『ネバーランド』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
舞台は、伝統ある男子校の寮「松籟館」。冬休みを迎え多くが帰省していく中、事情を抱えた4人の少年が居残りを決めた。ひとけのない古い寮で、4人だけの自由で孤独な休暇がはじまる。そしてイブの晩の「告白」ゲームをきっかけに起きる事件。日を追うごとに深まる「謎」。やがて、それぞれが隠していた「秘密」が明らかになってゆく。驚きと感動に満ちた7日間を描く青春グラフィティ。
「BOOK」データベースより
冬休み、それぞれの事情で男子校の寮『松籟館(しょうらいかん)』に残った四人の少年たちの秘密が徐々に明かされていく物語。
今でいうBL的なテイストもあり、二十年近く前に出版された時代の流れを感じつつも色褪せているという印象は全くありませんでした。
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
第一日
迎えた冬休み。
菱川美国(ひしかわよしくに)は『帰る』という女々しい言葉を嫌い、友人の篠原寛司が残ることもあって通う男子校の寮・松籟館に残ることを決意。
他にも依田光浩も残り、さらに寮住まいではありませんが瀬戸統もたびたび顔を出します。
美国と光浩は食材の買い出しのために街に行くと、挙動不審な様子の統を見つけます。
統は二人に気が付くと、いつものお調子者の一面を見せ、一緒にクリスマスを祝おうと後で松籟館に行くことを約束して別れ、美国たちは松籟館に戻ります。
食事は光浩が担当し、食べながら話題は寛司の抱える問題になります。
寛司の両親は性格の不一致を理由に離婚を考えていますが、どちらも寛司を自分の元に置きたいと躍起になっていました。
家にいるとどっちを選ぶのだと聞かれ、それが嫌で寛司は今年、松籟館で過ごすことを決めました。
そして、彼はどちらも選ばず、一人で生きていくつもりです。
食事も落ち着いた頃、戸締りをしようと席を立つと足音が聞こえ、バットマンのお面をかぶり、ピストルを握った男が現れます。
美国は恐怖を覚えますが、それは統でした。
四人は未成年ですがお酒を飲みながら普段とは違う生活を楽しみます。
しかし、統が唐突に懺悔したいといい、その顔は真剣です。
ただ重たそうな話が予想されたため、光浩は話に一つだけ嘘を混ぜてほしいと提案。
そうすることによって重たい話だとしても、受け手がこの部分は嘘だと思えば少しは気が楽になります。
統はそれを了承し、懺悔を始めます。
彼は最近、子どもの頃に亡くなった母親の幻を見て、精神的に参っていました。
見えるようになったきっかけは、一週間前に統が家で見つけた父親の電気カミソリです。
子どもの頃、父親に似た統は母親から虐待を受けていました。
そんな彼がある日、学校から帰ると、母親は風呂掃除をしていて、統が帰ってきたことには気が付いていません。
洗面台には電気カミソリが置いてあって、統は衝動的に手にとってスイッチを入れます。
しかし、その後の記憶は不明瞭で、緑色の手がカミソリをつかみ、バチっという音と重たいものが倒れる音が聞こえます。
気が付くと、統は通学路の途中にいて、改めて家に帰ると近所の人が集まっていて、ようやく母親が死んだことを理解します。
このことを思い出したのが一週間前です。
統は相当追い詰められていて、すでに家でワインを飲んでからきていたため、話し終えると眠ってしまいます。
本人は否定していますが、両親が信者ということもあって相当キリスト教の影響を受け、自殺にこだわっていることは一目瞭然です。
水を差され、この日はこれでお開き。
ところが翌日、目覚めた統が怒りを露わにして誰だよと三人に鋭い視線を向けます。
部屋には、シーツを縛って人間に似せた人形にバットマンのお面が被せられ、首釣りに見立てるように天井からぶら下がっていました。
第二日
統はそれを昨日の懺悔に対する答えとして三人のうちの誰かがやったのだと勝手に解釈し、松籟館を飛び出します。
三人に心当たりはなく、光浩は統が自分でやったのだと彼の情緒不安定な部分を指摘。
統に対する嫌悪感が見られます。
また統の懺悔についても話が及び、どの部分が嘘なのか議論しますが、寛司は全て本当で、光浩の提案を受けるという嘘をついたのだと指摘。
今夜、統はまた来ると確信していて、その時に詳しい話を聞くことにします。
午後は三人とも部屋に戻って勉強することにしますが、美国は不意に部屋の外から小さな足音を耳にし、部屋を出ると人影が見えます。
よく見えませんが、学帽に学生服を着ています。
しかし、外に出る扉には鍵がしてあって、寛司も光浩をずっと部屋にいました。
美国が二人にそのことを話すと、思い出されるのは去年、入学して半年で心不全で亡くなった同級生の岩槻繁久のことでした。
もともと虚弱体質で不整脈のため、ペースメーカーを埋め込んでいた繁久ですが、本人の強い希望で寮生活を送っていました。
一方、繁久は華奢で顔が整っていたので、男子校という環境の中で女役を振り当てられてしまい、当時三年生だった高木という真正の同性愛者から被害にあっていたのではという噂もあります。
しかし、真実は分かりません。
亡くなった当日、繁久は誰かと約束をしていたといわれていますが、相手は分かりません。
また亡くなった後から、繁久の幽霊が出ると噂になっていました。
それでこの話は終わり、今度は美国の恋愛について。
彼は交際していたK女の但馬紘子を振り、学校内はその話題で持ち切りでした。
二人は彼にその真意を聞きますが、美国はこれ以上は続かないと思ったからとだけ言って、それ以上は答えません。
この話も流れ、夕飯の時間に。
寛司の予想通り、統がやってきます。
すでにお酒が入っていて、今朝のことも気にしていない様子です。
低気圧が近づいて外の天気が荒れる中、四人はゲームをします。
五回負けると『告白』か『実行』を選ばなければならず、最初に餌食になったのは統でした。
統は告白を選択。
寛司は彼を代弁し、懺悔について言及します。
彼は、統は当時のことをはっきり思い出した上でわざと省いたと指摘。
緑色の手は母親のもので、彼女は掃除のためにゴム手袋をしていた、つまり自殺したことになります。
統は肯定も否定もしませんが、どうやらこれが真相のようです。
また他の二人も母親の幽霊が見えることについて、統に謝りたいのではとフォローし、この問題は無事に解決します。
ゲームは続行となりますが、その時、松籟館の電話が鳴ります。
美国が出ると、相手は別れた紘子でした。
第三日
泣いている紘子は自分の悪かったところを美国に聞きますが、美国は自分のせいであって紘子のせいではないと答え、電話を切ります。
翌朝、統が学校で、光浩が何度も年配の女性と会っていたことを指摘。
光浩はただの親戚だとあしらいますが、怒っている様子。
しかし、統は手を握っていたから付き合っているだとからかい、二人は一触即発の状態に。
なんとか美国と寛司が仲裁に入って事なきを得ますが、光浩は部屋に閉じこもってしまいます。
しかし、統は懲りておらず、絶対にゲームの罰で聞き出すのだと一度退散。
残された美国と寛司は、その女性について話します。
二人も目撃したことがあって、寛司いわくおそらく父親の本妻だといいます。
光浩は妾の子で、父親も母親も亡くし、光浩いわく、本妻の女性に飼われているのだといいます。
光浩からは、彼女への憎しみが感じられました。
夜になると発言通り、統が戻ってきて、光浩も機嫌を直してゲームをします。
ところが負けたのは美国でした。
美国は告白を選択。
当然、話は紘子とのことになります。
美国がうまく事情を説明できずにいると、光浩から女が怖いのではと言われ、美国は小さいときに女性に誘拐されたことを明かします。
相手は父親の会社の部下で、不倫相手。
美国は疑問を感じつつも女性と時間を過ごしますが、自分と一緒でいいのかと聞かれた時、母親のことを口にします。
すると女性の感情は高ぶり、爪で美国の額を傷つけ、血が流れます。
その後、女性が連絡して、父親が迎えに来て誘拐は終わります。
それから両親は不倫のことでギクシャクしますが、今は落ち着いたといいます。
それ以来、夢に女性が出てくるようになり、女性が怖いのだといいます。
美国はそのことに気が付いておらず、紘子との交際も順調でしたが、いざ行為に及ぶとなった時に紘子に女としての本性を見てしまい、ダメでした。
話が終わると、光浩は突然、繁久と最後に待ち合わせていたのは美国だと言い出します。
第四日
翌日、学校のどこかにあるというホットプレートを求め、四人は二手に分かれて校内を探索します。
同じペアになった美国は光浩は昨日の話をし、美国はあの日、繁久に呼び出されていたが行かなかったことを告白します。
光浩は、繁久は美国に好意を持っていたと言い、美国もそれには気が付いていました。
しかし、美国にとってそれは恐怖であり、行かなくて正解だったのと光浩もフォローします。
結局、ホットプレートは教職員が押収した後で、借りることができました。
四人は買い出しに行きますが、そこで寛司の両親に出くわします。
二人は寛司を説得するためにわざわざ松籟館を訪れ、教職員からここにいることを聞いて来たのです。
松籟館に戻ると、寛司は我慢できずに自分の意思を尊重してほしいと怒鳴り散らし、唯一の居場所である松籟館に踏み込むことを拒否します。
その夜、寛司を抜いた三人は寛司の両親をもてなし、距離を縮めます。
後から寛司も合流し、円満とまではいかずとも少しは関係に改善が見られ、両親は帰っていくのでした。
第五日
四人でテニスを楽しみ、夜はお馴染みとなったゲームをして、今日は統が冴えています。
罰ゲームとは別に怖い話をしようといいます。
それぞれが自分の怖いものを挙げる中、光浩が挙げたのは『開いたドア』でした。
正確にはドアの向こうの暗闇に潜む、光浩とは血の繋がらない本妻のことです。
光浩はこれまで自分のことを話さなかったにもかかわらず、自分が妾の子どもであることをはじめ、自分の生い立ちについて話します。
光浩の両親は高校の同級生で、付き合っていましたがなかなか結婚はしませんでした。
ところが、百貨店の後継ぎだった父親に政略結婚の話が持ち上がり、その相手が本妻である敬子です。
父親は光浩の本当の母親と一緒になることを望んでいましたが、会社のために母親と別れ、敬子と一緒になります。
光浩が生まれたのはその後です。
父親は結婚して一年も経たないうちに光浩の母親とよりを戻したのです。
ところが光浩が中学一年生の時、両親は心中し、残された光浩は敬子に引き取られます。
しかし、敬子が光浩に抱いていたのは憎しみでした。
十三歳の時、光浩は敬子の部屋に呼ばれ、初めて強姦されます。
それ以降、光浩は敬子の元を離れたい一心で勉強し、この学校に入ったのです。
話し終えると光浩は部屋に戻り、三人は興味本位で話を聞こうとしていたことを後悔。
特に統は自分自身に怒りを覚えていました。
第六日
翌日、早く目が覚めてしまった美国はランニングをしようと準備し、気が付いた三人もついていくことにします。
戻ってくると年末ということで年賀状の話になり、統が誰に出すかは分かりませんが、美国は紘子に、寛司は両親に、光浩は彼を気にかけてくれた中学の担任に年賀状を書くことにします。
統は一度自宅に戻り、三人は松籟館に戻ります。
すると校門のところに怪しげな男がいて、それは統の父親でした。
父親はアメリカ行きの航空券を統に渡してほしいといい、帰っていきます。
その夜、やってきた統にそのことを話すと、年明けにはアメリカに引っ越すことが判明。
大晦日に旅立つのだといいます。
四人は別れを惜しむように飲みます。
すると話題は一日目の吊るされた人形のこと、それからどうやって統が戸締まりされた松籟館に入ったのかについて。
すると、統は代々卒業生から伝わる秘密の出入口の存在を明かします。
また人形について、作成したのは寛司でした。
光浩はあの日、統のうめき声を聞いていて、彼が寝惚けて天井の照明に吊るしてしまったということで話はまとまります。
しかし、統と寛司が寝静まった頃、人形を吊るしたのは自分だと光浩が告白。
正確には目を覚ました統の目の前に吊るすも、統が寝惚けて暴れた結果、人形が引っ張り上げられて吊るされてしまったのです。
第七日
三人は大掃除をし、旅立つ統のために写真を撮ります。
統が松籟館に来ると四人で撮ります。
と、ここで、来客用の駐車場に置かれた高級車。
職員室に五十歳くらいの男性がいて、名前は島田、光浩の父親の会社、そして後見人の弁護士です。
島田は敬子の手紙、もとい遺言を渡しにきたのです。
敬子は病気で二十五日に亡くなっていました。
光浩が受け取った封筒を開けると、中から光浩の父親の写真が出てきて、手紙には敬子なりの愛情が綴られていました。
当然、光浩には到底受け入れられるものではなく、どこかに行ってしまいます。
これから島田は後見人となり、彼が独立するまで面倒を見てくれることになります。
また、これまでのことを謝りつつも、光浩が友人に恵まれたことを喜んでいました。
三人は光浩の大切さを改めて認識。
川べりにいる光浩を見つけると、島田が帰ったことを報告。
光浩は敬子に復讐するという生きる動機を無くしたといいつも、その顔はどこか晴れやかでした。
寛司は自分たちの家に帰ろうといいます。
光浩は島田の連絡先と敬子のお墓の場所を教えてもらい、思います。
今は無理でも、いつか行ける、そしてその時は一緒に行ってほしいと。
美国はもちろんと答え、自分も年が明けたら紘子に会いに行こうと決意するのでした。
結末
翌朝、三人は駅まで統を見送りに行きます。
帰って郵便受けを見ると、中には統から三人に宛てた三枚の年賀状が入っていました。
文面は同じでしたが、光浩のものにだけは追記があり、光浩は冗談じゃないといいつつも、その顔は笑っていました。
おわりに
表面的には美しい少年たちのやり取りを描きつつも、裏に隠された悩みがほどけていくところもしっかりと描かれていて、とても読了感が良かったです。
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なかなか手に取れない数千円、数万円するような本を読むのもアリ。
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