると命の危険もあるため、佐々野は二人に自分の携帯の番号を教え、もしこれからもこの世界を探索する気持ちがあるなら連絡してほしいと伝え、三人は佐々野が描いた扉(出口)を通じて現実に戻ります。

今回は十分程度でしたが、気分は最悪でした。

しかし、珠美はしっかりと佐々野の番号を覚えていて、これからもこの世界を探索する気概があることは一目瞭然でした。

真が家に帰ると血尿が出て、改めてこのデッサンの魔力とも呼べる力に恐怖します。

それでも珠美は行くと聞かないため、なし崩し的に真も参加を続けます。

すでに珠美が佐々野の連絡をつけていて、二人は佐々野の住む吉祥寺のアパートに向かいます。

三人はこのデッサンについて、自身の修復、もしくはメンテナンスに人間のエネルギーを使用していることを認識した上で、なぜ体にダメージが出るのかを考えます。

エネルギーを吸うのは分かるとしても、ダメージを与える理由が分かりません。

佐々野は真たちより多くデッサンの中に入っただけあって数々の不調を経験していて、ゆくゆくは多臓器不全になるのではと不穏な言葉を口にします。

理由は分かりませんが、それでも探索を止めるつもりはありません。

佐々野のアイディアで、今度は佐々野がペガサスとして中に入り、山ツバメと同じく空からお城の様子を探ることにします。

早速中に入って試しますが、佐々野はなかなかペガサスの体を使いこなせず、苦労します。

一方、真と珠美は歩いてお城に向かいますが、一向に辿り着くことができず、その人間によってこの世界の対応が違うのではないかとい仮説が浮上します。

さらに二人とも体調が悪化し始め、慌てて元来た道を戻ります。

すると、行く手を遮るものがあります。

それは珠美をいじめる江元の顔をした蛇でした。

幻覚とはいえこの世界に歓迎されていないことは明らかで、二人は蛇を撃退して急いで戻ります。

さらに尾佐の顔をした猿にも遭遇しますが、それも無視してキャンプに着きます。

扉を通じて二人が現実に戻ると、佐々野も戻ってきましたが、彼は胃液を吐くと同時に、「そんなことって」と呟きます。

佐々野は二人の門限を確認すると、まずはエネルギーを補充するために多めの夕食をとり、今回の探索の情報共有を図ります。

真たちは江元と尾佐の姿をした幻覚のことを話し、しかも真たちはこの二人のことを口にしていないことから、あのデッサンが二人の心の中を見て幻覚を作り出したことが分かります。

つまり、真たちがあのデッサンにアクセスできるように、あのデッサンもまた真たちにアクセスできるのです。

一方、佐々野からも報告があり、彼もまた真が見た女の子を見つけ、しかも女の子のことを知っていると言います。

女の子は十年前、現実世界で行方不明になっていました。

デッサンの正体

女の子の名前は秋吉伊音。

当時九歳だった少女は行方不明になり、今もまだ見つかっていません。

伊音は隣町にある小学校に在学していて、そこは佐々野の母校でもあります。

少女は警察の必死の捜査でも見つからず、また両親から虐待を受けていて、多くの人は両親が関与しているのだと疑っていました。

また伊音の通っていた小学校では『十八歳になった伊音さん』を捜そうという動きがあり、佐々野は伊音の似顔絵の作成を依頼され、その絵をもって再捜査しました。

しかし、それでも伊音は見つかっていません。

真は自分でも調べようと伊音が当時住んでいたアパートに向かうと、そこに佐々野も来ていて、彼から図書館に伊音に関する資料が保管されていることを教えてもらいます。

真が調べてみると、そこには伊音がとても絵がうまいということが書かれていて、ある仮説が浮上します。

伊音がもし十九歳まで成長していれば、あのデッサンが描けたのでは?

真は伊音が生きているのではと思い、居ても立っても居られなくて珠美に連絡。

このことを伝えますが、今はそのことを考えるのを止めるよう言われます。

珠美は何か調べものをしているようですが、真にはそれを決して教えてくれません。

不服に思った真ですが、そこは黙って週末を迎えます。

三人で集まると、珠美と佐々野は当時伊音の友人だった女性と会ってきたことを告白し、仲間外れにされた真は憤ります。

しかし、聞き込みの結果は面白いものでした。

今回の神隠しのようなことは実は初めてではなく、伊音は度々姿を消し、その度にどこからか戻ってきていたのです。

そして珠美と佐々野の考えはこうです。

十九歳の伊音があの絵を描いて、九歳の伊音をあの絵の中で保護したのです。

これはタイムトラベルということになりますが、珠美は人生に一度だけ、死ぬときは人生を走馬灯のように遡るため、それはタイムトラベルと同じではないかと考えています。

つまり、十九歳の伊音はあの絵を描いて銀行に飾ると、九歳の自分を迎えに行く準備を整えてから死んだのです。

絵の中でエネルギーを吸い取られるのは絵の世界を存続させるためですが、肉体にダメージが及ぶのは伊音の死の体験を追いかけているからではないか、と。

しかし、議論していても埒があきません。

だから珠美は、伊音に直接訊こうと提案します。

あの世界自体が伊音だとして、十九歳の伊音を想像して描き、そこに憑依して対話するのだと。

しかし、そうすることによって絵の世界のバランスが崩れる恐れもあり、だから塔の伊音を先に救出する必要があるのだと珠美は続けます。

これだけでも話についていけない真ですが、珠美は十九歳の伊音と九歳の伊音は別々の世界に存在しているのだといいます。

そして、違う位相で育った十九歳の伊音は九歳の伊音の救出を思いつき、九歳の伊音が消えた、それが真たちのいる世界なのだといいます。

だから九歳の伊音を塔から救出したら、真たちの世界も変わるかもしれない。

そんなことまで言われ、真には意味が分かりません。

真にとってこの世界は十分なもので、見ず知らずの少女のために変えたいなんて思いません。

しかし、珠美と佐々野にはそれがありました。

珠美は母親が交通事故で死なない世界を。

佐々野は人生をやり直し、母親に対して親孝行できた世界を。

それに対し真は取り乱しますが、やがて二人に同行することを決断します。

十九歳の伊音に九歳の伊音をそのまま保護するようお願いするのです。

少女を救う

三人は準備を整え、デッサンの世界に入ります。

そこで佐々野の作ったアバターに憑依した十九歳の伊音を見つけますが、そこからは生気が感じられません。

そして、彼女は邪魔をする真たちに対して激しい怒りを感じていて、ついに世界は崩壊を始めます。

扉には戻れず、三人はお城に向かって走ります。

世界が崩壊する中、安全装置が発動し、まず佐々野が現実世界に戻ってしまいます。

残された珠美は何としても九歳の伊音に会おうと必死ですが、真は何とかそれを止めようと必死です。

しかし、真の頑張りも虚しく、彼もまた現実世界に引き戻されてしまいます。

真は珠美を起こそうとしますが、佐々野がそれを止めます。

ギリギリまで待つと約束したのだと。

真はモニター上で消失していくお城を眺めながら、必死で珠美に向かって呼びかけます。

すると、珠美は意識を取り戻します。

苦しそうですがその顔は満足げで、伊音に会えたのだといいます。

こうして伊音は家に戻ったのです。

結末

お城が消失して、世界が変わったのかもしれない。

真は確認しますが、伊音の住んでいたアパートの表記が変わっていた程度で、目に見える形での変化は感じませんでした。

佐々野とも会いますが、彼も、そして珠美にも変化はなかったといいます。

真は珠美にこのことを聞くのが怖くて会っていませんが、佐々野は彼女に会い、元気にしていることを確認していました。

しかし、佐々野が本当に伝えたかったことは他にあり、彼は真に『桜ちゃんハウス』という虐待にあった子供や子育てに悩む母親を支援するNPO法人のことを教えてくれます。

そして、この団体は伊音が失踪した十年前にはすでに活動を始めていて、珠美は九歳の伊音にここの電話番号を教えたのです。

珠美と佐々野は世界を変えることが目的のように話していましたが、本当は真に世界の改変の危険を冒してまで伊音を救うことを強いることをしたくなかったため、ああ言って責任を二人で背負うつもりだったのです。

真は真相を知って安堵し、さらに桜ちゃんハウスのホームページを見てさらに驚きます。

なんとこの世界の伊音はNPO法人に保護されて生き延び、このNPO法人の職員になっていたのです。

そして、何の変化がなくても佐々野は前向きに生きようと 決めていて、二人はそこで別れます。

そして卒業式終了後。

真は城址公園に行くと、やはり珠美は絵を描いていました。いや、真を待っていたのです。

彼女は今の環境で生きていくためには弱音を吐くわけにはいかず、そのために真とは付き合っていかれないといいます。

真はいつか珠美が父親と自分の家の見せに来ると約束したことを挙げますが、珠美は真が実家を出てから行くと返します。

すると、真は実家を継ぐと言い出し、これには珠美も驚きます。

最後にはお互いを『シンちゃん』『タマちゃん』と呼び合い、二人は別れます。

真は珠美の友達で、彼女との再会を待つのでした。

おわりに

非常にファンタジー要素が強い序盤から一気に現実的なところに収束する終盤まで、あっという間に読んでしまいました。

一緒に冒険が出来た。

そんな感覚を久しぶりに覚えた作品です。

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