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『仮面病棟』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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療養型病院に強盗犯が籠城し、自らが撃った女の治療を要求した。事件に巻き込まれた外科医・速水秀悟は女を治療し、脱出を試みるうち、病院に隠された秘密を知る―。閉ざされた病院でくり広げられる究極の心理戦。そして迎える衝撃の結末とは。現役医師が描く、一気読み必至の“本格ミステリー×医療サスペンス”。著者初の文庫書き下ろし!

「BOOK」データベースより

文庫書き下ろしの医療ミステリーである本書。

坂口健太郎さん、永野芽郁さん出演で映画化され、話題になりました。

映画の公式サイトはこちら

エンターテインメント性が強く、良い意味でサクサク読めるのでミステリーが苦手だという方にもおすすめです。

逆に本格ミステリーを求める方からすると物足りない可能性もあるので、その点だけご注意ください。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

占拠

外科医の速水秀悟は泌尿器科の先輩医師・小堺に頼まれ、療養型の田所病院の当直を代わることになりました。

田所病院は身寄りのない患者を積極的に受け入れ、その代わりに過剰診療をすることで家族に文句を言われれることなく必要以上の医療費を稼いでいました。

患者は容態は安定しているため、秀悟は基本的に時間を潰せば済むはずです。

ところが、今日は違いました。

秀悟は看護師の東野に呼び出されて一階に行くと、そこにはもう一人の看護師・佐々木の他に部外者が二人いました。

一方は不気味なピエロのマスクを被った男で、もう一人は腹から血を流す若い女性・川崎愛美でした。

ピエロは金銭目的でコンビニに押し入り、人質として近くにいた愛美を人質にとります。

ところが愛美が抵抗したため拳銃で怪我をさせてしまい、治療と隠れるために田所病院を訪れたのでした。

秀悟は自分やスタッフ、愛美と患者の命を守るために愛美の傷を処置します。

驚くべきことに、最新の医療設備が整った手術室だったため、処置自体は無事に終わりました。

しかし、ピエロは夜が明けるまで病院を出るつもりはなく、長い夜が始まりました。

身元不明の患者

院内に他のスタッフはいないはずでしたが、院長の田所が残っていて、ピエロの隙をついてゴルフクラブで倒そうとします。

しかし、寸前のところでピエロに気が付かれてしまい、銃弾で右足を負傷してしまいます。

ピエロはあまり頭が回らないのか行動に一貫性がなく、田所は患者の見回りを理由に行動の自由を求めます。

交渉の結果、精神病院の名残である鉄格子を階段におろし、一階でピエロが階段とエレベーターを見張り、残りの全員は上の階である程度の自由を得ます。

秀悟は警察に通報することを提案しますが、田所は反対。

おまけにピエロが妨害電波を発する何かを持っているのかスマホは圏外で、田所が電話線を切ってしまったことで固定電話も使えず、通報という選択肢はなくなってしまいます。

田所と二人の看護師が患者の見回りに向かう中、秀悟は愛美と言葉を交わし、仲を深めていきます。

秀悟たちはうめき声を聞いて向かうと、そこには手術後の縫合糸を切られた患者がベッドから転げ落ちていました。

患者は身元不明で、新宿で見つかった十一番目の身元不明患者という意味で『新宿11』と名付けられていました。

騒ぎを聞きつけた三人は患者の処置を行い、秀悟はこの患者はなんなのかを聞きます。

田所は説明しますが納得いくものではなく、しかし田所はそれ以上の詮索を拒む意思が見られました。

その後、秀悟はナースステーションでこの患者のカルテを見つけ、不可解な点を見つけます。

殺人

『新宿11』は発見された時点で麻痺と失語症が見られること、一昨日の夜に腸閉塞で手術を受けたことが分かりました。

しかし、そこに疑問点がいくつもありました。

療養型である田所病院でこのような手術は基本的に行いませんし、症状が出てから手術まで三十分と判断が早すぎます。

そして、その時に病院にいたのは今夜この病院に田所、東野、佐々木で、偶然というにはできすぎています。

さらにファイルには特定の患者を調べろと指示するメモが挟まれていて、秀悟と愛美はその指示に従って該当のカルテを見ます。

すると、指定された七つのカルテには共通点がありました。

全員が緊急手術を受けていること、執刀医と看護師が新宿11と全て同一であることです。

秀悟は田所たちへの疑いの目を強めていきます。

その後、田所は三千万円という大金と引き換えにピエロに出ていくよう要求しますが、それは叶いませんでした。

秀悟は愛美経由で、『もう一人いる』、『院長に気をつけろ』と佐々木から忠告されたことを聞きます。

ピエロは時間を潰すといって愛美を連れて行きますが、秀悟の交渉によって事なきを得ます。

しかし、その間に大変なことが起きていました。

佐々木がナイフで刺されて亡くなっていたのです。

秘密

一同はピエロが佐々木を殺害したのだと考えますが、田所はそれでも通報に反対します。

秀悟は冷静に考え、ピエロは佐々木の殺害された時間、必ず秀悟か愛美と一緒だったため、殺害は不可能であるという結論に至ります。

佐々木の忠告を思い出すと、もしかしたらまだ別の人間が病院にいるのかもしれない。

それか、院長が犯人なのかもしれない。

答えは分からず、秀悟と愛美は警察に通報することを決め、唯一電話線が生きていると思われる一階の手術室を目指します。

上の階で物音を立ててピエロの注意を逸らすのはいいとして、問題は一階をふさぐ鉄格子の南京錠です。

すると、愛美はピエロとの先ほどのやり取りで南京錠の鍵を入手していたため、それを使って一階に潜入。

秀悟は愛美だけ逃がし、自分は手術室に向かいますが、そこも電話線が切られていました。

そして、裏口が針金で封鎖されていたため、愛美も脱出できませんでした。

そうしているうちにピエロが戻ってきてしまい、二人は逃げ場所を探すと、手術室で秘密のエレベーターを発見。

それを使って五階に上がると、奥にある扉を開けます。

そこはホテルのような一室で、合成麻薬で鎮静をかけられた子どもが眠っていました。

明らかに二、三日以内に手術を受けていて、秀悟は新宿11を思い出します。

子どもの腕には腎不全の患者が透析を受けるためのシャントが作られていて、秀悟はカルテに記載された腎機能を示すクレアチニンが低値であることに気が付き、田所が隠しておきたかった秘密を知ります。

田所病院では、大金と引き換えに違法な腎移植を行っていたのです。

ベッドに寝ているのは移植を受けたお金持ちの子どもであり、身元不明の患者から腎臓を抜いてもバレるリスクが低い。

そして腎移植には田所、東野、佐々木の三人が関与しているということです。

共謀

ピエロが下にいるため待機していると、田所と東野も現れて二人は秀悟たちに驚きます。

田所は秘密が露呈してもまだ隠そうとし、秀悟は大金の引き換えに黙っていることを選択。

愛美は秀悟を見損ない、険悪になります。

その後、ピエロも現れますが、意外な真実が判明します。

彼は佐々木を殺害していないというのです。

そしてサイレンの音が聞こえ、警察が病院を取り囲んでいました。

誰かが通報したのです。

誰にも状況が分からない中、警察の交渉人から田所の携帯に電話が入り、秀悟が窓口となって警察と話をします。

ピエロは言いくるめられないようになるべく電話に対応しませんが、秀悟は勝手に食事を要求し、ピエロは仕方なく田所と東野に裏口まで食事をとりに行かせます。

田所はその間に、移植患者のデータが保管されたバインダーを処分しようと考えますが、そこにピエロと秀悟、愛美が現れます。

実はピエロと秀悟が口裏を合わせ、田所が最大の秘密ともいえるデータを取りに行くようわざと泳がせたのです。

真実

金銭目的であるピエロにが、なぜこんな協力をしたのか。

それは、目的は金銭ではなく腎移植の秘密を世間に暴露させることにあったからです。

警察に通報したのはピエロであり、秀悟たちが調べるよう仕向けるためにメモを用意したのも彼です。

コンビニに強盗に入ったこと、愛美を拉致したのも、世間の目を注目させるためでした。

秀悟が大金と引き換えに田所の交渉に応じたのも、田所がやけになって思いがけない行動に出ないようにするためでした。

ピエロは、大事な恋人を腎移植によって亡くしたのだといい、田所の持つバインダーを要求します。

しかし、田所は極限状態でおかしくなっていました。

手術室からとったメスでピエロを切り裂くと、拳銃を取り上げて秘密保持のためにこの場の全員を殺害しようとします。

その前に田所はピエロのマスクをとりますが、その顔を見て田所と東野は驚愕します。

その隙に、秀悟は賭けに出ました。

愛美を逃がすと、石油ストーブを蹴り倒し、ライターで火をつけ火災報知器を反応させます。

大量の白い粉が舞う中、秀悟の体は突然痙攣し、意識を失ってしまうのでした。

真犯人

秀悟が意識を取り戻すと、救護隊員によって救助された後でした。

彼らは銃声を聞いて突入しましたが、生きていたのは秀悟だけで、他の三人は拳銃で死亡していました。

そして、愛美にいたっては彼女がいたという痕跡すら見つけられていません。

秀悟は事情聴取でありのままを話しますが、警察は愛美の存在だけが納得できませんでした。

それまでの調べで、ピエロの正体が田所病院に勤めていた理学療法士・宮田勝久であることが判明しています。

ピエロのマスクには小型のスピーカーと受信機が取り付けられていて、誰かと連絡をとっていたことが分かっていますが、その相手は分かりません。

警察はピエロが田所と東野を殺害し、それから拳銃で自殺したとして事件を終わらせようとして、秀悟もその場で反論できませんでした。

しかし、後になって気が付きます。

警察は入院患者六十五人の安全が確認できたといっていましたが、それは満床を意味します。

ところが、秀悟は一つだけベッドが空いていたことを確認しているため、そんなはずはありません。

その瞬間、全ての謎が解けました。

愛美はピエロが拉致してきたのではなく、元から田所病院の患者で、ピエロの共犯者だったのです。

メイクが濃かったのもスタッフの目を欺くためで、しかし佐々木に気が付かれてしまったのです。

佐々木は『もう一人いる』、『院長に気を付けろ』ではなく、『あなたこの病院の患者じゃない?』と言っていたのです。

そこで愛美は、トイレに行くと見せかけて佐々木を殺害したのでした。

ピエロも含めて、残りの三人を殺害したのも愛美です。

残る問題は、秀悟が処置した愛美の傷ですが、これにも説明をつけることができます。

腎臓を摘出された患者の中で、後に昏睡状態から意識を取り戻した患者が一名だけいて、それが愛美だったのです。

愛美は腎移植でできた手術痕と同じ場所を宮田に撃たせ、拉致被害者であることを強烈に意識づけるとともに、忌まわしい手術痕を消し去りたかったのです。

愛美は初め、記憶障害で手術痕は元々あったと信じていましたが、やがて記憶を取り戻して腎臓を摘出されたことを知りました。

彼女は復讐に燃え、その美しさで宮田を利用し、計画を実施したのでした。

川崎愛美という名前は、彼女につけられた『川崎13』という呼称からとられたことに気が付く秀悟。

『1 3』→『I 3』で、『アイ ミ』から『愛美』です。

結末

これで終わったかのように思われましたが、秀悟は腎移植には医師が足りないことに気が付きます。

田所一人では腎移植は行えません。

そこで事件当日の勤務を思い出し、本来当直の予定だった小堺こそが協力者であることに思い至ります。

彼なら泌尿器科医であるため、腎臓のエキスパートで申し分ありません。

愛美は腎移植に関係のない秀悟を見逃し、残った小堺の命をまだ狙っているのではないか。

そう思って勤務先の調布第一病院に向かいますが、小堺はすでに殺害された後でした。

病院の周りは野次馬で溢れていました。

警察の話では、移植患者のデータの一部が持ち出されていて、それが愛美の腎臓が提供された相手のデータであれば、まだ復讐は終わっていないことになります。

途方に暮れる中、秀悟は人波の中に髪型、髪色を変えた愛美を見つけます。

大声で名前を呼びますが、愛美は一瞬足を止めた後に歩き出し、その姿は消えてしまうのでした。

おわりに

怒涛の展開で、三百ページが本当にあっという間でした。

分かりやす過ぎるという意見もありますが、ミステリーとしての様式美が詰まった作品で、分かっていてもページを捲りたくなる魅力がありました。

知念さんの作品は読書初心者の方にもおすすめしたいので、ぜひ先入観にとらわれずに読んでみてください。

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