『営繕かるかや怪異譚』あらすじとネタバレ感想!これまでになかった新たな怪異との向き合い方
雨の日に鈴の音が鳴れば、それは怪異の始まり。極上のエンターテインメント
叔母から受け継いだ町屋に一人暮らす祥子。まったく使わない奥座敷の襖が、何度閉めても開いている。
Amazon商品ページより
(「奥庭より」)
古色蒼然とした武家屋敷。同居する母親は言った。「屋根裏に誰かいるのよ」(「屋根裏に」)
ある雨の日、鈴の音とともに袋小路に佇んでいたのは、黒い和服の女。 あれも、いない人?(「雨の鈴」)
田舎町の古い家に引っ越した真菜香は、見知らぬ老人が家の中のそこここにいるのを見掛けるようになった。
(「異形のひと」)
ほか、「潮満ちの井戸」「檻の外」。人気絶頂の著者が、最も思い入れあるテーマに存分に腕をふるった、極上のエンターテインメント小説。
宮部みゆき氏、道尾秀介氏、中村義洋氏絶賛の、涙と恐怖と感動の、極上のエンタ-テインメント。
小野不由美さんのホラー小説である本書。
彼女のホラーというと『残穢』が真っ先に浮かびますが、それとは全く方向性が異なります。
『残穢』がどす黒く粘着質な感触なのに対して、本書の怪異は当たり前のような軽さがあります。
そこにあることが自然で、強い執着や敵意があるわけではない。
それに対するアプローチも柔らかさがあり、怪異との共存できる方向性を見た気がしました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
奥庭より
祥子は亡くなった叔母から小さな城下町にある家を受け継ぎます。
構造や立地から常にどこかが翳っていて、お世辞に良い物件とはいえません。
思い入れが強かったわけでもありませんが、祥子は受け継ぐことを決めていました。
しかし、彼女には悩みがあり、それは何度閉めても箪笥や襖が空いてしまうのです。
何かいる気配を感じ、加えてこの家には絶対に入ってはいけないと言われている場所がありました。
屋根裏に
晃司は妻や娘、さらに母親と一緒に暮らしていました。
母親は長年倒れた父親を懸命に支えてきましたが、彼が亡くなると、一気に体調を崩してしまいます。
最近では認知症の症状のような言動が出始め、晃司は来るべき介護に不安を感じます。
しかし、母親が感じていることが彼女の妄想でないことが次第に明らかになります。
雨の鈴
有扶子は七宝教室の講師と、ちょっとしたアクセサリーを販売することで生計を立てていました。
彼女がこれらの仕事で暮せているのは、祖母の家を受け継いだからでした。
今の生活に満足していましたが、ある日、鈴の音が聞こえてきて、状況が変わります。
喪服を着た黒い人影を見かけるようになり、その正体が明らかになるにつれて置かれた状況の危うさに気が付きます。
異形のひと
真菜香は父親の仕事の関係で、この城下町に引っ越してきます。
田舎の生活や、古い家に嫌気がさす真菜香。
しかし、そこに追い打ちをかけるような事態が起きます。
真菜香は見知らぬお爺さんが家にいるところを何度も見かけます。
お爺さんはいつでも姿を消すし、近所の人というわけでもありません。
怯える真菜香ですが、家族や友人からの理解が得られず、ますます孤立していきます。
潮満ちの井戸
麻理子は結婚してから、両親に譲ってもらった家に住むために地元に戻ります。
築五十年であちこちにがたがきていますが、夫の和志がDIYを趣味にするようになり、それすらも生活の充実に繋げていました。
家には井戸があり、見栄えがよくなるよう和志は手を加え始めますが、その中で元々あった祠を壊してしまいます。
これまでも手入れしていたわけではありませんが、麻理子は嫌な予感がして、それが次第に現実のものとなります。
檻の外
麻美は様々な事情からシングルマザーになり、逃げるようにして地元に帰ってきました。
家族はそんな彼女を厄介者扱いして、世話をしない代わりに大伯父が住んでいた家をあてがわれます。
生活するために麻美は知人の伝手で中古車を買いますが、すぐに何度も故障してしまいます。
変なものをつかまされた。
麻美は苛立ちを感じますが、それが車のせいではなかったことがすぐに明らかになります。
感想
思い浮かぶ風景
本書はエンタメに近いホラー小説ですが、その前にまず風景描写が素晴らしいです。
描かれている短編はいずれも同じ地域で、近代的な街というよりも昔ながらの木造建築や自然をイメージしていただければと思います。
喧噪からは程遠く、耳を澄ませば自然な音が溢れている。
家も豪華というわけではありませんが広々としていて、好きな人であればその味わいだけでも満喫できてしまいます。
セキュリティ意識も低く、知人が勝手に家に上がってお茶を入れることすらも日常茶飯事。
僕は引っ越しを数回経験しましたがいずれも都市部だったので、この風習は知りつつもやはり面食らってしまいます。
本題に入る前から風景描写だけで楽しめてしまうのは、小野さんの手腕が長けている証拠です。
ただ存在する怪異
本書には怪異が存在しますが、どの短編でもその姿は曖昧です。
いるのは分かるけれど、特段害を加えてくるわけではない。
出自もありきたりなもので、決して手に負えないような歴史ものの怪異というわけでもありません。
それでも、一般市民からしたら怖いわけですが。
本書はホラーを取り扱いつつも、緊迫感はそこまで強くなく、精々不気味さや不安が強いくらい。
怖いものが苦手な人でも読みやすく、電車などの移動中に読むにもちょうど良いライトさです。
営繕という新たなアプローチ
本書は怪異によってもたらされた困りごとに対して、対処していくわけですが、その対処方法が営繕です。
特段霊的な力を持たない営繕屋が、建物やそれにまつわるものを改修することによって怪異がもたらす害をそらす、あるいは軽減させるという考え方は新鮮でした。
滅するわけではないので完全に不安がなくなるわけではありませんが、相手も意図して害を与えてくるわけではないため、そこまでの強硬策が必ずも必要というわけではありません。
怪異と共存するというか、寄り添うというか。
このソフトなアプローチは、営繕屋のカラッとした性格とも相まって好きでした。
おわりに
小野さんのホラーは怪異のネタだけでなく、それに対するアプローチや描き方にあるのだと改めて実感しました。
漫画家もされていて、そちらも本書の豊かな風景描写がしっかり反映されていて、かなりオススメです。
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