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森絵都『DIVE!!』あらすじとネタバレ感想!飛び込み競技に人生をかけた少年たちの青春物語

harutoautumn

高さ10メートルの飛込み台から時速60キロでダイブして、わずか1.4秒の空中演技の正確さと美しさを競う飛込み競技。その一瞬に魅了された少年たちの通う弱小ダイビングクラブ存続の条件は、なんとオリンピック出場だった!女コーチのやり方に戸惑い反発しながらも、今、平凡な少年のすべてをかけた、青春の熱い戦いが始まる―。大人たちのおしつけを越えて、自分らしくあるために、飛べ。

「BOOK」データベースより

密室で決定されたオリンピック代表選考に納得のいかない要一は、せっかくの内定を蹴って、正々堂々と知季と飛沫に戦いを挑む。親友が一番のライバル。複雑な思いを胸に抱き、ついに迎える最終選考。鮮やかな個性がぶつかりあう中、思いもかけない事件が発生する。デッドヒートが繰り広げられる決戦の行方は?!友情、信頼、そして勇気。大切なものがすべてつまった青春文学の金子塔、ここに完結。

「BOOK」データベースより

森絵都さんといえば本書を推す人も多いのではないでしょうか。

様々な媒体に進出しているので、知名度もかなり高いです。

青春小説の金字塔として不動の地位を確立していますが、僕は上下巻というボリュームもあって何となく尻込みをしていました。

ところが意を決して読んでみると、なんでもっと早く読まなかったのだろうと後悔しました。

それくらいに、強烈に面白いです。

青春時代をとっくに通り過ぎた僕でも胸が熱くなるほどの情熱が詰まっていて、心を揺さぶられたい、それでいて爽やかさもほしいという人にはこれほど適した作品はありません。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

物語の中心にあるのは、飛び込み競技です。

高さ十メートルから時速六十キロで急降下するため、着水まではわずか一・四秒しかありません。

その中で選手たちは己の技を見せ、観客を魅了します。

本書は、そんな飛び込みに人生を捧げた人たちを描いています。

救世主

物語の舞台は、大手スポーツメーカー『ミズキ』が運営するミズキダイビングクラブ(MDC)。

赤字経営で存続が危ぶまれていますが、それでも小学生から高校生まで三十人近くが在籍し、日々練習に励んでいました。

そんなある日、MDCに見知らぬ若い女性が現れ、MDCを守りにやってきたのだといいます。

この時点では言葉の真意が分かりませんでしたが、彼女の正体が明かされるとともに状況がはっきりします。

女性の名前は麻木夏陽子といい、アメリカで飛び込みのコーチングを学び、これからMDCのコーチに就任するのだといいます。

夏陽子の課す練習は厳しく選手たちから反発の声も挙がりますが、メキメキと実力を伸ばすにつれて少しずつ選手も彼女を信頼するようになります。

ここまで夏陽子が必死になる理由。

それは、MDCを存続させるためにはこのクラブからオリンピックの日本代表選手を送り出さないといけないからでした。

目指すはオリンピック

衝撃的な事実とともに、夏陽子がMDC創設者の孫娘であることも判明します。

飛び込みへの情熱だけでなく、思い入れのあるMDCも何としてでも守りたいという夏陽子の心情が分かり、選手たちはオリンピックという先の見えない目標に向かって動き出します。

夏陽はMDCの選手の中で坂井知季、富士谷要一に特に大きな期待を寄せます。

要一の両親はどちらも飛び込みをしていた、いわばサラブレッドです。

高校生にしてすでに業界で名前が知れ渡っていて、オリンピック出場も決して夢ではありません。

そしてもう一人の知季はまだ中学生で、オリンピックを目指せるほど現時点で実力があるわけではありません。

しかし夏陽子は、知季が二重関節で人よりも体がやわらかいこと、そして他の誰も持っていない才能を見抜き、大きな期待を寄せます。

知季はそれまでオリンピック出場などという大きな夢を抱いたことはありませんでしたが、日常の枠と超えたいという漠然とした思いだけがありました。

それが夏陽子の言葉で火がつき、急速な成長を見せます。

しのぎを削るライバルたち

夏陽子は知季、要一に対して、ライバルを用意していました。

名前は沖津飛沫といい、津軽に住む幻の高校生ダイバーです。

どんな大会にも顔を出さず、ただ一人、海に飛び込んでいたところをスカウトされ、MDCにやってきたのでした。

しかし、飛沫はオリンピックになど興味はなく、MDCにやってきたのは夏陽子との契約のためでした。

事情はともあれ、ここにオリンピックを目指せる人材が三人集まり、激しい争いが繰り広げられます。

感想

とめどない情熱

本書の魅力を一言で表すならば、とめどない情熱です。

スポーツを題材にした小説であれば、大小あれど情熱という要素は込められていると思います。

しかし、本書に込められた情熱は文字通り、桁違いです。

オリンピックなんて目指していなかった少年たちが夏陽子の言葉で目覚めていき、お互いを友人としてだけでなくライバルとして見るようになります。

誰かが上手くなればそこには嫉妬が生まれ、険悪にもなります。

それでも壊れた関係を修復して以前よりも絆を深め、誰もが憧れるオリンピックの舞台をひたすら目指します。

この情熱は作品が進むごとに熱量を増していくので、一気読み必至です。

魅力的な登場人物

本書のさらなる魅力として、登場人物がどれも個性的で、最高に魅力的だということです。

オリンピックが視野に入っている知季たち三人のダイバーはもちろんですが、その他のダイバーに個性や思いがあり、それが物語の随所に散りばめられています。

一旦飛び込みを離れると、今度は日常生活で彼らと交わる人たちがいて、その人たちには飛び込みに関係していないからこその思いがあり、それがアクセントになります。

僕は結局、物語としてではなく、登場する人たち一人一人が愛しいからこそ、この物語が大好きなのだと再確認しました。

予想できないドラマ

厳しい練習の末、誰がオリンピック出場の切符を手にするのか。

はたまた、誰もその夢に届かないのか。

読者は誰もが予想しながら読み進めると思いますが、ここで森さんは誰も予想できないドラマを用意しています。

なぜそうなる。

あんなに一生懸命練習してきたのに。

彼らの努力を知っているからこそ悔しくなり、その逆境をはねのけた時には全身の血が騒ぐような喜びが待っています。

生きているようなストーリー。

これは名作と呼ばれる作品の特徴の一つとして挙げられると思っていて、本書は間違いなくそれを備えています。

おわりに

出版から二十年以上が経過してもその魅力は色あせることなく、鮮明に僕の脳裏に焼き付いています。

もはや不朽の名作と呼んでも差し支えもないほどの作品ですので、上下巻というボリュームに臆することなく、挑戦してみてください。

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