『新! 店長がバカすぎて』あらすじとネタバレ感想!あのうざくて愛されキャラのあの人が帰ってきた
三年ぶりに吉祥寺本店に店長として復帰した山本猛は張り切るが、相変わらず人を苛立たせる天才だ。それでも部下の京子は新人作家の才能に打ちのめされ、好きな作家の新作に心躍らせ、時には泣き、笑い、怒り、日々戦っている。スタッフや作家の大西先生や小料理屋を営む父親などの応援を受けながら──。思いっきり楽しんだあとに小説と書店の未来を、仕事の意味を、生きる希望を改めて深く考えさせられる、二〇二〇年本屋大賞ノミネート作品の第二弾。(解説・大九明子)
Amazon商品ページより
シリーズ第二弾となる本書。
前の話はこちら。
前作を読んで二年以上経過していますが、京子の山本店長に対する愛憎交わる感情を見て、すぐに懐かしさがこみ上げてきました。
ああ、みんなが帰ってきた。
前作を踏襲しつつも本書ならではのエッセンスが加わり、明確にパワーアップしています。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
あの人が帰ってきた
谷原京子が務める武蔵野書店 吉祥寺本店は、店長である小柳真理のもと、コロナ禍にも関わらず奮闘していました。
しかし、三年ぶりに前店長である山本猛が店長として戻ってきたことで、状況が一変します。
山本は三年経ってもまったく変わっておらず、人の神経を逆撫ですることにおいては誰の追随も許さず、しかもそれを無意識にやっているのだから恐ろしい。
京子はは懐かしく、それでいて強い怒りを覚え、山本が帰ってきたことを誰よりも実感するのでした。
ダイヤの原石
京子は後輩の磯田から紹介された『ステイフーリッシュ・ビッグパイン』という本を読みます。
まだ無名の作家による本ですが、京子はすぐに磯田が勧めてくれた理由を知ります。
校閲が入ってもほとんど修正されないほどの完成度を誇っていますが、内容はそれよりすごいです。
後半になると前半の持つ意味が大きく変わり、その見事な構成はとても新人作家とは思えないほどの芸当でした。
二人はこれから出版業界を支えるかもしれない逸材の発見に喜び、この作品は作中に度々登場しますが、これが思わぬ伏線になっていました。
変化
コロナ禍がきっかけとなり、武蔵野書店は大きな変革を迎えようとしていました。
社長である柏木雄三は覇気を失っており、それが各店長にも伝播している状況でした。
そこでも明るさを失っていなかったのが山本で、彼の明るさが武蔵野書店を支えているといっても過言ではない尋常ではない状況でした。
そんな中で、雄三の息子が極秘裏に武蔵野書店に入社していて、跡継ぎになることが容易に想像できます。
これから武蔵野書店はどうなるのか。
とはいえ一書店員である京子には関係がないように思えましたが、実は京子もこの問題の中心に巻き込まれていきます。
感想
愛しい
本書の冒頭数ページで、僕の気持ちは京子とシンクロしていました。
ああ、店長お帰りなさい。
笑っているのに、内心では嬉しさと怒りが複雑に絡み合っていて、この感情をなんて呼べば良いのか見当もつきません。
こんな感情を抱かせてくれるのは、山本以外にありません。
ブランクをものともしないこの見事なまでのキャラクターメイクは、改めて本シリーズの強さ、魅力を教えてくれました。
続編の難しさ
僕は本書に良いところ、悪いところがそれぞれあって、正直満足とは遠い読了感を抱きました。
良いところは前述の通りで、京子や山本の変わらぬ姿を見られたことです。
悪いところは、くどさと同じパターンによる飽きです。
山本を絡めると京子の父親のうざさが増し、話を聞こうともせずまるで正論のようにぶつけてくる言い分には腹が立って仕方ありませんでした。
また京子の勘違いはフィクションとしてあるあるですが、そんな女性か?と作品の都合に巻き込まれているような気がして、ずっとモヤモヤしていました。
さらに精神安定剤である小柳の登場も少なく、不快感強めだったのが正直なところです。
続編がまだ出そうな雰囲気を残していますが、これ同じパターンをまたやるのでは?と内心疑っていて、その場合は買おうかどうかと今から迷っているところです。
おわりに
京子と山本に会えて嬉しかった半面、一冊目にはなかった嫌な部分もあり、素直に楽しめませんでした。
正直一作目だけ読めば十分かな、というのが率直なところで、本書を手にする場合はそのあたりも考慮の上ご検討ください。
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