湊かなえ『夜行観覧車』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。遺されたこどもたちは、どのように生きていくのか。その家族と向かいに住む家族の視点から、事件の動機と真相が明らかになる。『告白』の著者が描く、衝撃の「家族」小説。
「BOOK」データベースより
鈴木京香さん、石田ゆり子さんらが出演し、ドラマ化された作品です。
湊さんはこの作品について『家族の物語』だと言い、観覧車が一周した後、つまり作品を見終わった後、いつもの風景が少し違って見えると話していましたが、まさにその通りの作品だと思います。
起こる事件もそこに潜む動機も悪く言えばありきたりな、しかし隣近所で起こっていてもおかしくないリアリティがあり、つい引き込まれてしまうような魅力があります。
この記事では、そんな本作の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
事件の概要
ひばりヶ丘という高級住宅街で、医師の高橋弘幸が後頭部を殴られて死亡しているのが発見されます。
妻の淳子は自分が夫を殴ったと供述し、また事件当時、長女の比奈子と次男の慎司は留守だったことから、夫婦間で何らかのトラブルがあったと見て捜査が進められます。
弘幸は医師で、比奈子も慎司も優秀で礼儀正しいと、まさに絵に描いたような幸せな家庭に見えていただけに、周辺住民には衝撃が走ります。
また事件当日、向かいに住む遠藤真弓は淳子と慎司が言い争う声を聞き、また事件が発生したと思われる時間帯にコンビニで慎司と会い、一万円を貸しています。
その後、慎司は失踪してしまい、真弓は自分が事件に関与してしまったのではないかと心配しています。
どんなことがきっかけとなって、淳子は弘幸を殺害してしまったのか?
失踪した慎司は、どのように事件に関与しているのか?
事件の舞台となった高橋家、さらに近隣に住む遠藤家、ひばりヶ丘の婦人会に所属する小島さと子のそれぞれから物語は語られ、徐々にその全貌が明らかになっていきます。
それぞれの目線から見た事件
遠藤家
遠藤真弓は小さい頃から一戸建てに住んで家庭を築くことを夢見ていて、夫の啓介と結婚して高級住宅街・ひばりヶ丘に念願の一戸建てを建てることが出来ました。
娘の彩花と三人で幸せな家庭を築くはずでした。
しかし、彩花は真弓の勧めで強引に受けさせられた高橋比奈子の在籍する有名私立女子中学への受験に失敗し、それが原因で度々癇癪を起すようになり、遠藤家では絶えず罵声が飛び交うような環境になってしまいます。
表面上は彩花のことを心配しているように見えても、真弓は建てた家が一番大事であり、彩花の気持ちを理解してあげることが出来ません。
また彩花は、受験で落ちたS女子学院を通り過ぎて、坂を下った先にある市立A中学校に通う度に劣等感に苛まれ、ついにあらゆるものが歪んで傾斜しているように見える『坂道病』というものを発症してしまいます。
さらに向かいに住む慎司は顔がテレビに出るアイドルにそっくりで人気もあり、慎司の家は彩花の家(ひばりヶ丘で一番小さい家)が目印とひどい扱いを受けていました。
そんな冷え切った遠藤家ですが、事件が起きた夜、真弓は淳子と慎司が言い争うのを聞いていましたが、こんな自分が指摘するのはおかしいと見て見ぬふりをしてしまいます。
またコンビニで出会った慎司に一万円を貸してしまったこともあり、事件に関与してしまったのでないかと心配します。
事件後、高橋家にはひばりヶ丘の婦人会からの誹謗中傷の張り紙がされ、窓ガラスも意石で割られているのが発見され、彩花も慎司に対する八つ当たりのつもりで石を投げ入れるふりをしますが、偶然真弓にその現場を見られてしまいます。
それでも二人は何もなかったように過ごしますが、ついに彩花の真弓への不満が爆発し、手当たり次第に物を床に投げつけて傷をつけます。
これまでグッと我慢してきた真弓でしたが、家を傷つけられたのことで正気を失い、彩花の上に馬乗りになります。
さらに落ちていたご飯、さらには土を彩花の口に詰め込み、あわや殺人になるところでしたが、隣に住む小島さと子が止めに入ってその場をなんとか収めます。
またこの時、夫の啓介は家の外にいましたが、騒ぎを聞きつけて二人の仲裁に入るどころか逃げ出してしまいます。
彼が向かった先は、先ほど仕事で訪れていた鈴木歩美という比奈子の友人が住む家でした。
そこで啓介は、高橋家に貼られた誹謗中傷のビラを剝がすのを手伝ってほしいと頼み、歩美と弟の弘樹を連れて戻ります。
ビラを剥がし始めると、遠藤家から真弓、彩花、さと子が出てきて、事件の答え合わせが始まります。
高橋家
高橋比奈子は、弟の慎司から大事な模試があるから家を空けてほしいと頼まれ、同級生で友人の鈴木歩美の家に泊まりに来ていました。
その時、比奈子の携帯に警察を名乗る人物から連絡が入り、父親の弘幸が病院に運び込まれたことを知り、迎えの車に乗って病院に向かいますが、弘幸はすでに亡くなっていました。
比奈子は父親を殺害したのは母親の淳子であるらしいということを聞きますが、詳細は何も知りません。
自宅に戻ることもできず、淳子の妹、晶子が一時的に引き取られ、ほとぼりが冷めるのを待ちます。
晶子は姉が殺人を犯したことが信じられず、比奈子に弘幸を暴力をふるわれていなかったかなど理由になりそうなことを聞き出そうとしますが、弘幸を大事に思う比奈子はこれに反発。
今度は慎司が犯人ではと考える晶子ですが、こちらも弘幸は慎司に対しても寛容で、問題はなかったと話す比奈子。
誰も信じられない状況において、比奈子が信じれられるのは弘幸の前妻の間に生まれた長男・良幸だけで、離れて一人暮らしをする彼に戻ってきてほしいと連絡します。
翌日、学校に登校して腫物のように扱われ、さらに帰り道、遠藤彩花に会って事件について聞かされます。
真実を知れた一方、彩花の悪意に晒され、悔しさを募らせた比奈子は良幸に自分から会いに行くことを決意します。
一方、良幸も比奈子のメールで事件のことを知ります。
事件を知ってもなお関係ないふりをしようとも考えましたが、結局妹と弟を助けるために家族の元へ向かいます。
比奈子は決意を胸にバスに乗り込もうとしますが、そこで行方不明になっていた慎司を見つけ、事情を聞こうとします。
その時、良幸が二人のもとの到着し、兄妹三人で事件のことを考えます。
状況を整理していく中、慎司は父親から勉強ができないことで叱責され、母親にもその矛先が向いていたと話していましたが、後にそれが嘘であったことが判明し、だんだんと真実が浮き彫りになってきます。
慎司を追い詰めていたのは本当は母親であり、中間テストの成績が振るわなかったことを理由にバスケットボールの道具を勝手に捨てたりと慎司を追い詰めていきます。
それで追い詰められた慎司は事件当日に爆発し、母親を怒鳴りつけます。
そこに父親が仲裁に入ってその場は収まりますが、事件が起きたのはそのあとです。
しかし、慎司は母親に散歩に行くよう言われていたため、その当時のことを知りません。
真弓と会ったのはこの時です。
このままでは埒が明かず、三人は家に帰ることを決意します。
家に戻ると、ビラを剥がす歩美たちとそれを批判するさと子に出くわし、事件の答え合わせが始まります。
小島さと子
彼女は自分たちがこのひばりヶ丘を高級住宅街と呼ばれるまで育てた自負があり、それを新参者が汚していくのが許せませんでした。
そのため真弓と彩花がケンカをするたびに探りを入れるなど、常に周囲にアンテナを張っていました。
そんな時、高橋家で殺人事件が発生し、ひばりヶ丘の名前が汚されてしまったとさと子たち婦人会は感じます。
そこで彼女たちが取った行動とは、高橋家への嫌がらせでした。
家や壁に誹謗中傷のビラを貼り、石を投げつけて窓ガラスを割る。
しかし彼女たちの中でこれは正当な行為であり、全く後ろめたさを感じていません。
さらにこのタイミングで真弓と彩花が揉み合うところを目撃し、さと子は彩花が殺される寸前で割って入り、なんとかその場をおさめるのでした。
二人にするには安心できないと遠藤家に居座るさと子ですが、やがて二人が落ち着いたのを確認して遠藤家を後にします。
ところが、 家を出たところで啓介たちがビラを剥がしているのを目撃し、思わず大声をあげます。
それに気が付いた真弓と彩花も外に出てきて、事件の答え合わせが始まります。
結末
比奈子は歩美にお礼を言い、歩美と弘樹はタクシーで帰っていきます。
残されたのは遠藤家、高橋家、さと子の七人。
三家族はお互いにいがみ合いながらも、真実を知るために知っていることを話します。
事件当時、自宅の車の中から高橋夫妻の会話を聞いていた啓介は、当時のこと、夫婦が慎司の学業のことで話し合い、父親が慎司に期待していなかったという会話をしていたことを話します。
それだけで果たして殺人まで犯すのか?
でも、積み重ねていつか殺人衝動に変わってしまったのかも。
結論は出ず、みんなそれぞれの家に帰っていきます。
遠藤家は何気ない日常を取り戻し、真弓は今日を乗り越えられたのだからこれからも大丈夫だと根拠もなく思うのでした。
一方、家に戻った高橋家の子供たち。
三人は、母親は前妻と死後も負けまいと張り合っていて、そのために慎司を良幸に負けないような立派な人間に育てる必要がありました。
しかし、父親はその慎司に対して期待していないことが分かり、激高して犯行に及んでしまったのです。
真実を知った三人が思ったのは、それでも家族でいなければならないということでした。
事実は三人の胸の内に秘め、これからどうすれば良いのか考えるのでした。
結局、慎司は父親に追い詰められていて、母親が助けるためにやったのだと嘘をつき、刑が少しでも軽くなるよう世間に訴えるのでした。
最後に、さと子の口から語られたのは、家の近くの海に出来る日本一高い観覧車のことでした。
さと子は長年暮らしてきたところでも、一周まわって降りたら同じ景色が少し変わって見えるのではないかと楽しげに話していましたが、それはどの家族についても言えることでした。
そして、これを見ている読者にとっても、日常は何かをきっかけに違って見える可能性だってあり得るのです。
おわりに
事件としてはあっさりしているものの、自分の日常も明日、いきなり変わるのでは?という恐怖が後を引く作品でした。
これから観覧車に乗る時、きっとこの作品を思い出してしまうのだと思います。
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