『アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー』あらすじとネタバレ感想!様々な解釈が生む極上百合SF
百合―女性間の関係性を扱った創作ジャンル。創刊以来初の3刷となったSFマガジン百合特集の宮澤伊織・森田季節・草野原々・伴名練・今井哲也による掲載作に加え、“ソ連百合”として話題の南木義隆「月と怪物」、新鋭女性作家の共作「海の双翼」、『元年春之祭』の陸秋槎が挑む言語SF「色のない緑」、そして『天冥の標』を完結させた小川一水が描く新作宇宙SFの全9作を収める、世界初の百合SFアンソロジー。
「BOOK」データベースより
世界初の百合SFアンソロジーと銘打たれている本書。
百合をテーマとしたSF作品の金字塔ともいえる『ハーモニー』初刊から十周年にあわせて企画され、大反響を呼びました。
ここでいう百合はセクシャルに限定されず、女性同士の関係性を扱うものとしています。
著者ごとに様々な解釈のもと、百合×SFの物語を描いていて、百合好きにもSF好きにもたまらない一冊です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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タイトルの意味
内容に入る前に、タイトルの意味について。
タイトルにある『アステリズム(Asterism)』とは星群、星ぼしの輝きの関係性を意味します。
また『Aster』はギリシャ語で星を指しますが、英語では紫音のことを意味し、花言葉は『遠くにある人を想う』などです。
詳細は本書の冒頭に書かれているので、本編に入る前に一度読んでいただくと面白いと思います。
あらすじ
キミノスケープ
主人公は『あなた』と書かれ、第三者の目線で描かれる本書。
突然、あなた以外の人が世界からいなくなり、あなたは自分以外の人を求めて旅に出ます。
なぜかものが腐らないため食べ物などには困りませんが、世界は常に変化していて、安全のためにも移動し続けなければなりません。
そんなある日、あなたは誰かのメッセージを見つけ、自分ではない誰かの影を見つけます。
四十九日恋文
死者の意識が死後もしばらくは現世にとどまることが証明された世界の話。
期間は四十九日で、その間は短いメッセージであれば霊魂とやりとりをすることができます。
ただし一日一回で、初日の四十九文字から最終日の一文字までとじょじょに減っていきます。
絵梨は亡くなってしまった恋人の栞とメッセージをかわしますが、短い文字数の中でどうやって気持ちを伝えれば良いのか。
四十九日が近づくにつれて焦りが募り、生きていた時以上に相手のことを想います。
ピロウトーク
本書唯一の漫画。
先輩は前世の記憶を保持していて、お気に入りの枕をなくしたせいで十八年間一度も眠ったことがないのだといいます。
私は先輩のことが好きで、彼女と共にお気に入りの枕を探す旅に出ます。
幽世(かくりよ)知能
この世界では、現世とは別に存在する未知なる宇宙として幽世が認知されていて、昔から二つの宇宙が接する場所では超自然的な現象が発生していました。
そこで幽世の情報処理能力を利用したコンピュータが生まれ、それを幽世知能といいます。
現在ではこの幽世知能を利用してスマホなどが動いています。
与加能は一か月ぶりに幼馴染の灯明アキナと会いますが、二人の関係は険悪そのもの。
それもそのはず。
アキナは、与加能の妹を殺害していたのでした。
彼岸花
とある二人の少女、舞弓青子とお姉様こと烏丸真朱のやりとりが書かれた日記帖。
死妖という存在が認められていて、人間のように動きますが心臓は止まっており、代血(ターミナルブラッド)を体中に循環させることで動くことができます。
青子は死妖である真朱に憧れていますが、その姿を見たことはありません。
二人は日記でやりとりをし、やがて青子は真朱の牙で貫かれ、死妖に変えてほしいと願うようになります。
それに対して真朱は思いとどまるよう何度も説得しますが青子の気持ちは募り、真朱はついに隠していた本当のことを打ち明けます。
月と怪物
第二次世界大戦が終結した頃のソヴィエト連邦でのこと。
セーラヤ、ソフィーアの姉妹は貧しく辛い生活から逃げ出し、首都モスクワに移ります。
やがて二人は当局に摘発され、病院で様々な検診やテストを受けます。
彼らが興味を持っていたのは、セーラヤの特別な感覚でした。
その後、二人はさらに別の施設に移され、特殊能力の開発のために様々なテストを受けることになります。
海の双翼
二十歳の頃から五十年以上職業作家としてやってきた葵は、硲(はざま)と共にある日、鳥に似た異郷の生き物を見つけます。まるで鳥人です。
葵が体の保護などを目的として鱗晶をつけているのに対して、その生き物は羽根をまとい、そこから信号を発するのだといいます。
同じ言葉である程度コミュニケーションをとることはできますが、葵たちの知らない言葉についてはうまく伝えることができません。
その鳥人は海と名付けられ、コミュニケーションがとれるよう彼女の言語の分析がはじまります。
色のない緑
学生時代の友人だったモニカが自殺したとの知らせを受け、学生時代の友人であるジュディとエマはモニカの上司にあたる研究者と会います。
モニカは少し前に七百ページ超えの論文を完成させたものの、発表しないどころか誰にも見せていないのだといいます。
ジュディとエマは過去を振り返り、現在の状況を整理する中で、なぜモニカが自殺してしまったのかに思い至ります。
ツインスター・サイクロン・ランナウェイ
テラは巡航国民(サーキュラーズ)として礎柱船(ピラボート)にデコンパとして乗り込み、船体粘土を材料にその場に合う網を作り出すことで魚(我々の知るものは全くの別物)を捕り、自分の氏族を養っていました。
通常、夫として船を操れるツイスタの男と結ばれますが、テラはお見合いを始めて四年もの間、相手を見つけられずにいました。
そんな時、通名としてダイオードと名乗る少女が現れ、漁獲はいらないから一緒に飛びたいのだといいます。
突然の申し出に戸惑うテラですが、断るタイミングを逸してしまい、こうして女性同士の漁が始まります。
感想
多彩な百合SF
僕はKindleのセールで本書を見つけ、百合に惹かれて購入しました。
漫画での百合はそれなりに読みましたが、小説での百合にはほとんど触れたことがなかったからです。
読んでみると想像以上に重厚なSFで、かつ著者によって百合×SFの解釈も表現も全く違うことに驚きました。
一般的に百合というと女性同士の恋愛を安易に連想しがちですが、女性同士の関係性はもちろんそれだけではありません。
本書では女性同士だからこそ描ける様々な関係が描かれ、その背景に想像もつかないほどのSF設定が敷かれています。
設定に慣れるまで読むスピードは上がりませんが、とにかく粒ぞろいで一作も外れがありません。
一気に読んでしまうよりも、一日一編くらいの気持ちでじっくり読み、読み終えてからの余韻を楽しむことをオススメします。
大反響だったことも頷けるクオリティの名アンソロジーでした。
百合要素は薄め
個人的には百合成分は薄めかなと思います。
途中からそれがおまけで、SFを楽しむくらいの気持ちになっていました。
かと思えば女性ならではの繊細さだったり、感傷的な部分だったりが良いアクセントになり、物語を盛り上げてくれます。
知らない作家さんばかりで、まだまだ新しい有望な人が多く生まれているのだと嬉しくなってしまいました。
おわりに
百合×SFでかなりマイナー層に向けた作品であることは間違いありませんが、どちらかの要素が嫌いでなければまずは読んでみることをオススメします。
こんな豪華なアンソロジーを知らないし、改めて解釈次第で物語をいくらでも変えられる創作の自由さを楽しむことができました。
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