『秋雨物語』あらすじとネタバレ感想!貴志祐介の魅力を濃縮した短編集
生きながら、地獄に堕ちるということ――。絶望を描いた連作集。
失踪した作家・青山黎明が遺した原稿。それは彼を長年悩ませる謎の転移現象の記録だった。転移に抵抗する青山だったが、更なる悪夢に引きずり込まれていく(「フーグ」)。至高のホラー4編による連作集。
Amazon商品ページより
現代の「雨月物語」を目指したという本書。
収録されているどれもホラーですが、多彩で一つにくくることが難しいほどそれぞれが突き出ています。
それでいて人間が抗えないものが恐怖の対象として登場し、無力さを感じるところは共通していて、その密度の濃さはさすが貴志祐介さん、というところでした。
本書に関する貴志さんへのインタビューはこちら。
貴志祐介さん「秋雨物語」インタビュー 人間の業を露わにする、4つの恐怖譚
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
餓鬼の田
谷口美晴は会社の秋の社員旅行に来ていました。
宴会が終わった後、早朝に目覚めると、窓の外に同じ課の青田好一を見つけて後を追いかけます。
青田は容姿、性格ともに良く、女子社員の間でそれなりの人気があり、美晴にもそこそこの下心がありました。
美晴が話し掛けると、青田はこの地にまつわる餓鬼の話をしてくれます。
さらに彼自身が秘密にしていることも教えてくれ、次第に二人の雰囲気が変貌していきます。
フーグ
編集部の松浪弘は、青山黎明という作家の原稿の進捗を確認しようと電話すると、彼の秘書のような、恋人のような高木亜貴が出て、青山が不在であることを伝えます。
いつ戻るか分からない中、亜貴は青山のパソコンから未完成の原稿を見つけます。
対応は亜貴に任されていて、彼女はその原稿を松浪に渡しますが、内容はホラーでほとんど実話だといいます。
タイトルは『フーグ』で、松浪はそれを読み進める中で、青山に隠されていた過去や彼の置かれている状況を知ることになります。
白鳥の歌(スワン・ソング)
大西令文は専業作家として崖っぷちに立たされていました。
これまでとは違った小説を書かなければならないと焦っている中で、ノンフィクション小説の執筆依頼が舞い込みます。
相手は嵯峨平太郎という富豪で、オーディオには並々ならぬ情熱を持っていました。
うんざりする薀蓄が続く中、嵯峨が聞かせてくれた一枚のレコードが大西に衝撃を与えます。
その歌を歌っているのはミツコ・ジョーンズという無名の歌手で、嵯峨は彼女の自伝を大西に依頼したいのでした。
まだ話が見えない中、大西は彼女に対する話を聞くことにします。
こっくりさん
近藤拓矢とその友人たちの合計四人は、こっくりさんをすることにします。
しかし、ただのこっくりさんではありません。
ロシアン・ルーレット・バージョンと呼ばれるもので、選ばれたものには死が与えられ、残りのものには人生を切り開くためのヒントが与えられるのだといいます。
参加するためには人生に絶望するほどの窮地に参加者全員が立たされている必要があり、拓矢たちは一か八かを信じてこっくりさんをやります。
その様子だけでもホラーですが、こっくりさんの由来や参加者たちの思惑が明らかになると、恐怖の色が一層濃くなります。
感想
圧倒的な密度
本書の最大の特徴は、作品としての密度が圧倒的に高いということです。
風景描写や何気ない発言や仕草、どれもが本書の雰囲気を作り出すために欠かせないもので、読者をあっという間に創作の世界に引きずり込みます。
あまりに自然に引き込むので現実との境界が曖昧ですが、その先で突きつけられる恐怖は本物です。
まるで目の前で起きているような恐怖。
人の力ではどうすることもできない絶対的な力。
ホラーの中でも後味が良いとはいえない作品で、これこそ貴志さんだからこそのホラーだといえます。
貴志さんのホラーといえば『黒い家』、『天使の囀り』などいくつも名作がありますが、それに肩を並べられるだけのポテンシャルを本書は秘めています。
好みが分かれるかも
収録作はどれも向いている方向が異なり、それぞれの魅力があるのですが、人によって面白い面白くないが分かれそうです。
最初と最後の作品は構成が明瞭で、誰が呼んでも分かりやすいものになっています。
もちろん一捻りされていて巧みなのですが、読みにくかったり、意図が読めないということはまずありません。
一方で、真ん中の二作品についてはどこが面白い、どこが怖いということを分かりやすく書いているわけではありませんので、人によっては「何が言いたいの?」と首を傾げたくなるかもしれません。
リーダビリティも抜群に高いというほどではありませんので、そういう意味では特定の人に刺さる作品といえるのではないでしょうか。
おわりに
貴志さんの作品をほとんど読んでしまって成分が不足していたので、久しぶりに良い栄養を摂取させてもらいました。
ここ最近ホラー界隈がにわかに盛り上がっていますが、貴志さんの作品はそことは一線を画していて唯一無二である。
そのことを再確認できた読書でした。
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