『違国日記 10巻』あらすじとネタバレ感想!
「なりたいものになりなさい」と言われても
人見知りの小説家と姉の遺児(高2)がおくる年の差同居譚
「なんでそんなに決められるの?あたし、何にも決まんないよ」朝は高校2年生の秋を迎え、進路について考えあぐねていた。
自分の将来のために努力するえみりや千世、才能がある神田と違い、やりたいことなんて湧き出てこない。
“何もない”ことに凍える先はーー?未来を探す船、難航中の第10巻!
Amazon商品ページより
シリーズ第十弾となる本書。
前の話はこちら。
節目となる10巻ですが、朝の抱える悩みがいかに大きいかが描かれ、決して明るいだけではない話になっています。
今回も心理描写から何気ないやりとりに至るまで丁寧に描かれていて、本当に見ごたえ抜群でした。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
page.46
朝は進路希望調査を前に、悩んでいました。
槙生からはやりたいことをやるよう言われ、それは母親からも言われた言葉でした。
しかし、やりたいことは見つからず困っていると、一人黄昏ている千世を見つけ声を掛けます。
彼女もまた進路に悩んでいて、大丈夫じゃないまま生きていくことを半ば覚悟しているようでした。
千世は朝には決して何もないなどとは思っていませんが、朝にはそれが見つけられません。
page.47
軽音部のミニ公演で演奏を披露する朝。
槙生が評価すると、朝は今が人生の絶頂期なのではと考えます。
すると槙生はどんなことも忘れていくと話し、ここから彼女の過去話に入ります。
槙生は高校生の頃、何か面白いことはないかと探していて、それが見つからない人生に退屈していました。
ここでは、槙生の青春時代におけるうまくいかなったこと、ちょっとした転換点などが描かれています。
page.47.5
喫茶店で会うえみりとしょうこ。
二人はちょっとした未来のこと、十五年後のことなどを他愛なく話し合います。
page.48
朝の母親の過去について描かれたエピソード。
体が弱く、病気がちだったこと。
周囲に完璧を求められ、疲れていたこと。
自由気ままでのちに困るだろうと予想していた槙生が小説家としてデビューし、それに対して何らかの気持ちを抱いている様子。
槙生の家庭の複雑さがより一層深まる内容でした。
page.49
朝はいまだに何もないことを悩んでいました。
すると、友人や先生から何もないなんてないこと、誰もが価値と自由を持っていることを教えてもらいます。
解決しない問題についても、言い変えながらずるく付き合っていく。
朝はこの何もないことがいずれ価値を持つ可能性を知り、少しだけ楽になります。
page.50
それでも朝はまだ悩みます。
ある日、槙生が作業する部屋で眠りにつきます。
違う国の女王とかたすみで眠るこの時間。
もうすぐ子どもでいられなくなるのに、いつまでそれが許されるのだろう。
そう思って、一人涙を流します。
感想
なりたいものになりなさい。
大人になり、子どもを持ったことで、この言葉がいかに無責任かが分かります。
無責任というか、無関心というか。
自分がやりたいことを見つけたのは二十五歳頃で、それまではただなんとなく社会人になって、ただなんとなく過ごしていれば良いんだくらいに思っていました。
夢も何もありません。
ただ幸いというか、僕はそういった大それたものがなくてものほほんと幸せに生きてこれたので、恵まれていたのかもしれません。
その点、なりたいものが見つからなくて、何かないかと焦る朝は本当に大変です。
今なら彼女の悩みに共感できるし、自分だったら思っていても『なりたいものになりなさい』なんて簡単には言えません。
まあ、胸の内ではそう思っているんですけどね。
でも、悩んだことが糧となっていつか明るい未来に繋がると信じたいし、朝の近くには槙生という強い味方がいます。
これからもきっと悩むだろうけれど、頑張れ朝。
そんな気持ちでずっと読んでいました。
あと最後のシーンが、違国日記1巻に通ずるものがあり、感慨深かったです。
おわりに
節目となる巻数ですが、朝の人生にはまだまだ困難が待っていそうです。
それでも、彼女が自分だけの答えを見つけてくれることを信じて、しっかり次の話も見届けたいと思います。
次の話はこちら。
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