『七人怪談』あらすじとネタバレ感想!名作家たちが送る最も怖い怪談集
屈指の名手たちが「自分が最も怖いと思う怪談」を綴る。戦慄の怪談小説集。
「これは、わたしが小学校の、高学年だった頃の話です」――少女が雑誌に投稿した、ある家族を襲った不気味な怪異の記録。悪化していく一方の父の怪我、何者かに乗っ取られ不気味な笑い声をあげる妹。そして親類たちの死。霊能者“マツシタサヤ”によって怪異は鎮められ、記録は締めくくられる。だが、この投稿を皮切りに、マツシタサヤを巡る不可解な記録が世に溢れはじめ……(澤村伊智「サヤさん」)。 同窓会をきっかけに、故郷の実家に泊まることになった「私」。すでに実家には誰も住んでおらず、何も無い家に過ぎないはずなのに、「私」以外の何者かの気配が段々と濃くなっていく。鳥籠の中で邪悪な笑みをたたえた阿弥陀如来像、座敷の蒲団の中で蠢くモノ、そして――。忌まわしい記憶とともに、何かが迫ってくる(三津田信三「何も無い家」)。ホラー界を牽引する三津田信三が、屈指のホラー小説の名手六人それぞれに相応しいテーマで「自分が最も怖いと思う怪談を」と依頼して編まれた戦慄のアンソロジー。
Amazon内容紹介より
ホラー小説の名手・三津田信三さんが編んだアンソロジーである本書。
自分含めて七人の作家に対してお題を出し、『最も怖いと思う怪談を書いてください』というシンプルな依頼のもと、各作家が執筆しています。
それぞれの作家の得意とするジャンルを依頼していることで、持ち味や魅力が最大限活かされているのが特徴です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想などを書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
サヤさん【澤村伊智】
『霊能者怪談』がテーマの本作。
様々な人の体験が集まって構成されています。
冒頭、当時小学校高学年だったわたしが体験したこととして、郊外に引っ越した時のことが語られています。
わたしは新しい家にワクワクしていましたが、引っ越して翌日に父親が階段から落ちて右足を怪我してしまいます。
すぐに治る程度のものでしたが、治るどころか怪我はなぜかますますひどくなり、そこから家族に不幸が次々に舞い込みます。
貝田川【加門七海】
『実話系怪談』がテーマの本作。
加門さん自身の視点で、これまで実話怪談として記さなかったこととして、自身の経験を語ることが冒頭に明かされます。
テーマに『系』とあるため、あくまでフィクションだと自分自身に言い聞かせますが、加門さん自身は決してフィクションではないことを理解しています。
三津田さんの意図を汲んだ加門さんの丁寧な前振りの後、古い神社から始まる話が語られます。
燃頭のいた町【名梁和泉】
『異界系怪談』がテーマの本作。
大学受験に対する意欲が過熱していて、それを苦にして自殺する人が多かった時代のこと。
とある自殺した人のことが語られます。
大学受験の失敗が理由というのは妥当でしたが、自殺方法が焼身自殺だと語られていて、しかも灯油を大量に飲んで自分に火をつけるという異様なもの。
そして噂では死んだ彼に安息はなく、その土地をさまよっているといいます。
信じられない話ですが、僕はそれを身をもって体験します。
旅の武士【菊池秀行】
『時代劇怪談』がテーマの本作。
ある武士について語られます。
彼はどこかの藩に所属していることを示す品を身につけておらず、通常は同行者がいるところを、彼は一人で旅していました。
本書では謎多く武士について、様々なシチュエーションから描かれます。
魔々【霜島ケイ】
『民俗学怪談』がテーマの本作。
咲希は亡くなった祖母の家を訪れ、そこで二週間前から暮らしていました。
不便なところもあり、他人の家という感覚があり、永住するつもりはありません。
しかし、一緒に暮らしていた母親のもとに戻るという選択肢もなく、中途半端な立ち位置。
その中で咲希はこの家に隠された秘密を次第に知っていくことになります。
会社奇譚【福澤徹三】
『会社系怪談』がテーマの本作。
福澤さんは考えた末、三十年以上前に自身がサラリーマンだった時代に経験したことを語ります。
勤めていたクラブで起きたことにはじまり、福澤さんが勤めていた先で起こる様々なことがリアルに描かれています。
脈絡のない仕事歴や、現代の常識で考えると色々怪しいことも含めて、飾らない恐怖がそこにはあります。
何も無い家【三津田信三】
『建物系怪談』がテーマの本作。
三津田さんはある人(ここでいう私)の体験を綴っています。
私には溝口という友人がいて、彼に久しぶりに会えることを期待して小学校の同窓会に参加しますが、溝口は不参加でした。
その後も会えない年が続きますが、ある日、溝口から連絡があり、二人は会うことになります。
感想
バラエティ豊かな一冊
ホラーに精通した三津田さんが編んだアンソロジーということで、ホラー小説のことや各作家のことを熟知した上での構成が光ります。
集まった面々の多くは知っている人で、名梁さんは今回初めてでしたが、改めてホラー小説の奥深さを感じられるバラエティ豊かな一冊になっていました。
三津田さんがあらかじめそれぞれにテーマを指定することで、テイストが被ることもなく、しかも作家それぞれが強みをテーマにしているので、相性が良いのは明白です。
知っているものの、菊池さんや霜島さん、福澤さんは単著としてはあまり読んだことがなかったので、それを読めたのも良い体験でした。
粒が不揃い
個人的には、アンソロジーとしてとても面白いは言い切れず、テンションの上下が少なからずありました。
もっといえば、作品によって面白い/つまらないが明確に分かれていました。
澤村さんや霜島さんの作品は期待通りで、お二人の筆でそのテイストが読みたかったというものが表現されていて、こちらは大満足です。
特に霜島さんの隠れたファンでもあるので、もうページをめくる手が止まりませんでした。
一方で、読んでいてよく分からなかった作品もあり、菊池さんや三津田さんの作品がそれにあたります。
どうなるだろうと思いながら読み進めると、どうにもならずに終わってしまう。
そんな尻切れトンボ感があり、拍子抜けしてしまったのは事実です。
そのため光る作品がありつつも、手放しにオススメができないのが本当のところです。
おわりに
最近、ホラー小説がブームのせいかアンソロジーが増えていて、玉石混交な印象があります。
それでも楽しめる部分もあるので結局は買うのですが、もう少し販売ペースを抑えた上でクオリティの高いホラーが読みたいというのが本音です。
ペースだけではどうにもならない問題かもしれませんが、ぜひ期待したいところです。
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