『私の少年 6巻』ネタバレ感想!あらすじから結末まで!
聡子と真修は東京で再会したものの、二人の思いはすれ違い、お互いを傷つけあってしまう。だが、そんな二人に一条の光が差し込もうとしていた。「このマンガがすごい!2017」<オトコ編>第2位「第3回次にくるマンガ大賞」第3位ほか各メディアで話題沸騰中、転換の第6巻!!
Amazon内容紹介より
前の話はこちら。
6巻では、知っているようでお互いをよく知らない聡子と真修がより接近します。
しかし、見えてきたお互いの気持ちにはやはり大きな隔たりがあり、相変わらず楽しい時間の中に切なさが入り混じるのが何ともいえませんでした。
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
※5巻の記事ではまゆこを漢字表記していますが、本編中はひらがなのためこの記事から『まゆこ』としています。ご了承ください。
第24話 マイク
休日、真修が家でゴロゴロしているとまゆこからラインが続々と届き、彼女は仙台を出て、真修の住む国分寺に出てきていました。
東京の地理がよく分からないまゆこのために、真修は仕方なく迎えに行きますが、元気がないことを一瞬で見抜かれ、強引にカラオケに連れて行かれます。
まゆこの想像と違い、歌のうまい真修。
まゆこが彼のスマホに入っている曲を見ていると、『ゆらゆら帝国』の曲が見つかりますが、真修の好きな曲とは少し路線が異なっていました。
それもそのはず、それは聡子が好きな楽曲だからです。
まゆこはカラオケにちなんだ聡子のエピソードを教えてくれます。
聡子はマイクを持つと鳥肌が止まらなくなり、べろべろに酔わせれば歌ってくれますが、歌詞も音程も外して、しまいには泣き出すのだといいます。
しかし、真修には聡子がお酒好きだという認識はなく、よく知らないのではとまゆこは思います。
そこで聡子をイメージした楽曲を歌ってほしいとリクエストし、真修には何曲も聡子をイメージした曲があり、そのうちの一曲を歌います。
それを聞いたまゆこは思わず吹き出して笑いますが、これが自分のイメージする聡子なのだと真修もむきになります。
そして昨日、聡子に振られたことを明かし、まゆこはカラオケをやめて、話を聞くことに。
真修は真剣なのに、自分のことを子どものように扱う聡子に不満があるようですが、まゆこはいいます。
彼の歌う聡子は神っぽいと。恋愛とうよりも、崇拝という言葉の方が適切な感情なのかもしれません。
真修のことを子どもだと思う聡子と、聡子のことを神のように見ている真修。
それは完全に上下関係にあり、フラットな会話が望めるはずがありません。
しかし、真修は知らない聡子の一面を知っても幻滅せず、むしろもっと知りたいと思っています。
そして、相手のことを知らないのは聡子も一緒で、真修は彼女のことを知りたいし、自分のことをもっと知ってほしいと願います。
これでカラオケの時間が終わり帰ろうとしますが、偶然、真修はカラオケで祖母の友人・狭山で会います。
彼女の部屋に行くと、そこにはカラオケで盛り上がっている祖母がいました。
その夜、聡子のもとにまゆこからラインが届き、まゆこ、真修、祖母が写った犬加工された写真が送られてきて、唖然とするのでした。
第25話 砂時計
冒頭、真修の家にて、共通の好きな俳優が出ている韓流らしきドラマを見て、号泣する祖母とまゆこ、そしてそれを唖然とした表情で見つめる聡子。
ここで場面は昨日の夜に戻り、帰ってきたまゆこに送ってきた写真について聡子が聞きますが、まゆこはどこまで話していいのか迷っている様子。
聡子はまゆこがどう名乗ったのか気にしていて、名前だけで名字はいっていないと聞くと、少しだけ安心します。
ここまで来たら隠しておけないと判断した聡子は、まゆこに真修の家庭事情について説明します。
まゆこから言わせればそれはネグレクトのような状態で、聡子はそこから真修を助けたいと今でも思っています。
それこそが、聡子の東京でしたいことでした。
まゆこから見た真修はそんな劣悪な環境にいるように思えませんでしたが、見えなかったり隠しているかもしれないと聡子は楽観視できません。
本来であれば真修に色々聞きたいことところですが、告白を断ったことがあり、聞ける状態ではありません。
するとまゆこは、明日も祖母に呼ばれて真修の家に行くから一緒に行こうと提案し、今日に至ります。
しかし聡子は真修の父親が家にいないかを気にしていて、まだ隠し事があることにまゆこは気が付きます。
聡子は話せ帰らされるかもしれないと思い、後で話すと濁します。
そんな聡子に、真修のことがほぼほぼ分かっていないのではと軽い気持ちでいいますが、聡子はそんなわけない、とついムキになってしまい、まゆこが引き下がります。
そして話は冒頭に繋がります。
祖母に対して、聡子はまゆこの友達として紹介され、名前も『まこと』と勘違いされてしまいます。
聡子は感じの良い祖母と、整理整頓が行き届いた部屋を眺め、真修が健やかに暮らしている様子を思い浮かべます。
しかし、まだ隠されていることがあり、それを明るみに出さなければと、意を決して口を開きます。
場面は変わり、真修のクラスの体育の授業。
小片奈緒は友達と見学していましたが、長距離走をする真修の体調が悪そうなことに気が付き、先生に事情を説明して保健室に連れて行きます。
案の定、熱があり、保険の先生が家に電話をかけにいく間、真修を見守ります。
奈緒は、前に助けてもらったからそのお返しだといいますが、真修の記憶にその時の出来事はなく、彼女の背中から悲しさが伝わってきます。
そして場面は戻り、聡子は意を決してまゆこの姉で、まことではないことを明かし、真修のことでいくつか聞きたいことがあると切り出します。
第26話 告白
多和田聡子と名乗ると、祖母は一枚の名刺を見せてくれます。
それは真修の父親に渡した聡子の名刺で、祖母は聡子が父親の知り合いだと思っています。
それに対して聡子は本当のことを話さずに、真修のサッカーのコーチをしていたことがあると嘘ではない説明をします。
前置きが終わり、肝心な部分をどう切り出そうと聡子が迷っていると、家の電話が鳴ります。おそらく学校からです。
しかし、祖母は電話に出ずに先を促し、聡子はもう一度考えます。
真修のいないところで、彼の見せたくなかった個人の事情を暴いていいのだろうか。
結局、聡子は核心をつくような話を避け、普段の食事はどうしているのかと無難な話をします。
祖母は普段作るものをつらつらと挙げ、それはさっき聡子が思い描いた真修の生活する姿と何ら矛盾していません。
しかし、祖母はここに来る前の真修の家の状態はひどかったといい、聡子は顔を上げます。
家の状態がひどかったのは父親の仕事の詰め過ぎが原因で、聡子は父親の疲れて痩せた顔を思い出します。
そこで祖母が見せてくれたのは、真修の両親、真修、弟の遼一が写る昔の写真を見せてくれます。
父親は聡子が会った時よりも多少ふっくらし、何よりみんな笑顔でした。
真修は、祖母の娘・ゆきに良く似ていて、真修は別の母親の子どもではと考えていた聡子の予想は大きく外れます。
湿っぽい話になってしまいましたが、祖母は孫のために来てくれた聡子たちに喜んでいて、聡子の胸が痛みます。
祖母が席を外す間、聡子は真修が幸せに暮らしていることが確認できて良かったといいますが、その顔は全く良かったとは思っていないものでした。
聡子は本当は良かったと思っていないのではと自分を疑い、前に椎川に言われたことを思い出します。
真修に必要とされることで、自分の価値が上がったと思っているのかもしれないと頭を抱えます。
しかし、まゆこはためらうことなく、真修の問題は解決し、それで東京でやりたかったことは終わり?と聞きます。
聡子は答えられずに茫然としますが、突然玄関から物音がして、二人は玄関に向かいます。
すると熱を出した真修が倒れていました。
聡子は彼の肩を持って階段を上りますが、その階段は最近ワックスをかけたばかりであることが判明。
真修の腕にあった痣は、階段で転んだ時にできたものだと気が付き、自分が間違った想像をしていたことにようやく思い至ります。
この時、真修と目が合いますが、熱で意識が朦朧とする彼は聡子を祖母と勘違い。
そのままベッドに寝かされ、聡子は初めて入った真修の部屋を観察します。
机には、聡子が以前あげた参考書と、その文字を追いかけるような真修の柔らかい筆跡。
これまでの色々な真修の表情が思い浮かびます。
その時、真修は起き上がり、聡子がいることにようやく気が付きます。
しかし、聡子は動じることなく、真修のためという言い訳がなくなって自分の本当の気持ちに気が付き、真修に向き合っていいます。
だめなのに、会いたかったんだよね、真修に。
そして、だからごめんといい、涙を流すのでした。
第27話 ドア
聡子の最後の言葉を夢で見た真修が目を覚まします。
夢で見ましたが、聡子が来たのは本当のことだと分かっていました。
そんな時、祖母から聡子たちがお見舞いでやってくることを唐突に伝えられ、インターホンも鳴ります。
真修は慌てて着替え、部屋の喚起をしたところ、ドアがノックされます。
しかし、聡子はドアは開けず、ドア越しに真修と話します。
少し談笑した後、真修はあの時のごめんの意味を聡子に聞きます。
聡子は少し間を置いて、真修と会った当時のことを話します。
その頃、彼女は日々のルーティンに疲れていました。
そんな時に真修と出会い、公園でのあの時間が待ち遠しいと思えるようになりました。
だから聡子はどうしたら真修と関われるだろうとばかり考え、彼の気持ちを無視してしまいました。
もう一度、ごめんなさいと口にします。
そして、真修が良ければ色々な話がしたいというと、ドアが開き、真剣な表情の真修が立っていました。
聡子は部屋に入ると、他愛のない会話をしますが、それだけで二人は幸せそうです。
しかし、真修の薬が切れて咳込んでしまい、今日はこれで終わりにし、次の約束をすることに。
ところが真修は土日は予定で埋まっていて、二十四日のクリスマスパーティーをキャンセルしようとしますが、聡子が止めます。
もうどこにも行かないからと。
しかし、それだけでは信じられない真修は、聡子と約束をします。
指きりは恥ずかしいからと、二人は拳を突き合わせて約束をします。
真修と別れてリビングに下りると、祖母が聡子に教えてくれます。
真修から、自分が倒れたことも、聡子が助けてくれたことも父親に内緒にしてほしいと言われていることを。
祖母は父親に弱いところを見せたくないのではと考えていますが、聡子は気が付いています。
真修は、聡子が以前のように父親に糾弾されることから守ってくれているのです。
帰り道、聡子はこの先、真修と向き合って話して、彼の何になりたいのだろうと考えてしまいます。
そんな時、駅で奈緒と会い、二人はお互いに知っている顔だと思います。
二人は以前、プールで会ったことがあり、奈緒が先に思い出します。
二人は何気ない会話をしますが、聡子はすぐに奈緒が真修のことを好きでいることに気が付きます。
そんなことに気が付かない奈緒は、思い切ってちょっと付き合ってほしいと聡子にお願いをします。
第28話 イルミネーション
奈緒のお願い。
それは、真修へのクリスマスプレゼントを一緒に考えてほしいというものでした。
聡子は複雑な心境ですが、普段の真修のことを知るチャンスだと思い、奈緒と一緒にプレゼントを選ぶことにします。
ぎこちなかった二人ですが、次第に打ち解けていき、奈緒がコンクールに出るような強い放送部に所属し、放送部の強い高校に行きたいことを教えてくれます。
聡子は高校生になった真修と奈緒を想像します。
真修は後ろ姿ですが背が高くなり、奈緒はより女性らしくなっています。
その時、奈緒は真修が小学生だった時、うさき当番だったことを思い出し、うさぎのキーホルダーはどうかと考えますが、何かを思い出してやめてしまいます。
聡子の視線の先、奈緒のかばんには同じブランドのキーホルダーがついていて、お揃いになるのを避けたのだと気が付きます。
そして、奈緒はくじで真修にプレゼントをあげることになったと話していましたが、それが嘘であることにも気が付きます。
次に二人が立ち寄ったのはアクセサリー用の石やモチーフが売られているお店で、聡子は真修が鉱石好きであることを思い出しますが、手作りアクセサリーは重たいかと躊躇します。
しかし、奈緒はそんな葛藤もなくこれがいいとあっさり選び、聡子は自分が止まっているところをあっさりと飛び越えて真修のそばにいる彼女をすごいと感じます。
それは羨ましいという感情ですが、それを口にすることはありません。
そして奈緒と別れた帰り道、真修の周りのことを知ってショックを受けていました。
そんな時、真修からラインが届き、聡子の悪いところが思いつかないから聞きたいといわれます。
聡子がそれに返事をする描写はありませんが、家に帰った後、彼女は自分のダメなところを次々に挙げます。
そして、高校生になった真修と奈緒が並んで歩く姿を想像し、うめき声を上げ、それも悪いところだといいます。
結局、真修に何をしてあげたいんだろうと、悩む聡子でした。
場面は変わり、クリスマスパーティー当日。
真修はそわそわしていて、プレゼント交換を前にしてもずっとスマホを見ています。
そこには、今日会えないかと聡子に送ったラインがあります。
その頃、聡子は歯医者で治療をしていました。
結局、真修は返事を待たずに用があるといって帰ろうとし、奈緒が後を慌てて追いかけてプレゼントを渡します。
プレゼント『交換』という体のため、真修はそれが奈緒からのものだと気が付かず、奈緒にお礼をいって帰ってしまいます。
奈緒は自分のプレゼントだといえずに部屋に戻りますが、他の友達はそんな奈緒にニヤニヤしています。
場面は変わり、歯医者を終えた聡子が歩いていると、真修から着信があります。
彼は聡子が三鷹の北口にいることを確認しますが、すでに探しに来ていたようで聡子はすぐに真修を見つけ、真修もすぐに聡子に気が付きます。
そして、聡子は気が付いてしまいます。
これまで二人の日常は二人だけの世界で、それは真修の世界を閉じることで生まれます。
真修は奈緒からのプレゼントを握っていますが、中身が落ちそうになっていることに気が付いていません。
聡子は、これが一番ダメなところだと気が付き、会うなり、真修のもらったプレゼントを開け、奈緒の作ったターコイズのブレスレットを彼の手首につけてあげます。
そして、人からのプレゼントを乱暴に扱ってはいけないと注意しますが、突然のことに真修は戸惑っています。
しかし、聡子はそれに構わず、靴紐がほどけていること、手袋を落としたことも指摘し、自分ばかり見て突っ走ったらいけないと注意します。
また真修がプレゼントのお礼をいえていないことを知ると、今日は作ってくれた子や友達と一緒にいる日にしようと提案。自分と会うのは別の日にしようといい、真修は落ち込みます。
聡子は、自分が真修と会いたいと思うのと同じくらい、会いたいと思っている人が他にもいることを伝えますが、真修は納得がいかない顔をします。
それでも聡子の言うことに従い、次は聡子さんから連絡くださいと約束のグータッチをすると、パーティー会場に戻っていきます。
聡子はその後ろ姿を眺め、自分は真修の世界を開いていき、そこでまた真修と会えることを望んでいました。
見送って帰ろうとすると、真修から電話が入り、後ろを見るよう言われ振り向きます。
そこには見上げるほど大きなクリスマスツリーが立っていて、スマホ越しにメリークリスマスと伝えるのでした。
おわりに
思いを新たにお互いのことを知ろうとしているのに、やっぱり聡子と真修の間には大きな隔たりがあることを突きつけられた話でした。
聡子は年齢のせいもあって常識がある分、真修のように自分の気持ちを素直に伝えるわけにはいかないところが切ないですね。
というか、僕は聡子と年齢が近いですが、僕が彼女の立場だったら絶対に恋愛に持っていく自信、というか根性はないと思います。
第一、犯罪ですからね、それ。
あと、今回は奈緒の存在が際立ち、本来であれば報われてほしいのに、当の真修は彼女の気持ちに全く気が付いていないし、結ばれたら聡子は…なんて考えると、単なるハッピーエンドは無理なのでは?と今更ながら思ってしまいました。
それでも続きが読みたいと思ってしまうのは、きっと僕だけではないはず。
次の話はこちら。