ミステリー

『フィッシュストーリー』あらすじとネタバレ感想!懐かしのキャラクターも登場する短編集

最後のレコーディングに臨んだ、売れないロックバンド。「いい曲なんだよ。届けよ、誰かに」テープに記録された言葉は、未来に届いて世界を救う。時空をまたいでリンクした出来事が、胸のすくエンディングへと一閃に向かう瞠目の表題作ほか、伊坂ワールドの人気者・黒澤が大活躍の「サクリファイス」「ポテチ」など、変幻自在の筆致で繰り出される中篇四連打。爽快感溢れる作品集。

【「BOOK」データベースより】

伊坂さんの作品といえばサクサク読めてしまうけれど、ページ数が多く読み始めるまで躊躇してしまうものも多くあります。

そんな中で、本書はサクサク読める四つの短編で構成されているので、ちょっとした気分転換程度で読みたい時におすすめです。

ただし、伊坂作品に登場する人物が何人か登場するので、関連作品を読んでいないと真の魅力は味わえないかもしれません。

そういった意味で、伊坂さんの作品をある程度読んできた人に特におすすめしたい作品です。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

動物園のエンジン

動物園に勤務していた永沢はシンリンオオカミを一匹逃がしてしまい、責任をとって退職。

永沢は『動物園のエンジン』といわれていて、彼がいるのといないのとでは動物園の雰囲気が違うのだといいます。

辞めてからは夜の動物園で寝泊まりし、朝になるとマンションの建設予定地に行き、反対運動をする主婦に交じってプラカードを掲げていました。

その行動に一体何の意味があるのか?

私と河原崎はその行動の意味を調べ、やがて意外な事実を知ります。

そして、私とは違う視点が所々挟まりますが、この視点は誰のものなのか。

これも意外性があるので、ぜひ推理してみてください。

サクリファイス

『ラッシュライフ』や『重力ピエロ』などに登場する泥棒の黒澤。

彼は山田という人物を探して宮城県の端っこにある小暮村にやってきました。

小暮村は集落の集まりですが、部外者が来れば隠れられるはずもなく、黒澤は苦戦します。

一方、小暮村には『こもり様』という風習がありました。

誰かを生贄に捧げれば災難が去るというもので、現代では生贄こそありませんが、生贄役の村人が洞窟に閉じ込められます。

黒澤が来たタイミングがちょうどこもり様が行われていた時で、黒澤は村人の話を聞く中で村に隠された秘密を知ります。

怖さがある作品ですが、泥棒の黒澤ならではの考え方が面白く、本書の中でもおすすめの話です。

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フィッシュストーリー

表題作で、2009年に映画化されています。

この物語は三十数年前を起点にして、二十数年前→現代→十年後と時間が流れ、これらの時代を『fish story(ほら話)』という楽曲が繋いでいます。

売れなかったバンドの楽曲が時代を越えて誰かに届く、というロマンの詰まった物語で、もっと広げて長編としても十分成立するほどよく練られた設定になっています。

登場人物たちも伊坂作品らしい魅力がありますが、どうしても他に比べるとちょっとパンチが弱いかなと感じてしまうのがなんとも不遇なところ。

ポテチ

空き巣の今村と、同性相手の大西。

二人はプロ野球選手の尾崎の家に侵入しますが、尾崎に助けを求める女性からの留守番電話を聞き、女性の元に向かいます。

今村は女性を助けようとしますが、そこから物語は思いがけないラストを迎えます。

黒澤が登場したり、『ピタゴラスの定理』をはじめて発見したと勘違いするほど今村が純粋だったり、会話がいちいち面白かったり、タイトルに込められた意味が思いのほか秀逸だったり。

僕もそうですが、この話を一番に推す人が多いほどの名作です。

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感想

バリエーション豊か

のんびりとした話や怖い話、感動話までとにかく本書はバリエーションが豊かです。

改めて伊坂さんの小説家としての魅力を知るいい機会になりました。

それぞれ見どころは違いますが、やはり伊坂作品の登場人物はとにかく魅力的です。

軽快なテンポにくだらない内容。

でも油断していると名言がさらりと登場し、気が付けば伊坂ワールドの虜になっていました。

サクリファイスとポテチがGOOD

四つの作品の中で、順序をつけるのであれば『サクリファイス』と『ポテチ』を推します。

サクリファイスは黒澤の見事な洞察力によって暴かれていく村の秘密の怖さ、そして黒澤ならではの考え方が面白く、特に先の展開が気になる内容でした。

そして、その他大勢の人が推す『ポテチ』。

このタイトルにこんな意味を持たせられるのか、と感心すると同時に胸に染み入る感動が味わえる作品です。

そして、伏線があってからの結末。

読める展開ではありますが、あの流れであの結末は感動せずにはいられません。

おわりに

表紙にあるあらすじを読んだ時点で、表題作である『フィッシュストーリー』が気になって仕方ありませんでしたが、まさかこんなにも名作の数々に出会えるとは思いませんでした。

長編と違ってサクサク読めるので、伊坂さんの作品が読みたいけれど長編はちょっと、という方に特におすすめしたいです。

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