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原田マハ『アノニム』あらすじとネタバレ感想!アートが世界を変えると信じた痛快美術エンタテインメント

harutoautumn
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ジャクソン・ポロック幻の傑作「ナンバー・ゼロ」のオークション開催が迫る香港。建築家である真矢美里は7人の仲間とともに会場へ潜入した。一方、アーティストを夢見る高校生・張英才に“アノニム”と名乗る謎の窃盗団からメッセージが届く。「本物のポロック、見てみたくないか?」その言葉に誘われ、英才は取引に応じるが…。才能の出会いが“世界を変える”1枚の絵を生み出した。華麗なアート・エンタテインメント!

「BOOK」データベースより

原田マハさんといえば美術を絡めた作品、おかしくて心に染みわたるエンタメ作品などを得意としていますが、本書はその両方を兼ね備えていて、面白くないはずがありません。

本書にはアートを盗む集団『アノニム』が登場します。

彼らの仕事は盗難にあったアートを修復して持ち主に返すことで、いわば正義の存在で自分たちの仕事に誇りを持っています。

そこには原田さんの圧倒的な美術にかける情熱が秘められていて、いちいちカッコイイです。

アートで世界は変えられるのか?

一度読み始めたら、本書の虜になること間違いなしです。

以下は本書の特設サイトです。

『アノニム』原田マハ 特設サイト

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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タイトルの意味

内容に入る前に、タイトルの意味について。

アノニムとは『unknown(作者不明)』を意味していて、作中に登場するアートを盗み出す集団はこの名前を冠しています。

あらすじ

純粋な大志

高校三年生の張英才(チョンインチョイ)は家庭に不満を抱え、難読症(ディスレクシア)のせいで文字を満足に読むことができませんでした。

しかし英才は、著名な天才たちの多くが難読症を抱えていたことから自分も天才であると信じ、アートで世界を変えるという純粋な大志を抱いていました。

その叫びは小さく誰にも聞こえないほどでしたが、ある出会いをきっかけに英才、そして世界は大きく変わることになります。

ターゲット

三年前から『アノニム』という謎の存在が世間に知られるようになりました。

八人の男女から構成され、普段は各方面で活躍しつつも、裏ではアノニムとして秘かに活動しています。

彼らの目的は、盗まれたアートを取り戻して修復し、持ち主に返すことでした。

そこにはアートの魅力を知り、無限の可能性を信じる心がありました。

彼らの今回のターゲットは、アメリカ抽象表現主義の旗手、ジャクソン・ポロック作『ナンバー・ゼロ』でした。

この作品は今まで一度も外に出たことのない『未発表』、『新発見』の作品で、アノニムはそれをオークションのテーブルに運び出すことに成功します。

しかし、そんな大作であれば、狙う人間は何人もいます。

本書では『ゼウス』と名乗る男が、美術品の窃盗に関わるヘデロに命じて暴力的な金額で『ナンバー・ゼロ』の落札に乗り出します。

これに対抗できる人間はいるのか?

誰もが疑問に感じますが、アノニムにとってこれすらも計算の内でした。

世界を変える

アノニムはメッセージで英才に接触。

ポロックの作品について教えると、英才は大いに驚きます。

そこには自分の手法に似た、しかし遥かに洗練して凄みのあるアートがありました。

英才はポロックに触れ、アートへの思いをより強くします。

アノニムが英才に接触した理由。

それは、ポロックの『ナンバー・ゼロ』を描いてもらうためでした。

必要な材料は揃え、後は英才次第。

英才は無我夢中で作品にのめり込み、その姿はまるでポロックが乗り移ったかのようでした。

英才は見事に贋作を完成させますが、アノニムはそれをどうするのか?

ここから物語は一気に加速し、誰も予想できない結末が待っています。

アートは世界を変えられるのか?

その答えが最後に提示されます。

感想

とにかく痛快でこれぞエンタメ

原田さんのエンタメ作品はとにかく無茶苦茶で、読んでいて恥ずかしくなることもあります。

しかし、そこまで振り切れたからこそ伝わる熱いものがあって、一度読むと癖になってしまいます。

本書はそれがうまく洗練されていて、熱さを維持しつつもクールでカッコイイ仕上がりになっています。

本書の文庫版における高橋瑞木さんによる解説では007(ダブルオーセブン)が例として挙げられていて、かなりしっくりくる例えだと思います。

ハラハラドキドキというよりも、余裕を持って優雅に華麗にという感じで、その手腕についてはルパン三世が連想されました。

夢がある

アートは世界を変えられるか?

この無謀としか思えない問いに対して、本書は一つの答えを提示してくれます。

そこには無限に広がる夢があって、なぜ原田さんはここまでアートの魅力を伝えるのが上手いのだろうと背筋がゾクゾクしました。

何が出来るかではなく、そうしたいと強く願うこと。

それだけで世の中の多くのことは良い方向に変わるのではないでしょうか。

それこそがいつの時代も語り継がれるアートの持つ魅力であることを本書は教えてくれます。

続編に期待?

これだけ魅力的なキャラクターが揃っているにも関わらず、彼らの背景などはほとんど語られていません。

ここまで規模の大きい話を書いてしまったので題材に困るかもしれませんが、続編が期待できるのではと秘かに思っています。

アノニムの活動の先にどんな未来が待っているのか。

見てみたい気持ちが強くある一方で、それによって原田さんの全く新しい作品が読めなくなるのではという不安もあります。

非常に贅沢な悩みです。

僕としては、一作でもいいので本書の続きが見たいと願っています。

おわりに

テレビドラマや映画のような派手で出来過ぎな話ですが、その根底にはアートに対する熱い思いが流れていて、総合的に痛快で爽快な最高のエンタメ作品に仕上がっています。

正直、賛否両論あると思いますが、僕は難しいこと抜きにして伝わってくるものが本書にあったと思っています。

それこそがアートの魅力であり、ぜひ本書を読んで、少しでもアートを身近に感じてもらえたらと思います。

もしくは本書を通じて感じた熱意を、自分の好きなことに向けられたら何かが変えられるかもしれません。

本書には、そんな無限の可能性が広がっています。

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