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『秒速5センチメートル』小説の徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速5センチメートル」いつも大切なことを教えてくれた明里、そんな彼女を守ろうとした貴樹。小学校で出会った二人は中学で離ればなれになり、それぞれの恋心と魂は彷徨を続けていく―。映画『秒速5センチメートル』では語られなかった彼らの心象風景を、監督みずからが繊細に小説化。一人の少年を軸に描かれる、三つの連作短編を収録。

「BOOK」データベースより

今や知らない人の方が少ないのではと思うくらい知名度の上がった新海誠さん。

そんな彼の三作目の劇場公開作品の小説版になる本書。

正直、内容としてはそこまで変わったものではありませんが、やはり新海さんというか、心情や描写が細かく、とても情緒的です。

合わない人には合わない作品ですが、新海作品のどれかが大丈夫であれば、本書もきっと楽しめます。

ページ数も少なめなので、あまり時間もかけずに読むことができます。

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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タイトルの意味

内容に入る前に、まずはタイトルの『秒速5センチメートル』の意味について。

これはヒロインの篠原明里が序盤に言及しますが、『桜の花びらが舞い落ちる速度』です。

この桜の花びらが舞い落ちるという描写が本書の象徴として何度も登場します。

あらすじ

別れ

ここからは本書のあらすじについて。

主人公の遠野貴樹が十七年前、彼が小学六年生になったばかりの頃を回想するところから始まります。

貴樹には篠原明里という同級生がいて、桜の花びらが舞い落ちるスピードが秒速5センチメートルだと教えてくれたのが彼女でした。

二人の交流は小学四年生から始まり、お互いに両親の都合で転校が多かったという共通点もあり、仲良くなります。

周囲からは付き合っているのではとからかわれますが、二人はお互いを必要とし、好意を寄せていました。

二人は同じ中学を目指すために受験勉強に取り組みますが、ある日、栃木に引っ越すことを明里から告げられます。

こうして二人は別々の中学に進学しますが、手紙を通じてお互いを支え合うのでした。

再会

しかし、中学一年の三学期、今度は貴樹の転校が決まります。

世田谷から鹿児島の離島に引っ越すことになり、明里との距離は今までの比べ物になりません。

だから貴樹は手紙で会いたいと明里に伝え、二人は予定を合わせます。

貴樹は明里に渡す手紙を用意し、明里の家の最寄り駅・岩舟駅に向かいます。

途中、電車は何度も遅れてしまいますが、明里は待ち合わせ場所に待っていてくれていました。

お互いに一年分成長していましたが、気持ちは変わりません。

離れていた時間を埋めるように様々なことを話し、終電を逃してしまいます。

明里の案内で二人は桜の樹に移動すると、そこで初めてのキスをします。

貴樹は後にこの時のことを振り返り、あれほどに喜びと純粋さと切実さに満ちたキスはなかったといいます。

翌朝、別れを惜しむ貴樹に対して、明里は『貴樹くんは、この先も大丈夫だと思う』と声を掛けます。

二人の再会はこうして幕を閉じますが、貴樹は手紙をなくしてしまい、渡すことができませんでした。

この時、貴樹はまたいつか会えるはずだと思い、明里を守れるだけの力を望みながら窓の外の景色を眺めるのでした。

叶わぬ恋

明里と別れてから五年ほどの時間が経ち、物語の舞台は種子島に移ります。

高校三年生の澄田花苗は同級生に恋をしていて、相手はあの貴樹でした。

貴樹は東京の大学を受験するという話ですが、花苗は地元で就職するつもりで、残された時間はもう半年しかありません。

花苗は五年間の片思いに終止符を打つべく、サーフィンで波に乗れたら貴樹に告白するのだと決めていました。

そして、努力の甲斐あって波に乗ることができ、ついにその日を迎えます。

貴樹の様子をうかがっていると、逆に声を掛けられ、一緒に帰る花苗。

貴樹への思いは募るばかりで、寂しさのあまり、咄嗟にシャツの裾を掴みます。

しかし、貴樹の花苗を見る目には、強い拒絶がありました。

結局、花苗は何も言えませんでした。

じゃあ、なんで一緒に帰っているのだろうと思うと涙が溢れます。

悲しそうな貴樹と、優しくしないでと思う花苗。

その時、ロケットが打ち上げられます。

二人は一言も発せずにその様子を眺め、花苗は自分の望みが叶わないことを知るのでした。

家に帰ってから、花苗は涙を流します。

明日から今までは別の世界で生きていくのだと思いながらも、それでも貴樹のことが好きだと涙を流すのでした。

欠落

明里との再会から十五年後。

貴樹は五年近く勤めた会社をやめ、毎日をぼんやりと過ごしていました。

高校を卒業後、貴樹は東京の大学に進学し、人並みの大学生活を送りました。

その中で友人を作り、恋の経験もしました。

大学卒業後、三鷹にあるソフトウェア開発企業に就職しますが、そこでも女性を好きになり、貴重な時間を過ごします。

しかし、そこでも別れが訪れ、貴樹は誰とだっていつまでも一緒にいられるわけではないことを改めて知ります。

そして、貴樹はずっと、明里が言ってくれた『貴樹くん、あなたはきっと大丈夫だよ』という言葉を望んでいたことに気が付くのでした。

前進

再会から十五年後の明里の視点。

明里は翌日に入籍を控えていましたが、荷物を整理する中で貴樹に渡すはずだったラブレターを見つけ、貴樹のことを思い出します。

明里は貴樹のことを好きだったと認めた上で、それはもはや思い出というよりも自分の一部で、今は夫となる男性のことを愛していました。

夫の転勤に伴って、明里は東京に引っ越すことになり、東京行きの電車に乗ります。

それまでのことを思い出し、貴樹が元気でいるようにと祈るのでした。

結末

最後の出勤を終え、貴樹はこれまでたくさんの人を傷つけてきたことを思い返し、反省します。

気が付くと、涙を流していました。

一方、渡せなかった明里のラブレターの内容が明かされ、そこにはどんなに離れても貴樹のことが好きだという明里の気持ちが書かれていました。

その後、貴樹のフリーのプログラマーとして働くことが決まり、それは四月のことでした。

ある日、貴樹は仕事を休み、街に出ます。

桜の花びらが舞い落ちる様子を見て、秒速5センチだと思い出します。

踏切を渡る時、貴樹は一人の女性とすれ違います。

その瞬間、心がかすかに動きます。

貴樹が振り返ると、女性もまた振り返って貴樹のことを見ていました。

心と記憶がざわめく中、電車が二人の視界を遮ります。

電車が通り過ぎた後、彼女はいるだろうか。

しかし、もし女性が明里だったとしても、いなくても十分に奇跡だと貴樹は思います。

そして、電車が通り過ぎたら前に進もうと心に決めるのでした。

おわりに

何でここまで前の恋を引きずるのだろうと、疑問に思う人もいると思います。

僕もあまり過去に執着しないタイプなので、あまり共感できる内容ではありませんでした。

しかし、それくらいに人を好きになったんだと思うと、貴樹は十分幸せだったのかもしれません。

そしてラスト、貴樹は前に進むことを決めました。

踏切の先に明里がいようといまいと、彼の人生はこれからきっと大丈夫なんでしょう。

僕はこれから先、桜の花びらが舞い落ちるのを見て、秒速5センチメートルだ、なんておもうのかもしれません。

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