『モルグ街の殺人事件』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
19世紀アメリカの小説家・詩人であるエドガー・アラン・ポーの短編小説(佐々木直次郎による訳)。ポー自身が編集主筆を務めていた「グレアムズ・マガジン」1841年号に掲載された。パリのモルグ街で、人間離れした怪力で母娘が殺される事件が起きる。しかも現場は密室だった。謎の事件の解明に、オーギュスト・デュパンが乗り出す。史上初の推理小説とされている。
Amazon内容紹介より
史上初の推理小説、密室殺人を扱った最初の推理小説といわれている本書。
青空文庫で無料で読むことが出来るので、気になった方はぜひ読んでみてください。
五十ページにも満たない短編小説ですので、一時間もせずに読むことが出来ます。
ただ昔の小説なだけあって、表現一つ一つが耳慣れない、くどいと感じることもありますが、それが推理小説の醍醐味だったりもするので、一見の価値はあると思います。
さて、肝心の内容についてですが。
探偵役のオーギュスト・デュパンが一方的に話すのですが、彼が話すまで提示されない証拠も多数ありますので、読者による推理はまず不可能です。
またその真相もかなり現実離れしています。
賛否両論あると思いますが、僕は頭の中でその様子がありありと思い浮かべることが出来たので、腑に落ちたというか、非常に面白いと感じました。
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
事件の概要
パリのモルグ街に一軒の家屋があり、そこにレスパネエ夫人とその娘・カミイユ・レスパネエ嬢が住んでいました。
ある日の深夜、家屋から悲鳴が聞こえ、憲兵や近隣住民が中に入ると、悲鳴の聞こえてきた四階の部屋はひどく荒らされていました。
さらに娘の死体は頭部を下にして煙突の中に押し込められていて、死因は絞殺です。
また中庭には夫人の死体が横たわっていて、起こすと頭部は落ち、人間業とは思えない力で無数の傷をつけられていました。
証言
多くの人物が証言していますが、重要な部分だけ抜粋してまとめると以下の通りです。
・二人は隠遁的な生活を送っていて、頻繁に出入りする人間はいなかった。
・複数の人間が、言い争う二つの声を聞いていて、一つはフランス人の言葉だったと証言が一致。一方、もう一つの声は証言者によってバラバラで、少なくともフランス人が聞き取れない言語で、男女は判別がつかず、声高くて速くて高低があった。
・夫人は死亡する三日前に四千フランを銀行から引き出していたが、事件後もお金はほとんど手付かずだった。
・一同が家屋の階段をのぼっている間に、人の降りていけるような通り道は裏には一つもない。表からは誰も犯人を目撃していない。
・娘の死体は四、五人が力を合わせなければならないほどの強い力で煙突の中に押し込まれていた。
・娘の喉についてる痕は明らかに指によるもの。
・夫人の死体は恐ろしく切られ、複数個所の骨が多少、もしくはひどく砕けていて、非常に力のある男が重い鈍器を使用して初めてつけることの出来る傷であり、女性ではどんな方法をとってもそんな傷をつけることは出来ない。
・夫人の喉は切られていて、たぶん剃刀で切られた。
パリの警察は以上のような証言を得ても事件の真相に辿り着けず、途方に暮れていました。
現場を見て浮かび上がる真実
この物語では、名前の登場しない語り手が、ある日、モンマルトルの図書館で偶然知り合い、現在はパリの古びた家で一緒に暮らすオーギュスト・デュパンの推理を聞くという形式で進行していきます。
デュパンは警察の手法ではこの事件は解決できないと断言し、知り合いの警視総監の許可をとり、モルグ街の現場を調査します。
その後、新聞社に寄りますが、それから翌日の昼頃まで事件については触れずにいました。
そしてデュパンは、犯行にいくらか関与している一人の人間を待っているのだとピストルを用意し、その人物が来るまでの間に語り手に事件の真相を伝えます。
まずは証言があやふやだった二つ目の声について。
誰も言葉を聞いたとは証言していないのがカギだといい、後に重要な証拠となります。
また犯人の逃走経路について。
事件当日、目撃者一同が階段をのぼっていた時、犯人は娘の死体が見つかった部屋、もしくはその隣の部屋にいたことは明らかですが、秘密の通路なんてものはありません。
部屋から廊下に出る扉は二つとも錠がかかっていて、煙突は上にいくと猫でさえ大きいと通り抜けることはできません。
すると、残されたのは二つだけになり、不可能と思えてもどちらかから脱出したと考えないと辻褄があいません。
そこでデュパンが念入りに調べると、どちらの窓にも隠しバネがあることを発見。
さらに窓を固定する釘に注目すると、一つだけ実は釘が中で折れていて、開くことが判明。
犯人はここから脱出したことになります。
そこからの逃走経路ですが、五フィート半(165センチほど)離れたところに避雷針があり、危険ですがそこから侵入、脱出したことが分かります。
次に動機について。
もし金銭が目的だった場合、夫人が三日前に引き出した四千フランに手を出さないのはおかしい。
次に犯行の特異性について。
現場には頭の皮の肉がついた二、三十本の髪の毛があり、その行為には並々ならぬ力が必要です。
また、ただの剃刀で頭部が胴から離れるほど切るという残忍性も異常です。
夫人の体はその他にも多くの打撲傷がありましたが、これは簡単で、窓から中庭に落ち、中庭の舗石に打ち付けたのです。
考えれば簡単なことですが、窓が開かないと決めつけた警察はその考えに行き着くことは出来ませんでした。
さらにデュパンは現場で、夫人が固くつかんでいた犯人の髪の毛を提示しますが、それはどう見ても人間のものではありません。
また娘の喉についた指の痕についても、どうやっても人間の手ではつけることが出来ません。
そこでデュパンはとある記事を語り手に見せますが、そこには東インド諸島に棲む大猩々(オランウータン)について書かれていて、語り手はデュパンはの言いたいことを理解します。
つまり犯行に及んだのはオランウータンだったのです。
それなら、指の痕も証言にあった声も、そして人間離れした犯行についても説明がつきます。
ここまで理解した上で、なぜ昨日、デュパンは新聞社に立ち寄ったのか。
それは水夫たちがよく読む新聞にオランウータンを捕獲したから、持ち主は受け取りに来てほしいという内容の記事の掲載をお願いするためでした。
なぜオランウータンの持ち主が水夫だと分かったのか。
それは、デュパンが避雷針の下でリボンの切れ端を見つけ、それは船乗りしか滅多に結わえない、またマルタ人独特の結い方をしていたからでした。
デュパンはこう考えます。
持ち主は殺人事件の加害者が自分のオランウータンだと知っていますが、オランウータンは売れば大金になるため、自分は無実だと言って受け取りに来ることを。
そして、事件がおさまるまでオランウータンを隠してしまえば、誰にも真相は突き止められないだろうと。
結末
デュパンが話し終えると、彼の予想通り、一人の水夫がやってきて、自分がオランウータンの持ち主だと言います。
それに対してデュパンは、引き渡す見返りに事件について知っていることを一つ残らず話すよう提案。
水夫は一度暴行に移ろうとしますが、すぐに顔色を悪くして椅子に座り、知っていることを全て打ち明けます。
彼は航海の途中で寄ったボルネオで仲間と一緒にあのオランウータンを捕獲。
仲間は死んだため、オランウータンは彼一人のものになります。
水夫はなんとかオランウータンを自宅に入れることに成功しますが、殺人事件のあった夜、オランウータンは剃刀を持って逃走。
水夫はあとを追いかけ、オランウータンはモルグ街のあの家に侵入。
脱出経路となったあの窓から中を覗くと、オランウータンはすでに犯行に及んでいました。
その後、オランウータンは自分を見る水夫を見つけ、罰を受けるようなことをしたのだと恐怖を覚えます。
そこで部屋を荒らし、犯行を隠すために娘の死体を煙突に突っ込み、それから夫人の死体を中庭に投げます。
水夫はというと、夫人の死体を投げるために窓に近づくオランウータンに恐怖し、逃げ出したのでした。
証言者たちが聞いたフランス人の声というのは、彼のものだったのです。
こうして全てが明らかになりました。
その後、オランウータンは水夫自身の手で捕獲され、植物園に非常に大金で売られるのでした。
おわりに
ミステリー好きであれば外せない歴史的作品だと思います。
また基本的なミステリーの魅力が短い中に凝縮されていますので、あまり読んだことはないけれどミステリーに興味があるという方にもおすすめです。
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