ホラー
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『独白するユニバーサル横メルカトル』あらすじとネタバレ感想!残酷さと美しさが織りなすホラー

harutoautumn
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タクシー運転手である主人に長年仕えた一冊の道路地図帖。彼が語る、主人とその息子のおぞましい所行を端正な文体で綴り、日本推理作家協会賞を受賞した表題作。学校でいじめられ、家庭では義父の暴力に晒される少女が、絶望の果てに連続殺人鬼に救いを求める「無垢の祈り」。限りなく残酷でいて、静謐な美しさを湛える、ホラー小説史に燦然と輝く奇跡の作品集。

Amazon商品ページより

ホラーを語る上で平山夢明さんは外せない。

ずっと思っていて、そこから初めの一歩として本書を手に取りました。

タイトルや表紙の衝撃はさることながら、中身はさらに衝撃的で、人によっては読み進めることが難しいほど残酷さに溢れています。

その一方で美しさもあり、つい見入ってしまう魅力がありました。

本書に関する平山さんへのインタビューはこちら。

著者インタビュー 平山夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』|楽天ブックス

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

C10H14N2(ニコチン)と少年~乞食と老婆

町の外れに住んでいるたろう。

小さい頃から大きな声で挨拶できる彼は町の人に好かれていて、彼もまた町の人を好いていました。

ある日、たろうは市長の妾の子どもに目をつけられ、友達からも距離を置かれるようになります。

いじめられたことにショックを受けてあてもなく歩いていると、湖の畔で汚らしい男性と知り合います。

Ωの聖餐

俺はとあるものの世話を強制されます。

それはヤクザらしきものたちにとって非常に大事な生き物なのだといいます。

漂う異臭。

俺が世話を任されたのは、腐りかけの象のようなものでした。

無垢の祈り

ふみは転校してきた学校で『おばけ』と呼ばれ、同級生の暴力にあっていました。

母親は何かの宗教にのめり込んでいて、ふみの置かれている家庭環境が劣悪であることがうかがえます。

周辺では事件が多く起こっていて、治安的にも良くないことが分かりますが、さらなる災難がふみを待ち受けていました。

オペラントの肖像

世界は三度の世界大戦を経て、人口の大半を失ってしまいます。

その経験を糧に、人類は過つ生物である前提のもと、人類を管理することにします。

スキナーと呼ばれる心理学者集団は、条件付け(オペラント)をすることでそれを成し遂げました。

卵男(エッグマン)

私は五人の女性への強姦殺人で極刑を受け、死刑囚監房に収容されます。

同室には205号と呼ばれる人物もいて、彼もまた極刑を受けていました。

ここでは二人のやりとりと、私とカレンという捜査官のやり取りが交互に描写され、私が置かれている状況が次第に浮かび上がってきます。

すまじき熱帯

俺は父親であるドブロクと共に、東南アジアのジャングルの中で救援を待っていました。

発端はドブロクで、十八年ぶりに再会した彼は大金をちらつかせ、俺を誘います。

ドブのような助六。

そんなあだ名を持つ父親がまともなはずはありませんが、俺はそれでも金に釣られてついていきます。

向かった場所は名前も知らない国で、そこで思いも寄らないことが待ち構えていました。

独白するユニバーサル横メルカトル

語り手の私は人間ではなく、地図の集合体です。

ユニバーサル横メルカトル図法による地形図百九十七枚によって編纂されていて、単なる地図とはいいつも、目的地に向けて適切なナビゲートをすることができます。

私には仕える家があり、今は先代からお坊ちゃんに受け継がれていますが、お坊ちゃんは私をあまり使いません。

そのまま忘れてられていく存在かと思われましたが、事態は動きだします。

怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男

MCは拷問者で、三年仕事のパートナーをしてきたタタルに自殺されて少なからずダメージを負っていました。

そんな中、ボスから新たな命令が下り、新しいパートナーを迎え、次の獲物に取り掛かります。

その女性は特殊な客を相手にする淫売で、静かにさせる必要があるのだといいます。

しかし、ココという獲物となった女性は自らここに来たのだといい、ロマンスを求めていました。

感想

衝撃のオンパレード

本書はとにかくどの掌編を読んでも衝撃がすさまじいです。

一言でいえばどれも残酷なのですが、テイストは異なっていて、どれも受ける印象は異なります。

目を覆いたくなるような凄惨なシーンがあれば、見ていて残酷だけれど同時に切ない、そんな不思議な感動を与えていることもあり、一冊にまとめてしまうには惜しいほどアイディアが詰まっています。

そして、同時に美しいです。

この絶妙なバランスがあるからこそ、ただグロテスクで読むのを止める、とはならないように上手く設計されていて、平山さんの力量がうかがえました。

ただ『Ωの聖餐』だけは嗅覚に訴えかけてくる生理的な嫌悪感があり、個人的には読み進めるのがきつかったです。

『粘膜人間』でも思いましたが、僕はどうもグロテスクに対する耐性が低いようです。

合うものを読めば良い

本書は作品によって振れ幅が異なり、人によって良いと思った作品に差が出そうです。

また全部を好きだといえる人はそう多くないのではと予想しています。

多くの人は好きな話があり、苦手か刺さらない話もあると思います。

そのため全てを熟読するというよりも、軽く読み進めてみて、肌に合いそうであれば集中力のギアを一段階上げることがオススメです。

そうすると無駄なく、自分好みの作品を十二分に楽しめるのではないかと思います。

おわりに

表紙、タイトルの衝撃すらほんの序の口だと思える衝撃的な内容でした。

今後も平山さんの作品は読んでいこうと思いますが、時期は少し空けます。

もしまたこんな衝撃を与えられようものなら、受け止める自信がないので。

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