『第三の噓』あらすじとネタバレ感想!悪童日記から始まったシリーズの完結作
ベルリンの壁の崩壊後、双子の一人が何十年ぶりかに、子どもの頃の思い出の小さな町に戻ってきた。彼は少年時代を思い返しながら、町をさまよい、ずっと以前に別れたままの兄弟をさがし求める。双子の兄弟がついに再会を果たしたとき、明かされる真実と嘘とは? 『悪童日記』にはじまる奇跡の三部作の完結篇。
Amazon商品ページより
シリーズ第三弾にして、最終作となる本書。
前の話はこちら。
本書では前二作までの話が一気に覆り、新たな物語が提示されます。
最終作である本書が正しいのか。
それとも嘘なのか。
このあたりの個人的な意見は後述していますので、まずは本書を読んでありのままを受け入れてみてください。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
過去
私は少年時代の大半を病院で過ごしました。
時間が経ち、病院が爆撃され、そのまま暮らすことはできなくなってしまいます。
そこで老女に預けられるようになり、その老女を『おばあちゃん』と呼ぶようになり、彼女からは『牝犬の子』と呼びようになります。
これは『悪童日記』で描かれた双子の幼少期とは異なる描写であり、この時点で、二つの物語が地続きでないことは明らかです。
国境
やがておばあちゃんは亡くなり、私は家を追い出され、男と一緒に国境を越えます。
男は国境を超える前に亡くなり、私だけが国境を無事に超えます。
その時、十五歳でした。
私はクラウスと名乗りますが、それは嘘だとすぐに明かされます。
そのことから私=リュカで、この時からクラウスを名乗っていることが分かります。
違和感
本書で読者は見知っている名前を見かけると思いますが。それを鵜呑みにしてはいけません。
描写から、彼らが読者の知る人物とは明らかに異なっているからです。
それはリュカも例外ではありません。
本書では嘘や作り話というワードが頻出し、真実でないことが多分に含まれていることが示唆されています。
本書で書かれていることを信じてもいいのか。
読者は疑心暗鬼になりながら読み進め、やがて思いがけない結末を見届けることになります。
感想
新たな物語
『悪童日記』、『ふたりの証拠』というシリーズ作が世に送り出され、リュカ・クラウスの物語が多くの読者を魅了しました。
二人はその後はどうなるのか。どんな人生を歩むのか。
先が知りたくて本書を手に取ると思いますが、読んだ人はさぞ驚いたことでしょう。
だって、これまでの物語と辻褄の合わない物語が新しく始まったからです。
私の幼少期が語られますが、それは『悪童日記』で描かれた双子の人生と似ても似つきません。
どちらかが嘘、あるいはどちらも嘘であることも明白です。
そして、読者の知る名前が多く登場しますが、これも明らかに別人です。
もちろん双子もです。
何が嘘で、何が真実なのか。
続編を読んでいるはずなのに、新たな物語を提示されたことにまず驚いてしまいました。
タイトルに込められた意味
本書のタイトルは『第三の嘘』です。
ひねくれずに考えれば、本書=第三の噓で、この物語は真実でないと捉えるのが自然だと思います。
しかし、本書はあくまで第三であって、その前に二つの嘘があるということにあります。
その嘘とは何か。
これも自然に考えれば『悪童日記』、『ふたりの証拠』ということになります。
訳者あとがきで堀茂樹さんは、一つの物語の三つのバリエーションであって、真相などどこにも書かれていないと言及しています。
本書の中で、私は事実が耐えられないがゆえに変更していることを明かしていることからも、この考えは間違っていないのではないかと思います。
結局、僕らが読んでいた物語は何が正しかったのか。
それ以前に、何を読んでいたのだろうか。
このシリーズを読んだことへの後悔は全くありませんが、筆者の伝えたいメッセージをちゃんと受け取るためにはあと数周はしないと難しいのを痛感しています。
おわりに
真実を知りたいがゆえに急いで読み進め、よく分からなかったというのが正直なところです。
まずは『悪童日記』からシリーズ特有の構造を意識して読み、少しずつこの素晴らしい物語を消化したいと思います。
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