『連続殺人鬼カエル男 完結編』あらすじとネタバレ感想!世間を震撼させた殺人鬼との最後の闘い
「心神喪失者の行為は罰しない」
Amazon内容紹介より
刑法第39条vs連続殺人鬼。救うべきは誰か――
凄惨な殺害方法と稚拙な犯行声明文で世間を震撼させた「カエル男連続猟奇殺人事件」。事件の関係者である有働さゆりは医療刑務所から脱走し行方不明のままだった。
その頃、精神疾患を抱える殺人犯を無罪にした人権派弁護士が殺害される。遺体の傍らにはあの犯行声明文。これまでと異なる動きを見せるカエル男に翻弄される捜査一課の渡瀬と古手川は、ある人物から提案を受ける……。
解説・恩田陸。
カエル男シリーズ第三弾であり、完結作である本書。
前の話はこちら。

ちなみに本書の最後にシリーズの読む順番として『連続殺人鬼カエル男』⇒『連続殺人鬼カエル男ふたたび』⇒『嗤う淑女 二人』⇒本書をオススメしていますが、僕は『嗤う淑女 二人』を呼んでいない状態で本書を読んでいます。
中山七里さんらしく世間でも話題になっている法律に大胆にメスを入れながらも、そこにカエル男らしい強烈なエッセンスが加えられていて、完結作にふさわしい一冊でした。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想などを書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
異様な死体
サービスエリアから出発する長距離トラックの真下に、人間がロープで繋がれているのが発見されます。
死体はトラックが走行したことで道路との摩擦で黒焦げになっていましたが、後の解剖でトラックが走り出す前までは意識があったことが判明しました。
人間の尊厳を踏みにじるような、倫理観の欠片もない殺害方法。
現場には小学生低学年のような拙い文字で書かれた紙片が残されていて、これらの手口はカエル男のものに類似していました。
有働さゆりの行方
古手川和也は数ヵ月前に行方をくらました有働さゆりをずっと探していました。
彼女こそカエル男の正体であり、解離性同一障害によって二つの人格を有しています。
古手川のもとにトラックの一件が耳に入ると、彼は即座にカエル男の犯行ではないかと疑います。
一方で、上司である渡瀬はその意見に釘を刺しました。
可能性が高くとも、その思い込むことで見逃すことがあると。
しかし、いずれにしてもこのままでは被害が拡大することが予想され、渡瀬と古手川はこれまでのカエル男とのやり取りに関する知見を活かして捜査に入ります。
犯行の動機
様々な捜査によって、遺体が弁護士の烏森彰人であることが判明します。
彼は憲法第三十九条の適用で無罪を勝ち取ったことで有名になり、一部では人権派弁護士などと言われていました。
これまでのカエル男の犯行からいくと、次のターゲットはあいうえお順に決められるため、『キ』がつく人が狙われる可能性があります。
警察はカエル男の犯行と思わせる内容の報道は伏せ、捜査を続けますが、やがて同じような系統の弁護士が惨い方法で殺害され、順番の規則性とも一致しました。
渡瀬と古手川は犯人の狙いを掴もうとしますが、相手は二人の思考のさらに上をいっていました。
感想
これぞカエル男
本シリーズを最後に読んだのは五年近く前で、詳細なディティールは記憶から抜け落ちていました。
しかし、読む始めて数ページで、カエル男がどれだけ無邪気で凄惨なのかを思い出させられました。
なぜこんな惨いことができるのか。
同じ人間の発想とは思えず、しかもそれを実行に移すのだから倫理観と呼べるものが皆無です。
本シリーズの魅力の一つとして、人間の尊厳を踏みにじるような、それでいて恨みで犯行に及んだのではないことが分かる殺害方法にあるので、本書はこの点においてまず完結作にふさわしいものでした。
ここまでの積み重ね
完結作であり、かつ他のシリーズも並行して執筆されている関係で、本書の物語的な厚みはすさまじいものがあります。
本シリーズ以外に登場する人物が本書で共演するため、中山作品を網羅的におさえている人であれば、本書が同窓会的なものとして読めた人もいると思います。
岬しかり、御子柴しかり、光崎しかり、真琴しかり、登場するのはもちろんのこと、名前が出てくるだけでも嬉しくて仕方ありません。
上述した順番で読めば本書を十分楽しめるのですが、本音をいえばここまでの中山作品をすべて読まないと、真の魅力には辿り着くことはできない。
そんな風にも思います。
ただこれはハードルが異様に高いので、あくまで中山ファンだけに与えられた特権くらいで思っておけば良いのではないかと思います。
古手川と真琴の男女関係も楽しかったですし、それ以上に渡瀬 vs. 光崎、渡瀬 vs. 御子柴の会話は最高でした。
頭の回転が速く、目的のためであれば相手を挑発することや正論を言うことを厭わない彼らだからこそできるナイフの差し合いのような会話で、読んでいて気持ちの良いものがありました。
おわりに
意外性はありつつも、完結作として読者が望むものが凝縮された一冊でした。
単なる猟奇殺人ものとして終わらせないところに中山さんの上手さがあり、エンタメとしてもミステリとしても長年に渡って楽しませてくれたシリーズでした。
無事に終わったことに安堵し、このような作品を生み出してくれた中山さんに感謝を捧げたいと思います。
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