ミステリー

『祝言島』あらすじとネタバレ感想!消された島と殺人事件の関係とは?

「消された島」をめぐる超弩級イヤミス!

2006年、新宿と赤坂で起きた「十二月一日連続殺人事件」。死亡した演劇界のカリスマ・一ノ瀬マサカズ、元ポルノ女優の七鬼百合、女優の国崎珠里の共通の知人・七鬼紅玉は、警察の取り調べ中に姿を消し、以来事件は未解決のままだ。じつは、彼らに共通するものがもう一つあった。それが「祝言島」である。
2017年、九重皐月は大学の授業で「祝言島」のドキュメンタリー映画に出会う。実在とも都市伝説とも言われる祝言島の様子を収めたフィルムには、陰惨な殺人シーンも収録され、スナッフ映画として上映されたらしい。母のすすめで映像制作会社でアルバイトを始めた皐月は、「祝言島」に関わる人々の再現ドラマを手にすることに。どこまでが真実で、どこからが虚構なのか。忌まわしく不穏な日々がそこには収められていた。
「祝言島」開拓に端を発する、女たち3代にわたる数奇な事件。「十二月一日連続殺人事件」の犯人と、その驚くべき動機とは。さらに、殺された人々の本当の共通項とは……。
「イヤミスの女王」が贈る、二度読み、三度読み必至の超絶技巧。張り巡らされた伏線に最後まで目が離せない。発売当初、驚嘆と絶賛の嵐が起きた本作、待望の文庫化!

Amazon商品ページより

これまで『みんな邪魔』、『6月31日の同窓会』、『聖女か悪女』と読んできて、どれもどストレートなイヤミスでした。

その点、本書はミステリ要素が強めで、何かいけないことが隠されている雰囲気がたまりません。

餌を欲する犬のように、ただ目の前に出される真実をむさぼるように読書する。

そんな表現がぴったりくるかもしれません。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

祝言島

しゅうげんじま、あるいはほかいしまと読みます。

前者は一般的、後者は知る人は知っているという読み方です。

小笠原諸島の南端にあるといわれる島ですが、現在ではその存在は都市伝説扱いで、実在しないというのがネットの情報の主流です。

1973年に作成された『祝言島』というドキュメンタリー映画があり、一部過激な描写など話題になりましたが、これもあくまでフィクションと見る考えが主流になっています。

そんな祝言島ですが、制作から何十年も経った今になってテレビで話題に出ます。

それは、とある殺人事件と関係しているからでした。

十二月一日連続殺人事件

祝言島が関係していると思われている事件。

2006年11月30日の深夜から12月1日夜にかけて起こった三つの殺人事件を巷ではこう呼ばれています。

警察はあまりに短い時間で起きた事件であることから関連性を疑い、被害者の共通点として挙げられたのが七鬼紅玉(なおきるびぃ)という女優でした。

一人目の被害者である、演劇界のカリスマと一部で呼ばれている一ノ瀬マサカズとはその夜を共にし、二人目の被害者である七鬼百合(なおきりりぃ)とは親子関係。

そして、三人目の被害者である国崎珠理とは同じ事務所所属であり、それ以上の関係にありました。

紅玉は取り調べを受けますが、いつの間にか姿を消し、事件は未解決事件となってしまいました。

とあるテレビ番組はこの事件と祝言島を取り上げ、真実を明かそうとしていました。

失踪

上述するテレビ番組は物語の合間に少しずつ流れますが、メインは別です。

美術大学に通う九重皐月(ここのえめい)は大学の授業で祝言島の映画を見て、その夜、先ほどのテレビ番組が放映されているのを見ます。

スタイリストをしている皐月の母親は、番組を企画した人物の名前を見て不信感を露わにし、翌日姿を消します。

皐月は母親のメモに残された大倉悟志に救いの手を求め、そこで自分の知らない母親の姿を知ります。

混乱する皐月ですが、これは序の口で、ここから思わぬ過去に引き込まれて行きます。

物語が進行するにつれて母親のこと、祝言島と事件のことなどが明かされ、思わぬ真実が次々と発覚します。

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感想

過去によって現在が浮かび上がる

冒頭の皐月の視点だけでは、情報が少なく偏っているため、何が本当で何が嘘なのか判断がつきません。

それが再現ドラマという形で過去が描かれ、少しずつ現在の本当の姿が浮かび上がってきます。

再現ドラマ自体、本当かどうか判断がつきませんが、そんなことはどうでもよくなるような妖しい魅力を秘めていて、僕が皐月の立場でも夢中で見てしまったと思います。

真梨幸子さんの作品としては毒気がやや控えめで、かなり読みやすいのが意外でした。

彼女の作品特有のネバついた毒気が苦手だという人でも、もしかしたら多少は読みやすいかもしれません。

焦らし方が上手い

誰も彼も真実をなかなか語ってくれません。

相手の反応をうかがい、時には肝心な部分を言わずに終わらせてしまうこともあり、読者からしたら早く先が読みたくて仕方ありません。

この焦らし方の匙加減が絶妙で、祝言島の魅力があったからこそ成り立った構成だと思います。

ラストがやや消化不良

物語は一気に結末に向かって動き出します。

次々に明かされる真実によって散らばっていたパズルのピースがかちりとはまっていく感覚は、陰惨な内容にも関わらずむしろ爽快でした。

ただ、大満足というわけではなく、やや消化不良感はあります。

それまで広げてきた大風呂敷をいざ畳む段階になって、僕が想定するスケールよりも少し小さめな結末が待っていたからです。

あれだけの辻褄を合わせるために仕方なかったのかもしれませんが、拍子抜けしてしまってもったいない、というのが正直なところです。

面白かったのは事実ですし、毒成分もちょうど良くて無理なく読めました。

一方で、ミステリが好きな人にとっては、僕と同じように拍子抜けしてしまうかもしれません。

特にミステリ部分の重要なトリックを解くためのヒントが分かりやすく転がっていて、珍しく先の展開がある程度読めてしまいました。

あまり難解な謎は期待しない方が無難だと思います。

おわりに

最後にマイナスな意見を書きましたが、毒気にあたりたい人にもミステリ好きにもぜひ読んでほしい一冊であることは間違いありません。

年代の違う描写が入り乱れて後半になってくると情報がぐちゃぐちゃになりやすいので、整理しながら読み進めると謎解きも十二分に楽しめると思うのでオススメです。

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